●危ないアルバイト
私がアメリカから日本に来た当時は、
まだブログやSNSなどがメジャーではない時代でした。
だから占いの仕事をするにもとても大変でした。
当時占いで成功していた人は、
原宿の占いの館などで占っていた占い師か、
新宿などの街角の一角で小さな店を出している方か、
雑誌の広告でお客を集めていた人ぐらいでした。
私も最初、原宿まで行って、占いの館の前までは行ったのですが、
タロットの何々先生。とか手相の何々先生とか書いてあり、
また、沢山の人が訪れている感じで数をこなしてナンボというのと、
そして、ある先生の部屋の前は大勢いて、
ある先生はガラガラたいな感じで、多分競争の末、
稼げない占い師は入れ替えみたいな感じがしたので、
なんとなく中に入れず、帰ってきてしまいました。
新宿にも行ってみたのですが、
みんな路上に小さなテーブルを出してやってるんですよね
やはり、ある占い師の所には行列でも、
ある占い師の所には誰も並んでいないで、前を歩いている人に、
時々声を掛ける感じでした。
しかも、その時、丁度寒かったんですよね。
「ああ、これはダメだ、僕だったら凍え死んでまうでぇ。」
と思い、新宿も止めました。
結局、雑誌に広告を出すしか無いなと思いました。
でも、広告って高いんですよね。
だから占いの前に、アルバイトです。
いろんなアルバイトをして、貯めたお金で、
当時一番の雑誌アンアンに広告を出しました。
この時、友人の渡河が、出すなら一流雑誌に出せ!
これでお前も、占い師デビューだ!という言葉に騙されました。
広告代も一流で、確か25万円位払ったと思います。
でも、広告出すの初めてだったし、書き方が悪かったのか、
結局赤字でした。
広告って、一回じゃ余り効果無いんですよね。
一回じゃ、信用も無いし。
それでも、懲りずに、今度は地下鉄の駅に広告出したんですよ。
ここでも、友人の渡河が、地下鉄なら政治家がいる所が良いぞ!
そこで確か国会議事堂前駅と永田町駅に出したと思います。
政治家のお客が付けば、一変に有名占い師だ!という言葉に騙されました。
地下鉄の場合、たしか1ヶ所8万5千円位で、2週間位貼っててもらえました。
でも、失敗でした。地下鉄に広告だしても、
ポスターの電話番号をわざわざメモしてくれる人なんで誰もいないんですよね。
それでも2件、来たのかな。 まあ、赤字ですよね。
後になって、思ったんですけど。
政治家が、地下鉄、乗るか?
みんな自家用車じゃね。![]()
それから、よいよ生活が苦しくなったので、
占いをしながら、便利屋をする事にしました。
今まで広告にお金を出した割には、失敗してきたので、
今度は渡河に相談せずに、自分の足で広告を出す事にしたのです。
まず、自分でポスターを書いて、タダで貼ってくれる場所を探しました。
当時タダで貼ってくれたのは、地元の銀行と、スーパーとコインランドリーでした。
占い致します。という広告の他に、
雑用引き受けます。原則1件3000円という感じの広告で、
紙の一番下に、電話番号の切り込みを沢山いれて、
必要な人はわざわざメモしないでも、
その電話番号のビラビラの1つを引きちぎるだけという形です。
その他にもマンションポストや住宅に広告を入れたりしました。
結果から言うと、それからやっと黒字になったのですが、
占いの仕事よりも、便利屋の仕事の方が多く来ました。
今日はそんな便利屋時代の中から、印象に残っている事を書きたいと思います。
やり始めた頃、金魚のエサやり。なんて依頼がありました。
留守をするので、その間、金魚にエサをあげて欲しいというのです。
玄関の鍵は、3番目のパンジーの植木鉢の下にあり、
手当の3000円は冷蔵庫の扉に磁石で貼っておきます。という内容でした。
当日、たしか日曜日だと思いますが、その家に行き、
確かに植木鉢の下に鍵が有り、家に入ると、エサは金魚鉢の前にあったので、
エサをやり、冷蔵庫の前に行って、3000円を取り、帰ってきました。
ただ、依頼をしてもらって言うのも何ですが、
ここまで便利屋を信用したら、イカンやろ。
ボクが悪いやつだったら、大変だと思わないのかな。と思いましたよ。
でも、こんな簡単な仕事で3000円もらえるならいいなと思いましたが、
その考えも甘いと分かる日が来ました。
あるオジサンからの依頼でした。
2階から、1階に物を降ろしてくれという依頼です。
2階から1階に降ろすだけ。これも楽勝かと思いました。
しかし、行ってみるとそれは開かない金庫でした。
しかも泥棒が持って行けない様に、かなり重く出来ています。
試しに持ってみたのですが、死ぬほど重いので直ぐに無理だと思いました。
なんとか絨毯の上に置いて、ひきづって階段の前までは持ってきましたが、
さすが、階段は無理です。
仕方なく、電話で渡河を呼び出し、二人で金庫を1階に持っていきました。
しかし、その後二人とも腰痛になり、
3000円は湿布代と渡河の接骨院の治療代に消えました。
その時、渡河に言われました。
「だから便利屋はアカンって、ゆうたやろう。」![]()
便利屋は辞める事にしました。
最後に、
便利屋をやっていて不思議体験があったので、それを書いて終わりにします。
それは、お墓の掃除の依頼でした。
平たく言えば、墓石の掃除です。
墓石を洗って、雑草を取って欲しいという依頼でした。
綺麗にする前と、綺麗にした後の写真を見せて完了という流れです。
聞くと1坪位(3.3㎡)だと言うので、3000円で引き受けました。
ちなみに、今だと1万円位が相場の様です。
現地に着くと、桶に水をくみ、たわしと歯ブラシを持って、
指定された墓に行きました。まずは手を合わせて、写真を撮って、
そして、墓石に水をかけ、たわしで洗い始めた時でした。
「イタタタッタ!!」
急に右足が痛くなったのです。
さっきまで何ともなかったのですが、右足が痛くて立っていられない程です。
そこで一旦休憩して、水も無くなったので一旦、水汲み場に戻りました。
すると、さっきまで痛かった右足が、痛く無くなっていました。
何だろう。どっか悪いのかな。と思いながら、
今のうちに、はやく仕事を終わらせてしまおうと思い、
すぐにまた墓石の所に行き、洗い始めました。
すると、また急に右足が痛くなったのです。
その瞬間、「あっ、これ偶然じゃない。」と思いました。
直ぐに、私は墓石の前に座り、謝り、
「実は○○さんに依頼されて、貴方のお墓を掃除する様に頼まれて来ました。
かや博史と申します。すぐに終わりますので掃除させて下さい。」
と声に出して言いました。
すると、痛かった右足が、痛く無くなりました。
皆さんも気を付けてください。
自分の実家以外のお墓に入って、墓石を洗ったり、雑草を取ったりするのは、
良い事なのですが、中には偏屈な霊もいて、
見も知らずの人の侵入を嫌う先祖の方もいます。
だから、例えお隣のお墓であっても、彼氏や友人の墓であっても、
墓に入って何かをする時は、ちゃんと事情を説明した方が安全です。
そうでないと危険な時があるという事です。
かと言って、お墓参りした時にお隣のお墓に、
お線香やお花をおすそ分けするのは、良い事です。
水やお線香、お花のおすそ分け程度なら、むしろ感謝されます。
というより、やった方がいいです。
なぜなら、お墓参りに行くと、
子供や連れが自然と隣の墓の領域に踏み込んでいたりして、
うるさかったりして、迷惑をかけている時があります。
そんな時、祖父をよろしくお願い致します。 とか声をかけて、
お水やお線香をあげるといいです。
私みたいに墓石を磨いたり、草をむしったりするのはやり過ぎです。
こう考えて下さい。隣の墓は隣の家と同じ。
旅行の帰りにお土産をおすそ分けなら喜ばれますが、
家に入って長時間かけて掃除を始めたら、例え良い事でも迷惑ですよね。
さて、
やっと墓石の掃除を終え、写真を撮ろうと思った時、
自分がした、もう1つのミスに気がつきました。
「お線香とお花を買うの忘れたぁ。」
仕方ない、管理事務所に行って、買う事にしました。
すると、お線香が200円。お花が1000円だと言うのです。
お線香はいいとしても、お花だったらスーパーで298円だったよなぁ。
「1000円って、ボッタくりじゃね。」と心でボヤきつつも買いました。
赤字や無いけど、あわんなぁ。![]()
最後、依頼主に写真を見せて3000円を受け取った時、
「もしかして、亡くなった方に右足が悪かった人はいましたか?」
と聞くと、
「2年前に亡くなった祖父が、右足が悪くて杖をついていました。」
との事でした。
便利屋アカン。![]()
END