●妊娠中に犬猫を貰うと死産する
それは九州に住んでいるという女性からの電話相談だった。
彼女は、山口県に住んでいた時に知り合った、
10歳年上の福岡の方と、3年前に結婚。
妊娠3ヶ月の出来ちゃった結婚だったという。
結婚後すぐ、九州の彼のマンションに移り住んでの新婚生活となった。
ところが、彼女がこのマンションに移り住んでからというもの、
不幸な出来事ばかりが起きるというのだ。
まず、彼女がマンションに移り住んでから2ヵ月後に、
ご主人が仕事場で、激しい胸の痛みを訴えて、狭心症と判断されたという。
それからまもなくして、今度は彼女が流産した。
それから1年が過ぎ、彼女の心の傷もやっと癒えた頃、
またご主人が、右手に力が入らないという症状が出て、
検査すると、脳梗塞が発見されたという。
幸い早期発見だったので、1週間の点滴治療で済んだそうだ。
ところが、今度は彼女がまた流産した。
それはまるで、夫の病気、妻の流産、夫の病気、妻の流産が繰り返しやってきている感じで、
次はまた夫の病気かと思ってしまうという。
そして、子供は一生授かれないのかとも思ってしまうという。
そんな事を悩んでいた時、
彼女の友人が、ある恐ろしい事を言ったという。
それは、「妊娠中に犬猫を貰うと死産する」
と昔から言われているを聞いた事があるというのだ。
実は、彼女は動物が好きで、山口に住んでいた時にも、
犬を2匹と猫を2匹、実家で一緒に暮らしていたという。
だから、九州のマンションがペット可だと知ると、
彼にお願いして、マンションに入居してから2週間後には子猫を飼ったという。
その話を聞いた友人は、既に妊娠していた時に、
小猫を貰い受けた事が、度重なる流産の原因だと指摘したのだった。
それは友人が親から聞いていた話で、
「妊娠中に犬猫を貰うと死産する」と昔から言われているという。
それで彼女は、怖くなって、
猫を始末した方がいいのか、
流産は、やはり猫を貰い受けたせいなのか、
私に相談してきたのである。
さて、彼女の友人が言ったという、
「妊娠中に犬猫を貰うと死産する」だが、
実は、九州にはそういう昔からの言い伝えがあるのは事実である。
ただし、ちょっとだけ言い方が違う。正確には、
「妊娠中に子猫、子犬を貰うと死産する。」
という、言い伝えだ。
言い伝えは、結構バカに出来ない。
実は、「妊娠中に子猫、子犬を貰うと死産する。」という言い伝えも、
ほんの少しだが、正しい部分もある。
それは、「妊娠中に子猫を飼うと死産する。」可能性は少しあるのだ。
それは獣医などに聞くと分かるのだが、
トキソプラズマ症という病気になり、
これに感染すると、生れてくる赤ちゃんが流産したり、
母親が妊娠中にトキソプラズマに感染すると、胎盤を通して胎児にうつり、
生れてくる赤ちゃんの脳や目に障害を持って生まれることがあるのだ。
この病気は、主に小猫の糞(フン)から感染するとされ、他にも、
「妊婦が猫を触ると流産する。」とか、
「猫から感染して、奇形児が生まれる。」という噂まである。
このトキソプラズマ症というのは、
トキソプラズマという寄生虫による感染症である。
しかも、驚く事に、日本人の3人に1人はもう感染していると言われている。
ただ、もっと驚く事に、
このトキソプラズマ症に感染している人は、
免疫が出来ているので、別に妊娠していても流産したり、障害になる事はない。
つまり、日本人の3人に1人はトキソプラズマ症を怖がる事は無いという事だ。
ちなみに、自分がトキソプラズマ症に免疫があるかどうは、
産婦人科などで、トキソプラズマ検査をする事で分かる。検査費用は4000円位。
この検査で、母体にトキソプラズマの抗体があると判断されれば、問題無いのだが、
もし、トキソプラズマの抗体が無いという事になれば、(日本人の3分の2)
妊娠中は、次の3つの事に注意しなければならない。
■トキソプラズマ症にならない様に、生ハムや生肉、レアステーキは、
妊娠中は食べない様にする事。65度以上に熱して食べる事。
ちなみに、妊娠4ヶ月の時に、焼き肉店に行きユッケとレバ刺しを、
食べた為に、生れて来た赤ちゃんが水頭症になったという例もあるそうです。
■トキソプラズマ症にならない様に、妊娠中は庭や公園の土いじりはしない。
もしくは、土いじりする時は、ビニール手袋をしてその後よく洗う。
トキソプラズマは、土の中だと1年半も生きているという研究結果もあり、
妊娠中の土いじりは注意が必要とされる。特に自分の庭で野菜などを作っている方は、
そこに子猫が入ってきてウンチなどされない様にする事です。
また有機野菜などを買った時の土にも注意して、野菜はよく洗って食べるか、
65度以上に熱して食べる。
■トキソプラズマ症にならない様に、妊娠中は、
下の3つの条件に当てはまる猫に注意する事。
①外出自由な猫
②外出しない猫でも、生後1ヵ月以内の子猫
③外出しない猫でも、家の中のネズミやゴキブリ、ハエを食べる猫。
さて、言い伝えや、今回の相談者が心配しているのは、
上の内、最後の項目ですね。
なぜ猫が危ないかと言うと、基本は生肉が良く無いのだと思って下さい。
だから、猫でなくても、
人間が、外で生肉を食べれば、トキソプラズマ症なるのだから、
生肉は、少なくても65度以上で調理する事です。
逆に言えば、猫だって、
外でネズミを捕獲して食べる時に、
「タマよ、ネズミを食べる時は65度以上に加熱して食べろよ。」
と言い聞かせておけば、貴方の猫もトキソプラズマ症にはならない訳です。
ちなみに、猫も人間と同じで、
トキソプラズマの抗体があると判断されれば、問題無いのです。
だから、心配な方は、動物病院で血液検査をして、
トキソプラズマの抗体があると判断されれば、貴方が妊娠していても大丈夫です。
自分の飼い猫でなくても、
妊娠中は、外にいる猫にも余り触らない方がいいでしょう。
特に糞(フン)と肛門を触るとかキスするとか。
万が一、肛門やうんこに触った場合は、すぐに手を丁寧に洗いましょう。
外に居る猫でも、若い小猫ほど気を付けましょう。
と言うのは、猫も人間も、トキソプラズマの危険があるのは、
基本、一生に一度だけです。
猫も人間も、一度かかると、抗体が出来て、安全になるのです。
だから、年とった猫ほど、もう抗体が出来ているはずですから安全度が高いのです。
ただし妊娠していない人、もしくは男性は、なんの心配もいりません。
ちなみに、犬やフェレットやウサギ、ハムスターなどは、
トキソプラズマは感染しませんので、妊婦にも安全です。
だから、「妊娠中に子猫、子犬を貰うと死産する。」という言い伝えも、
小犬の部分は間違っている事になります。
また、小猫の部分も、かなり限定的な事が上の例でも分かっています。
■まず、外に出ない家猫で、ネズミを捕らない猫はほぼ安全。
■次に、検査してトキソプラズマの抗体がある猫は、安全。
■次に、危ないのは、猫の糞(フン)にいるトキソプラズマですが、
このトキソプラズマは、糞として出てから2日後から活発になるとされているので、
猫の糞を毎日片づけている家庭は、大丈夫という事になります。
2日以上経った糞は、夫に片づけてもらうかビニール手袋を使いましょう。
■拾ってきた野生の小猫でトキソプラズマに感染していても、注意すべきは、
最初の3週間だけです。つまり、トキソプラズマに感染していても、
3週間経てば、抗体が出来、その後は安全な猫になります。
■家猫で、ネズミを捕獲して食べたという場合も、注意すべきは、
最初の3週間だけです。つまり、ねずみよってトキソプラズマに感染しても、
3週間経てば、抗体が出来、その後は安全な猫になります。
そう考えると、家猫で危険な猫はかなり少ないでしょう。
私は彼女に、猫を手放す必要は無いといいました。
「妊娠中に子猫、子犬を貰うと死産する。」
という、言い伝えが出来た頃は、
今の様に、家の中だけで飼う猫という飼い方は少ないものでした。
ほとんどの猫は、外出自由だったのです。
だから、死産の原因が小犬かもと勘違いしたり、
小猫は妊婦には全て危ないと、大げさに言わざるおえなかったのでしょう。
時代が変わると、言い伝えも変わるという例ではないでしょうか。
さて、そうなると、
彼女の家に立て続けに起きている不幸が、
猫の仕業では無いとしたら、どういう事でしょうか?
やがて、もっと恐ろしい事が分かるのである。
後半は、明日のブログに続く。