●袖振り合うも多生の縁




 


このお話は、一昨日のブログ(●金持ち事件簿)の続きです。

 

従って、一昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12174731490.html

 


を先にお読みください。


そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]



社長の取引先でもある友人のお金持ちの信長さん(仮名)が、

ここ半年、急に体の具合が悪くなり、その原因さえも分からないという。

膝や手足が痛みだし、寒気が襲ってくるのだという。

そして体の具合が悪くなり始めた半年前から、変な夢を見るというのである。

それは夢の中に、1人のみすぼらしい風情の男性が出て来て、

特に何かを言う訳でも無く、ただじっと社長を見ているだけなのだという。

しかし、不思議とその夢を見た直後もしくは数日後から、

体の痛みや寒気が襲って来るのだと言うのだ。

それらを考えると、何かの霊障だと思った。

人物像をもう少し詳しく聞くと、髪はボサボサ、無精ひげに、

身なりも余りよく無さそうな地味な色の服。何も喋らず、かと言って、

特に怒ってもいなく、ただじっとこちらを見ているという男の夢だという。

私もただこの男が夢に現れるだけなら、それほど気にしないのだが、

夢にこの男が現れると、決まってその後体の調子が悪くなるというので、

やはり、この男がなんらかの形で関係があるはずだと感じるのである。

しかし、信長さんは、この様な男にはまったく身に覚えが無いといい、

ご先祖や友達にも、こういう人物はいないという。

「ご親戚や近いご先祖に、無一文もしく借金などで、

 浮浪者の様な死に方をされた方はいらっしゃいますか?」と聞いてみた。

当然ながら、いないという。ちなみに、自殺した人とかも心当たりが無いし、

人から怨まれる様な心当たりも無いと言う。

多分夢の中の男も、怨みから出て来たのでは無いだろう。

行き詰まった私は、信長さんに色々と聞いてみた。

その過程で、信長さんがいつも寝ている寝室の写真や、家の写真、

家の周りの環境、仕事の内容、家族構成や、他の家族に変わった事はないかとか、

メモを取りながら、聞いていった。

しかし、私の感性に引っかかる点は、まったく出てこない。

ただ、信長さんの先祖はかなりの土地持ちだったのだろうとなと感じた。

すると、曾祖父の時代は、かなりの土地を所有したいたと聞いています。という。






















 

 

 


他人から怨まれる様な心当たりや、

先祖や近い親戚に浮浪者の様な死に方をした人もいないという信長さん。




彼に色々話を聞いてみても、何一つ引っかかる点を感じない。




こうして話していても、人当たりの良さを感じる。




しかし、世の中には、人が良いばっかりに他人から頼られるという事もある。

これは生きている世界だけの話ではなく、亡くなった人の世界でも同じだ。



 

この人、親切そうだな。と思うと、

この人だったら、私を供養してくれるかもと頼ってくる事がある。




ただ、そうだとしても何か、そんな霊と出会うきっかけがあったはずだ。

例えば、幽霊が沢山出そうな場所に肝試しに行ったとか、

夜中に、神社やお寺巡りや墓めぐりをしたとか、

事故物件を借りて住んだとか、死亡事故車両を運転したとか、

よく死体が上がる海辺や河川で泳いだとか、



そんな事をかたっぱしから聞いてみたが、

全ての質問に対して、心当たりは無いという。




私もついに行き詰ってしまった。




普通聞ける事は全て聞いてみたが、心当たりは無いという結果だ。











そこで、まったく別のアプローチをしてみた。





 

信長さんは、今でも結構な土地持ちだという



山林の一部を始め、現在住んでいる実家、アパートが2軒、別荘、

その他宅地や商店街の一部など。




そこでこんな質問をぶつけてみた。



「貴方がお持ちの土地もしくは建物の中で、

 どれが一番、嫌な感じがする物件ですか?」




すると、信長さんは特に時間をかけて考える事も無く、

「そうですね。   ○○アパートですかね。」と答えたのである。




「へぇ。どうしてですか?」





「実は、もう20年以上も前の事ですが、

 そのアパートの2階に住んでいた老人が、孤独死したのです。


 その方の息子さんに連絡したのですが、もう他人だからと言って、

 遺品も亡骸も取りに来ませんでした。

 結局その後、警察に説得されて、亡骸だけは引き取った様でしたが、

 そのアパートには、嫌な思い出しか残っていません。」という。





その後、そのアパートを管理している不動産屋が、信長さんに、

「今後は、年とった老人は断りましょうか?」と提案があったので、

「そうですね。」と言ったという。






「その孤独死した方は、男性でしたか?」




「はい。男性の方でした。」




「もしかして、貴方の夢に出て来たみすぼらしい男と似ていませんか?」



すると、覚えていないという。

というか、始末をしたのは警察と管理人と会社の社員で、

信長さんは、事件の顛末の報告を受けただけだったという。




 

信長さんにとっては、顔も見た事も、会った事も無い赤の他人である。


それも20年以上も前の出来事




しかし、私が思い描くイメージに合う。


男性で、みすぼらしく、信長さんに対して怨みも無い人。



 


ただ20年以上という時の長さが気になる所だが、

会った事も無い赤の他人となると、可能性はある。




と言うのは、


普通、自然死で亡くなった人は、まず家族に供養する様に頼って来る。

それが叶わないと、親族・親戚を頼る。

それでも叶わないと、親しかった友人・知り合いに頼る。

多分、その間、10年、20年は簡単に過ぎていくだろう。

そして、それでも誰も供養してくれる当てが見つからない時は、

なんと、亡くなった場所を所有していた人を頼って来る事があるのである。





 


日本には「袖振り合うも多生の縁」という諺(ことわざ)があります。



この意味は、


道で人とすれ違い、袖が触れ合うような些細な事でも、

それは多かれ少なかれ「縁(えん)」があるのだから、

そんな小さな出会いも大切にしなければならない。という思想です。





私は信長さんに、こんなアドバイスをした。

■まず、夢で見たその男性の似顔絵を簡単でいいから書いてみて、

■その似顔絵をどこか机の上に立てて、

■その前にお水、お花、お線香を点してあげ、

■餓死したかもしれないので、時々老人が好きそうな食べ物を供え、

■「亡くなった霊へ、どうか成仏なさって、生まれ変わって下さい。」

と31日間、合掌してあげながら供養してあげる事。





 

その後、信長さんはちゃんと一ヶ月供養したそうである。

すると悪かった体の調子も良くなり、あの忌まわしい夢も見なくなったそうだ。

それどころか、昔痛めた腰も最近は痛く無くなったという。




赤の他人の霊を供養してあげると、こういうお礼もあるのである。

多分、供養してくれたお礼に、腰の痛みも持って行ってくれたのだろう。





「赤の他人である、こんな老いぼれの私を供養をしてくれて、

 ありがとう。」

END