●悪魔のサクランボ


 


このお話は、昨日のブログ(●夏にやってくる悪魔)の続きです。

 

従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12158044852.html

 


を先にお読みください。


そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ

 


悲劇の始まりは、シアトルから少し離れたある町に、

一件の家が売りに出された事から始まります。

その家は、平屋でしたが、部屋数もあり、家の前に大きな庭があり、

何よりも魅力だったのは、その庭に大きなサクランボの木が1本植えられており、

毎年、そこには沢山のサクランボが成るという家だったのです。

それからもう1つ。なぜか、その家は周りの家と比べても格安で売られていました。

やがて、その家に引っ越して来たのは親子合せて7人という大家族の黒人の一家でした。

そこに住んで、最初の1年は何事も起きなかったといいます。

ところが、2年目からでした。始めに症状が現れたのは一番小さい子供の2人でした。

めまいや嘔吐を頻繁に繰り返す様になり、医者に連れて行っても、原因は分からず、

やがて、お姉ちゃんやお兄ちゃんにも、めまいや嘔吐がおき始めました。

そのうち、一番小さい子が呼吸困難になり、入院。

お姉ちゃんも意識が無くなるという事が有り、一時入院となりました。

ところが、学校が始まる9月頃になると、

みんな体調が良くなっていき、何事も無かった様な状態となりました。

しかし翌年の6月になると、またあの症状がやってきたのです。

再び、小さい子二人がめまいと嘔吐を頻繁にする様になり、

やがてお姉ちゃんやお兄ちゃんも続くようにめまいや嘔吐。またお姉ちゃんの入院。

それに加えて、今年は父親と母親もケイレンしだし、顔面が赤くなったといいます。

そして、不思議と学校が始まる9月頃になると、みんな体調が良くなっていき、

何事も無かった様な状態となりました。それはまるで夏にやってくる悪魔の様でした。

そして、3年目の夏を迎えた時でした。再びこの家に、悪魔がやってきたのです。

今度は、めまいや嘔吐だけではありませんでした。一番小さい子とお姉ちゃんが、

相次いで静水圧性肺水腫という難しい病気になって入院したのです。

命は助かったものの、二人とももう少しで死ぬ所だったといいます。

この家だけに起きる不可解な病気。そして夏だけに起き夏が終わると去っていく悪魔。

奥さんの知り合いが、保健所の偉い方だったのもありこの家に調査が入りました。
















 

 

 


私は当時、大学の前にある花屋を営んでいた日系人の姉妹の方と親しくしていて、

彼女達は私の母親と同じ位の年で、なにかと私の事を心配してくれ、

二人で郊外に住んでいたのですが、週末などは、食事誘ってくれていました。


 

そして、彼女らの家の道を挟んだはす向かいの家が、

この悲劇の黒人の家だったのです。


ご近所では、この家の話が飛び交っていたといいます。

救急車は来るわ、保健所の人は来るわ、最後は警察まで来たといいます。

警察の人が来たというのは、

どうやら病院関係者が警察に通報したようでした。

入院した子供や両親の病気が、

青酸カリによるものである可能性があると判明したからという噂でした。

病気が青酸カリによるものだとすれば、計画殺人未遂の可能性が出て来る訳です。

それで、連日警察の人が、家の中を家宅捜索したり、

家族への取り調べなどが行なわれた様でした。

しかし、保健所の方が自宅にあった食べ物などを持ち帰って調べても、

何も青酸カリに結びつく食べ物や薬品は見つからなかったそうです。





 


やがて、保健所の方は、庭にあるサクランボに注目しました。

それには2つの理由があったといいます。

■1つは、家族が病気になるのは、

決まって毎年の6月~8月の夏の間だけなのです。

これは庭のサクランボの収穫時期と一致していました。

■そして決定的だったのは、

7人の家族の内、次男だけは何の病気にもならなかったのですが、

家族の中で彼だけがサクランボが嫌いで食べていなかったのです。




そこで、保健所の方は梯子などを使って、庭のサクランボを採集していきました。

付近の住民の方は全員、その保健所の一挙一動に注目が集まりました。

というのも、そのサクランボの木には毎年食べ切れない程のサクランボが成り、

その黒人一家は、付近の住民の方々にも、

そのサクランボをおすそ分けしていたのです。

実は私がサクランボに苦い思い出があるのも、

当時、2つ程、その不気味なサクランボを食べたのです。

もし、あのサクランボが病気の原因なら、

自分も危ないかも。という不安が付近の住民の間に渦巻いていました。





 

しかし、いつまで経っても保健所からの発表はありません。


それどころか、あのサクランボの家は立ち入り禁止となり、

黒人一家も、突然どこかに引っ越して行ってしまったのです。



噂では、政府がお金を出して、

あのサクランボの家を買い取ったのではないかという事でした。

というのは、翌週には業者の人やら重機が来て、

あのサクランボの伐採が始まったのです。

それは大掛かりなものでした。


ただサクランボの木を切るだけでなく、その辺の土も掘り起して、

サクランボの根っこから全てを根絶やしにする様に掘り起して、

根がありそうな場所には、除草剤みたいなものを捲く徹底ぶりです。

住民が周りから見守る中、職員は淡々と仕事を進めていましたが、

突然、職員が手を止めて叫びました。



「何だぁ、こりゃぁ!!」


なんと、サクランボの木を掘り起こしていると、

その木の根元付近から、大量の鳥の骸が出て来たのです。

その数は30はあったといいます。



サクランボの木の根元に、なぜ大量の鳥の死骸が・・・









まさに、ミステリーがミステリーを呼ぶ展開です。








やがて、その謎も解ける日が来ました。






それは、その家に黒人一家が引っ越して来る前の時、

そこの家には、夫と奥さん、そして息子さんの3人家族が住んでいたといいます。




息子さんはとてもハトが好きで、30羽は飼っていたそうです。





ところが、ある日その家に悲劇が起きます。







鳥の病気が息子さんに伝染して、息子さんが亡くなってしまったのです。


その後、その息子さんのお母さんは、その家で自殺したという事でした。





 


そして、噂に寄ると、

お母さんは、息子が亡くなった後、

息子に病気をうつしたと思われるハトたちを、

毎日一匹づつ首を絞めて殺し、サクランボの木の根元に埋めたそうです。





 


その後、この家に黒人一家が引っ越して来たのでした。







大学のある植物研究家の方は、サクランボの突然変異で、

毒性のあるものが出来たのかもしれないと言っていましたが、

保健所から正式な見解が出る事は、ついぞありませんでした。





何の見解も無く、あのサクランボの木だけ伐採され終結となったのです。





あの当時は、私や住民たちは保健所の行為に憤りを感じましたが、

今考えると、それが政治的決着というものかもしれません。





例えば、リンゴの産地で、ある1本だけ毒入りリンゴが発見されたら、

すぐに全国にそれを公表しますか?という問題です。

産地を守る為に、その1本だけ闇に葬るかもしれません。







私は当時、

あの悪魔のサクランボは突然変異で出来たのでは無く、



 

息子を失って自殺した母親の怨霊と、

首を絞めて殺された30羽のハト達の怨み

そして、その無残に殺されたハト達の生き血を吸ったサクランボの木。




それらが産んだ、悪魔のサクランボだったのではないかと思いました。





ただ、メカニズム的に、

なぜ悪魔のサクランボを食べた黒人の子供達が、

青酸カリによる病気の様な症状を現したのかは、不明のままでした。





しかし、ある専門家は、

サクランボについて、興味深い事を語っていました。






私もこの事件に出会うまで知らなかったのですが、

皆さんは、青酸カリという毒物を知っていると思いますが、




 

実は、サクランボの種の中には、アミグダリンという有毒物質があり、

食べると、それが体の中で青酸を発生させ、小鳥なら死ぬという。


人間の子供も沢山食べれば危ないというのです。




 

たまにサクランボの種を割って、種の中の身を食べる人を見かけますが、

実は、毒を食べているのと同じだという事を、



知っている人は、意外と少ない。

END

 

 

 


P.S.

ちなみに、種を間違って呑み込んでしまった場合、種ごとなら大丈夫です。
種は固いので、そのまま消化されずに便に出ます。