●夏にやってくる悪魔
5月のこの時期になると、
日本のスーパーにも、ぼちぼちサクランボが出始めますね。
まだまだ高いですが、6月に入れば、
サクランボ狩りなどの行事も始まり、値段も手頃になるでしょう。
妹はサクランボ大好きなのですが、
私は余り食べません。
サクランボを見ると、昔のある事件を思い出してしまいます。
それは私がアメリカに居る時に起きた、
とても奇妙で、なおかつ恐ろしい事件でした。
私はアメリカのワシントン州の、
シアトルという所にある大学に行っていました。
皆さんは、アメリカのサクランボと聞くと、
きっと、大きくと赤黒い感じのサクランボをイメージすると思いますが、
ここシアトルで取れるサクランボは、レーニアチェリー(Cherry-Rainier)といい、
日本の佐藤錦と似た様な色のサクランボが取れるのです。
味も日本の物とそれほど変わりません。
逆に言えば、日本と同じ物を送っても費用が嵩んで売れないので、
日本へ輸出されるものは、
日本ではお目にかかれない品種のサクランボが選ばれるのかもしれませんね。
だから、よく日本のサクランボは美味しくて、
アメリカのは大きくて色黒で味も劣るという人がいますが、同じ物もあるのです。
さて、
悲劇の始まりは、
シアトルから少し離れたある町に、
一件の家が売りに出された事から始まります。
その家は、平屋でしたが、部屋数もあり、
家の前に大きな庭があり、
なによりも魅力だったのは、
その庭に、大きなサクランボの木が1本植えられており、
毎年、そこには沢山のサクランボが成るという家だったのです。
それからもう1つ。
なぜか、その家は、周りの家と比べても格安で売られていました。
なので、売りに出されると、
わずか1週間のうちに売れてしまったといいます。
やがて、その家に引っ越して来たのは、
親子合せて7人という大家族の黒人の一家でした。
そこに住んで、最初の1年は何事も起きなかったといいます。
ところが、2年目からでした。
始めに症状が現れたのは、一番小さい子供の2人でした。
めまいや嘔吐を頻繁に繰り返す様になり、
医者に連れて行っても、原因は分からず、
やがて、お姉ちゃんやお兄ちゃんにも、めまいや嘔吐がおき始めました。
そのうち、一番小さい子が呼吸困難になり、入院。
お姉ちゃんも意識が無くなるという事が有り、一時入院となりました。
ところが、学校が始まる9月頃になると、
みんな体調が良くなっていき、何事も無かった様な状態となりました。
きっと医者からもらった薬が良かったのだと、家族は胸を撫で下ろしました。
ところが、悪魔は去った訳では無かったのです。
翌年の6月になると、またあの症状がやってきたのです。
再び、小さい子二人がめまいと嘔吐を頻繁にする様になり、
やがてお姉ちゃんやお兄ちゃんも、続くようにめまいや嘔吐。
そして、またお姉ちゃんの入院。
それに加えて、今年は父親と母親もケイレンしだし、顔面が赤くなったといいます。
そして、不思議と学校が始まる9月頃になると、
みんな体調が良くなっていき、何事も無かった様な状態となりました。
それはまるで、夏にやってくる悪魔の様でした。
そして、3年目の夏を迎えた時でした。
再びこの家に、悪魔がやってきたのです。
今度は、めまいや嘔吐だけではありませんでした。
一番小さい子と、お姉ちゃんが、
相次いで静水圧性肺水腫という難しい病気になって入院したのです。
命は助かったものの、二人とももう少しで死ぬ所だったといいます。
この家だけに起きる、不可解な病気。
そして夏だけに起き、夏が終わると去っていく悪魔。
奥さんの知り合いが、保健所の偉い方だったのもあり、
この家に調査が入りました。
やがて、悪魔の正体が分かる事になるのです。
後半は、明日のブログに続く。