●3人のたった1つの共通点
このお話は、一昨日のブログ(●開かずの部屋)の続きです。
従って、一昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12103161288.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
北沢さんの家で起きている不思議な現象というのは、去年亡くなった祖父の霊が、
今でも祖父が居た部屋に居て、その部屋を使う事を許さないというのである。
だから、今では元祖父の部屋は、開かずの部屋状態となっていて、
気味悪がって、誰もその部屋を開けようとしないというのだ。
ただ、北沢さんの商売も最近右肩下がりで、
これはやはり、家の中に開かずの部屋があるせいではないか。
北沢さんのお話だと、事の起こりは、昨年、祖父が亡くなってからだという。
北沢さんの祖父は、ガンになり入院していたが、最後は自宅で死にたいという、
祖父のたっての要望から、ホスピスには行かず、訪問看護という形をとり、
最後の半年間は、在宅緩和ケアとなったという。
そして、お祖父様は自宅の自室で亡くなられたのである。
家族はお祖父様の最後の要望を聞いてあげて、自宅で看取ったのである。
ここから、北沢さんの家で不思議な現象が起き始めたのである。
最初に異変が起きたのは、お祖父様の死後、3ヵ月が経った時だった。
遠方に住む友人の方が、香典を持参してお線香をあげに来てくれたという。
日帰りで帰るのも難しいと思われたので、
良かったら、今夜は夕食を召し上がって、泊まって下さいと勧めたという。
お祖父様の部屋の遺品も少し片付き、ゲストルームにもなる様にしていたという。
そこでその友人は、元お祖父様の部屋にその日は泊まったのである。
ところが翌日、そのご友人は、背中と腰が痛くて立てなくなり、
救急車を呼ぶ事態になったのです。そして、その痛みは1週間続いたといいます。
それからしばらくして、北沢さんの友人が、家に来て一緒にお酒を飲んだ時、
すっかり酔いつぶれてしまい、家に泊まっていけとなりました。
そこで彼も、今はゲストルームになっている亡き祖父の部屋に泊まったのです。
すると、まだ中年の彼も、朝起きると、背中と腰が痛くて立てなくなり、
2時間ほど湿布やマッサージなどをしてなんとか歩いて帰ったといいます。
前に救急車で運ばれたご友人と同じ症状だったので、
家族はこれはオカシイという事になったという。そしてこれはきっと亡き祖父が、
この部屋を使わせたく無いのではないだろうか。という意見が飛び出したのです。
というのは、生前お祖父様は秘密主義の方で部屋に入る時はノックは当たり前で、
祖父の「どうぞ」というの返事が無い限り開けてはならないと、
キツク皆に言い聞かせていたといいます。
そして、祖父の死後も、その仕来りは生きているのではなのか。
つまり、「どうぞ」というの返事が無くその部屋を使用する者には、
祖父の霊障が襲ってくるのではないか。というのです。
しかし、その家族会議に居た長男が、そんなバカげた話があるはずはない。
祖父の霊障などであるはずが無いと言い出し、
自分が試しに今日そこで泊まってみると言い出したのである。
そして、翌日。やっぱり、その部屋で寝た長男は、背中と腰が痛いといい、
すぐに湿布をしたという。ただ立てないほどでは無かったという。
やはり家族には手加減をしたのだろうか。と、みんな囁いたが、
これは祖父の霊障に間違いないだろうという理由がもう1つあるという。
それは、生前この部屋で在宅緩和ケアしていた祖父は、
よく背中が痛いとか、腰が痛いと訴えていたのである。つまり、これが霊障なら、
祖父が起こしている現象以外には考えられないというのだ。
こうして、現在、元祖父の部屋には誰も近づかず、開かずの部屋となっている。
私も一連の出来事は、何らかのお祖父様の霊障の可能性がある様に思えた。
しかし、なぜお祖父様は、もう使わなくなった部屋を誰にも使わせないのだろう。
そしてなぜ、友人や家族までをも襲うのだろう。疑問だらけである。
私は意を決して、そのお祖父様の部屋に行ってみる事にした。
それは2階建ての立派な家だった。
問題の開かずの部屋は、家の一番端にある8畳の和室だった。
南向きの良い部屋である。この家を建てたのは亡くなったお祖父様だという事で、
一番良い部屋を自分の部屋にしたのだろう。
多分、亡くなったお祖父さんは、この家のこの部屋が好きだったのだろう。
だから、最後はこの部屋で亡くなりたいと思ったに違いない。
この家で、何か変わった事はなかったかと奥さんに聞くと、
あの開かずの部屋の怪奇現象以外には無いという。
つまり、庭も含めてあの8畳の和室以外で、変な事が起きた事は無いというのだ。
2ヵ月位開けた事が無いからか、若干薄らとカビの臭いだろうか。
湿った感じが漂う。「お邪魔します。」「入らせてもらいます。」
カーテンを開けて日光を入れ、窓を開けて、空気の入れ替えを行った。
その間、ラップ音などの反応無し。
元々南向きの良い部屋なので、カーテンを開けると、朝の日光が差し込み、
よどんだ空気も、開けた窓から入ってくる朝の新鮮な空気と入れ替わっていった。
開かずの部屋に入って、10分。今の所、何も起きない。
部屋の中には、畳が8畳敷きつめられ、そこにタンスが2つだけあった。
以前はお祖父さんが使っていた机や、本棚、観葉植物などがあったそうだが、
ゲストルームにする時にそれらは処分されて、
今はこの2つのタンスのみを残すだけとなっているそうだ。
タンスの中には、処分出来なかったお祖父様の遺品が詰め込まれているという。
また、この8畳にある押し入れの中にも、多少お祖父様の遺品が入れてあるという。
さて、後はタンスの中と、押し入れの中が気になるが、どちらを先に調べようか。
やはり、今、目の前にあるタンスから調べてみよう。
タンスは2つあるが、
1つは、桐(きり)製の洋服ダンスである。
ドアの所に立っている奥さんに聞くと、これは祖母の嫁入り道具だったという。
とても綺麗な白い桐タンスである。
上が洋服がけられるぐらいのスペースがあるもので、観音開きになっていて、
下2段は引き戸で取っ手が2つ付いている。
きっとお祖父さんは、一人でこの部屋で寝たきりになった後も、
このお祖母さんの白い桐のタンスを見て、良き時代を思い出していたに違いない。
「お祖父様、白いタンスを開けさせて頂きますね。」
一声かけてから、まずは上の観音開き部分を開けた。
開けた途端、
若干、防虫剤の臭いがした。
普通に、洋服が沢山詰め込まれる様にかけてある。
3分の一は、亡き祖母の服で、残りは祖父の洋服だという。
洋服の下に箱が2つあった。
奥さんに聞くと、その中には、
亡き祖母のネックレスや宝石、祖父の時計が入っているという。
もう1つの箱の方には、亡き祖父母のパスポートや写真などが入っているという。
なるほど、
余り開けたくは無い感じがした。
今回は、3人の人が背中や腰が痛くなるという現象である。
この白いタンスを開け、箱を開けて、
宝石などを盗ろうとして、亡き霊の怒りを買い。
亡き霊に背中や腰を痛くされたという事も無くも無いが、
今回は違うだろう。
なぜなら、
3人全員が宝石や時計を盗もうとしたとは考えられない。
特に3人の内、1人は孫である。
誰も使わないでここにあるよりも、孫ならあげてもいいくらいだ。
それに、3人とも朝起きたら、体が痛くなっていたのである。
痛くなるなら、盗んだ直後であったり、
痛くなって立てない状態の時に、ポケットから盗品が出て来たりしたはずだ。
「失礼いたしました。」
そう言って、扉を閉めた。
「お祖父様、下の引き出しを開けさせて頂きますね。」
下2段の引き出しを両手で引っ張って開けると、
上の段には、着物やズボンが入っていた。
下の段には、色々な小物類が入っていた。
いずれも、問題がある様な感じは見受けられない。
ここまで、引き出しや扉を開ける音以外に、
変わった音や、ラップ音は聞こえない。
もう1つのタンスは、
薄茶色のそんなに古く無い、現代風のタンスである。
聞くとこの家を建てた時に、祖父が買ったものだという。
小さな引き出しが、上部に5つあり、
大きな引き出しが下段に3つあった。
いずれも中には、亡き祖父母の遺品が詰まっていた。
一応全部開けてはみたが、問題ありそうな気がしない。
タンスだけを考えたみた場合、
明らかに亡き祖父が大事に思うのは、
やはり、亡き祖母が嫁入り道具としてもってきた白い桐のタンスの方だろう。
この部屋に泊まって、寝ている時に、
寝相が悪くて、夜足でこの桐タンスを蹴って、
霊の怒りをかったのかな。とも想像してみたが、
3人とも桐のタンスを蹴ったというのも、無理があるかな。
それに、蹴った事を怒るなら、蹴った足が痛くなるのが自然な流れである。
タンスが原因じゃない気がした。
そうなると、残るは押し入れである。
さて、先にタンスを見たのには理由がある。
実は、部屋に問題がある場合、
押し入れに問題がある場合が、けっこう多いのである。
それには、3つ理由がある。
■なにし、押し入れはタンスよりも、色々な物が入るから、
人形が入っていたり、遺骨が入っていたりする。
■また、貴方は押し入れに昔隠れた覚えは無いだろうか。
つまり、人が入れるスペースである事から、
昔押し入れに入って遊んでいた子など、それを懐かしんで、
そこにたたずんでいるという事も希にある。
■一番嫌なのは、押し入れの天井が外れて、
屋根裏部屋に通じるタイプである。
そうなると、屋根裏部屋まで調べる必要が出てくる場合もあるのだ。
つまり、一番嫌な場所を、後回しにしたという事である。
残るは、この押し入れか。
嫌だなぁ。
そう思いながらも、
「お祖父様、押し入れを開けさせて頂きますね。」
と言って、一気に開けた。
「ガラッ!」
すると、
開けて、驚いた!
なんと、
拍子抜けとは、この事だろうか。
押し入れは、2段になっていて、
上には、敷き布団と、掛布団。
下には、座布団が5つと、
折りたたみのテーブルとコタツが入っているだけである。
何ともシンプルである。
祖父母の遺品が入っているとばかり思っていたのだが、何も無い。
それに、天井が開くという押し入れでも無かった。
そういえば、ここは1階だから、天井が開く訳が無い。
結局、この部屋に問題らしき物が無いのである。
それはそれでいいのだが、
では、いったい3人が3人ともこの部屋で、
背中や腰が痛くなる現象は、なんだったのか。
部屋を調べてもさっぱり分からない。
私はその場で、30分ほどじっとしていたのだが、
何か起こる訳でも無く、
ただ時間だけが、虚しく過ぎていった。
何か見落としている物があるのだろうか。
そう思って考えるのだが、
何も疑わしい物が無いのである。
もう一度、事件のあらましを考えてみよう。
3人は相次いで、背中や腰に痛みを感じて、歩けなくなった。
そして、それは亡きお祖父さんと同じ現象であった事から、
亡きお祖父さんの霊障ではないかと、怖がる様になり、
この部屋が、開かずの部屋となったのである。
不思議な事に、3人それぞれ痛みの度合いが違うのだ。
最初の人は救急車で、次の人はしばらく歩けなくなり、
3人目の長男は、痛みだけ。
この差はなんなのだろう。
何を意味するのだろうか。
でも、この部屋に霊の気配らしきものは無く、
また気持ち悪い物も無い。
さっぱり分らん。
やがて、1時間が過ぎた。
何も起こらない。
何も音がしない。
静かなもんである。
改めて、被害にあった3人の事を考えてみた。
3人の共通点って何だろう。
明らかになっている共通点は、1つだけである。
それは、3人ともこの部屋に、
泊まったという事だ!
よく考えてみれば、3人の共通点はそこしかないじゃないか。
そう思って、部屋を見回した時、
ピンと来る物が目の前にあった。
そこには、被害者の3人ともに使った物があった。
そう、
布団だ!
そこで奥さんに聞いてみた。
「体が痛くなった3人とも、
あの押し入れの布団を使ったのですか?」
すると、奥さんはそうだという。
「もしかして、あの布団、
お祖父様がずっと使っていた布団ですか?」
すると、やはりそうだという。
ああ、これが原因だ!
そう思った。
奥さんの話によると、
お祖父さんが、病院から自宅療養になる時、
最後だからと、一番良い高い布団を買ったという。
それが、今目の前の押し入れにある高級布団なのだ。
この布団には、生前のお祖父さんの念が刻み込まれているのである。
背中が痛かったり、腰が痛かったという念が、
この布団に入っているのだ。
多分、最後はお祖父さん、相当痛かったのだろう。
痛いと叫んで、病院に戻されたくないと思ったのかもしれない。
痛みを我慢していた事が予想される。
まだ綺麗で使えて、しかも高い高級な布団だったのは分かるが、
苦しんで亡くなった人が使っていた布団や、
寝間着や、まくらは、捨てた方がいい。
どうしても保存しておきたいという場合は、使わないか、
リメイクして、座布団にするとか、
パッチワークして他の物に作り変えた方がいい。
たまに着る位の洋服ならいいと思うが、
さすがに四六時中使っていた布団は問題だったのだ。
そうしないと、今回の様に、
その布団で亡くなった人が、苦しんだ時、痛かった時の念が、
その布団で寝た人にも移ってしまう事があるのである。
そういえば、最初の被害者は老人だった。
多分持病でもあったのだろう。それで救急車騒ぎに。
次の方は中年だったので、なんとか歩ける程度に。
そして、長男は若かったので、ダメージも少なかったのかもしれない。
北沢さんは、その後、
仏壇のお祖父さんに、布団を処分する事を伝え、処分したという。
それ以後、そこに泊まっても、痛くなる様な人は現れなくなり、
今は、ちゃんとゲストルームとして使っているという。
また、奥さんに近々子供が産まれるそうで、
将来は、その子の部屋にすると言っていた。
今回は、霊の仕業では無かった。
あのまま、亡きお祖父さんの霊の怒りだと思って、
開かずの部屋にしていたら、お祖父さんが可愛そうである。
その点でも、良かった。
将来、あの部屋が孫の部屋になった時、
きっと、お祖父さんが再び、あの部屋にやってくるだろう。
お孫さんを見守る、
優しいお祖父さんとして・・・・
END