●ふたりの修学旅行
このお話は、昨日のブログ(●6歳差の逃避行)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12101012591.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
それは女性からの電話相談だった。
8ヵ月程前に、娘さんを劇症型心筋炎という珍しい病気で亡くしたという。
ところが、亡くなってから1ヵ月位してから、
彼女の家で不思議な現象が起きるのだという。
それはある日、3歳になる次女が「お姉ちゃんが来たよ。」と言ったというのだ。
それを境に、不思議な音が家の中でするという。
ある時は、亡くなった娘さんが使っていたランドセルを閉める音がしたり、
ある時は、トイレのドアが閉まる音がしたりしするのだという。
生前、娘さんはせっかちな方で、ランドセルやトイレのドアを、
勢いよく閉める癖があって、度々注意されていたという。
だから、それらは娘が出している音ではないか、
そして、娘は成仏出来ずに困っているのではないだろうかと、彼女は言った。
その他にも彼女は娘の場合、誰もお迎え人が来ないのではないかと言うのである。
それは彼女が26歳の時だったという。当時、彼女は教師をしていたのだが、
教え子のお兄さんと、ひょんな事から恋に落ちたという。
2人は愛し合っていたのだが、彼は二十歳の大学生。
彼女は6歳年上で、教え子の兄との恋愛だった。当然、彼の両親は大反対。
彼女のご両親も、仕事を失う事になると言って、大反対したという。
しかし、彼女の妊娠が分かると、二人は決心した。
彼女は学校に辞表を出し、二人は駆け落ちしたのである。
やがて、女の子が産まれ、彼は働きだし、それなりに幸せだったという。
彼女も娘が大きくなると、現地で教員に復帰した。
二人は誰にも知られず、ひっそりと暮らしていたと思っていた。
しかし、娘が5歳になったある日、彼女の母親が、どうやって突き止めたか、
自宅にやってきたという。そして、彼女にこう言ったというのだ。
「もうお父さんも、許してるから、一度家に戻って来なさい。」
「実はね。お祖父ちゃんが危篤なの。 お祖父ちゃんだけよ。
貴方の事、初めから心配してたの。孫だけは見せに行ってあげて。」
夫とも話した結果、一週間後実家に一時帰省したという。
しかし、お祖父さんは一度も目を覚ます事が無く、
折角病院に駆け付けたのだが、一言も話す事無く亡くなったという。
彼女は、今まで親不孝をしてしまったと詫びたという。
それから5年後、その娘さんが病気で亡くなったのだった。
先祖と縁を切って逃げた土地で亡くなった娘。
彼の兄妹や両親・祖父母も健在で、彼の身近な家系で亡くなった人はおらず、
また彼女の兄妹や両親も祖母も健在。
唯一亡くなって娘を迎えに来てくれそうな霊は、お祖父ちゃんだけなのだが、
お祖父ちゃんに不義理な事をしてしまい、
とても一度も見た事も無い娘をお迎えに来てくれるとは思えないという。
つまり両家にとって新仏である上に、駆け落ちと言う不義理な行動をしてしまい、
しかも親族から逃げた、辺境の地で亡くなった娘を、
迎えに来てくれそうな死者の霊などいないのではないというのである。
家で起きる怪奇現象は娘が成仏出来ずに、さ迷っているのではないでしょうか。
どうしたらいいでしょうか。そんな電話相談だった。
亡くなった人は、49日間は自宅付近に居るのが普通だ。
しかし、8ヵ月経った今でも娘さんが近くにいる気配や音が聞こえるという。
彼女の話を聞く限り、娘さんは浄化せずに、
未だ家に留まっている可能性が高いと思った。
では、なぜ娘さんは浄化せずに、自宅に留まったいるのだろうか。
彼女は、娘が新仏で、誰もお迎えに来てくれないからではないかという。
確かにそれもあるかもしれない。
普通人が亡くなると、先に亡くなった母親や父親、もしくは祖父母や、
先に亡くなった夫が、貴方を迎えにきて、あの世への案内人になってくれる。
つまり、死後また両親もしくは祖父母や亡き夫に会える事になる。
亡くなった人の墓参りとかお盆や命日の供養は、
その人が成仏する様に行う為だけではない。
実は、何十年か先に、貴方が亡くなった時、
あの世へ先に旅立ったその人に道案内として、
迎えに来てもらうという自分の為でもあるのである。
そういう意味で言えば、今回の彼女の様に、
家系を捨て、駆け落ちした後に、亡くなってしまった娘さんを、
お迎えに来てくれる人がいるとすれば、彼女のお祖父さんだけである。
ただし、彼女が心配している様に、
彼女が駆け落ちしてから、一度もお祖父さんと話していないし、
お祖父さんは娘さんを見てもいない。
つまり、駆け落ちして家を出てから和解せずに亡くなっている状況である。
まず、そこに問題が1つあるとして、
私は他にも娘さんが旅立てない理由があるのかどうか、
彼女に色々聞いてみた。
最初に質問したのが、
「今、娘さんの遺骨はどうなっていますか?」だった。
すると、8ヵ月経った今でも自宅にあるという。
まぁ、好ましくは無いが、仕方がないだろう。
私の経験上、駆け落ちしたり、家出した後に、
子供や親が亡くなった場合、ほとんど墓に苦労して自宅にある場合が多い。
実家を捨てたので、実家の墓に入れてもらう事は出来ない。
かといって、家出しているので、お金も余り無く、新しくお墓を買う資金も無い。
こういう場合、自宅に1年は置いておいても問題は無い。
ただし、こういう事情でお墓を買えないの。と、
時々遺骨に理由を話してあげるのが良い。
でもさすがに1年を超えると、霊障が起きる事があるので、
お寺などに、一時安置させてもらうと良い。
ずっと自宅に置いておくと、その亡くなった人の性格にもよるのだが、
霊障が家族にふりかかる事も時々ある。
私が知る限り、一番最悪な霊障は、
新たに家族の誰かが亡くなるというものである。
つまり誰かが亡くなれば、さすがにお墓を買うだろうと期待して起こすのである。
次に彼女に聞いたのが、
「娘さんの部屋とか、持ち物は現在も生前のままですか?」
すると、今も娘さんが亡くなる前と変わらず存在しているという。
まぁこれも、愛する娘を失った母親にとって、
直ぐに片づける事なんて出来ないだろう。
しかし、もし娘さんが亡くなって一周忌を過ぎても、
娘さんの気配や音がするようであれば、生前の娘さんに、
亡くなったという自覚を持たせ、天国に旅立てる様に、
生前の部屋は無くした方がいい。そう言っておいた。
次に聞いたのが、
「娘さんが亡くなる時、何か思い残している事や、
残念に思っていた事。食べたかった物とか言っていましたか?」
すると、病院食は確かに余り美味しくないと言っていたという。
他には、修学旅行に行きたかったと言っていたという。
「修学旅行は、沖縄とかですか?」と聞くと広島だという。
こういう何気ない思い残しがあって、旅立てない子供もいる時がある。
彼女の娘さんが、これによって旅立てないのかは分からないが、
可能性は無くも無い。
娘さんは病院で、たまにどこどこのケーキが食べたいとか言っていたというので、
たまにケーキなどを家族で食べる時は、テーブルの端に一切れお皿にもり、
娘さんにと言って、10分位供えてあげて下さいとアドバイスした。
また、色々質問した中で分かったのだが、
彼女は、度々遺骨を前にして、泣いてしまっていたという。
まぁ、愛する娘を突然亡くしたのであるから、
お母さまの気持ちは良くわかる。
しかし、半年過ぎても、遺骨の前で泣くのは良く無い。
それも「どうして私よりも先に死んでしまったのよ。」
という言葉も時々言っていたという。
こういう言葉をつい、亡くなった子供や夫に対して、
言ってしまう心境は分かるのだが、実は良く無い。
愛する母親が、私の遺骨の前で泣いているのをほっとけないし、
何よりそれが自分に責任がある様に言われてしまうと、
霊は天国に旅立ちにくくなって、いつまで家に留まる原因となるのである。
だから、彼女に、
泣いてしまうのは仕方が無いとして、
亡くなった人を責める言葉とか、
引き留める言葉は言わない様にとアドバイスした。
最終的に残った問題は、
やはりお迎えがいるかどうかになった。
しかし、電話相談ではここまで限界である。
「後は、貴方が娘さんを浄化させてあげて下さい。」と言うと、
彼女は、
「そんな、私は占い師でも霊能者でもありませんから、
娘を浄化させるなんて事、出来ません!」という。
「大丈夫ですよ。
時間はかかるかもしれませんが、
これから言う事をやってみれば、きっと貴方の娘さんは、
浄化の道を進み始めるはずです。
それに母親の貴方がやる方がいいのです。」
私は彼女の3つ事をアドバイスした。
■まず1つは、娘さんの写真を持って、
亡くなったお祖父さんのお墓に3日間墓参して、娘の写真を見せながら、
娘を天国に導いて下さいとお願いする。
そして、自宅に簡易仏壇を作り、お祖父さんを1ヵ月毎日供養して、
娘の事をお願いする。
よく1時間違いで死に目に会えなかったという相談を受けるが、
実は間に合っている。亡くなってしばらくは病室にいるし、
葬式にも来ていて最後の別れをちゃんとしている。
だから、お祖父さんは、彼女の娘さんもちゃんと見ているはずである。
「可愛い孫を会いに連れて来てくれて、ありがとな。」と。
ちゃんとお願いすれば、きっと娘さんを迎えに来てくれるはずである。
■娘の遺骨か写真に、声を出して時々話しかける。
お祖父さんについて行って、天国に行くのよ。と、
もし誰もいないのなら、光が射す方に行くのよと。
その後、彼女はそれらを実行したという。
すると、2ヵ月位たった頃から、
娘さんの気配や音はしなくなったという。
多分、お祖父さんが迎えに来てくれて、手をつないで天国へ進んだのだろう。
ちなみに、私の3つ目のアドバイスは、
■娘さんが最後心残りだった広島への修学旅行の旅行先の写真を手に入れて、
遺骨の前に飾って見せてあげてどうですか。と言ったのだったが、
彼女はそれをしなかった。
と言うよりも、
私がアドバイスした事以上の事をしたのである。
あれから、彼女は学校に行き、
娘が行くはずだった修学旅行の日程や行先を聞いてきたという。
その時の予定表などを貰って来て、
なんと!
彼女は実際に広島に行ったのだというのだ。
遺骨を抱いて!
ふたり、初めての新幹線だった。
原爆ドームを見て、
昼はふたりでお好み焼きを食べる。
そして厳島神社へ。
すると、彼女の側を、
母親と手をつないだ親子がお参りに来ていたという。
涙が出た。
思わず、娘の遺骨をギュッと抱きしめたという。
最後に、
ふたりで、
絵馬を買った。
「愛する娘が浄化して天国に行けます様に。 母」
END