●庭が泣いている。
「庭が泣いている。」
こんな洒落た言葉を言ったのは、私では無い。
今日のお話に出てくる、ある不思議な人物が言った言葉なのだ。
これはだいぶ前になりますが、
私が占いの雑誌にまだ電話相談の広告を出していて、
一般の方の相談に乗っていた頃のお話です。
ある主婦の方からの電話でした。
彼女の5歳になる次女が、
喘息(ぜんそく)の様な奇妙な病気になったというのです。
奇妙だというのは、
医者に連れて行くと、まったく喘息の症状は無いというのである。
しかし、家に帰って来ると、
また喘息の症状が現れるというのだ。
そして、他の医者に連れてっても同じだという。
とにかく、家に居る時だけ娘が苦しがるというのである。
私は当然、こう言った。
「すみません。私は占い師なので、
娘さんの体の事はちょっとぉ・・・・・」
すると、彼女はある不思議な話をし始めたのである。
それは、2ヵ月前の事だったという。
彼女が家で、掃除をしていた時だった。
玄関のベルが鳴ったので、
ドアフォンのカメラで確かめると、
1人のお坊さん見たいな、修行僧らしき男の人が立っていたという。
側に居たお祖母ちゃんに、
「へんな男の人が来たけど、どうしよう。」と聞くと、
お祖母さんは、
「修行僧の方なら悪い人じゃないだろう。出てあげなさい。」
というので、彼女は玄関を開けて、門の所に行ったという。
すると、その修行僧は、一言、
「お水を1杯いただけませんか。」と言ったという。
そこで、水1杯ならと思い、
どうぞ、と言って門を開けて、玄関の方に行くと、
その男の人は、
「突然お宅にお邪魔するのも失礼ですから、
庭の縁側でいいですよ。」と言ったという。
奥さんは、変な人だなと思いながらも、
お水をグラスに1杯入れようとした時だった。
横からお祖母ちゃんが、「ちょっと待って。」
と言って縁側の方に行ったという。
祖母は縁側を開けて、その修行僧らしき人に、
「お水じゃなくて、お茶もありますがいかがですか?」と聞いたという。
すると、その男は、
「そうですか。ではお茶を頂きます。」
やがて、祖母がお茶を入れ、祖母が直接その修行僧にお茶をあげた。
男は、茶を飲みながら、
ただただ、庭を眺めていたという。
何も言わず、
ただ庭を見ているだけだったという。
私も祖母も、早く帰ってもらいたいと思っていたので、
特にその男に、こちらから話しかける事はしませんでした。
やがて、その修行僧らしき男はお茶を飲み終えると、
変な事を聞いてきたのです。
「この家には、幼い子供はおりますか?」
「はい。5歳になる娘がいますが・・・・」と言うと、
「そのお子さん、何かの病気ではありませんか?」と言ったという。
「いえ、元気ですよ。」と奥さん。
すると、その修行僧の男は、
「そうですか。それは良かった。」
そう言って、腰を上げると、
茶の礼を言って、門の方に歩いていったといいます。
その時だった。
祖母が何を思ったのか、
その修行僧を呼び止めて、
「あのう、ちなみに、
どうして子供が病気だと思ったのでしょうか。
良かったら、教えてもらえまえせんか。」と聞いたという。
すると、その修行僧は、
「いや、何でも無いのなら、気にする事はありません。
ただ、
庭が泣いていたので・・・・」
そう言って、去って行ったという。
その時は、
庭が泣いているなんて、
変な事を言う人だったね。と二人で話していたという。
それから1ヵ月が経った頃、
その修行僧の事も忘れかけていた時だった。
急に5歳の娘に、あの喘息の症状が出始めたのである。
どの病院に行っても、異常が認められないのに、
家にいる娘は苦しがっているのである。
そんな姿を目の前にした時、
あの時修行僧が言った、
「そのお子さん、何かの病気ではありませんか?」という言葉を思い出した。
そして、あの言葉、
「庭が泣いていたので・・・」という不思議なフレーズ。
それから、彼女は色々な人に聞いて回ったという。
会社の人や、庭師の人、占い師、神社の神主さん。
でも、誰も分かる人はいなかったという。
やがて雑誌に載っていた私にあたったという。
しかし、沢山の占い師の方や神主さんまでもが分からない事が、
私に分かる事も無かった。
当然、私も断ったのだが、
ちょっとだけ変な気を起こして、
近くなら一度行って、その庭を見てみたいと思ってしまったのである。
当時、私は不思議な物が大好きだったので、
「庭が泣いている。」とはどういう事なのだろうか。
修行僧は、いったい庭で何を見たのだろうか。
そんな興味を持ってしまった私は、つい場所はどちらですか?
と聞いてしまったのである。
すると、奈良県だという。
なんとはるばる奈良から電話してきたのか!
てっきり東京か千葉か埼玉辺りだと思っていたので、
「えっ! 奈良ですか。
それは全然無理ですわ。」と即刻断った。
すると、奥さんだった電話が、
急にご主人に変わり、
「是非お願いします。交通費とは別に3万円お支払しますので、
なんとか来て見て欲しいのですが。」と頼んできた。
多分、場所を聞いてきたので、お金によっては来てくれると思ったのだろう。
正直言うと、
奈良なら2日がかりになるかもしれないので、
もう少し欲しい所だし、宿代や食事代はどうなるのかな。という思いもよぎった。
ただ、相談の電話の時、
ご主人はとても娘思いで、この地に引っ越して来たのも、
年の離れた長女が大学に入学したのに合わせて、引っ越して来たというのを聞いていた。
それほど娘さん思いの父親なのである。
そんな彼の子供の弱みに付け込んで、もっとお金が欲しいとは言えなかった。
それに、お金よりも、
あの修行僧が言った、
「庭が泣いている。」という言葉の方が気になっていた。
私は意を決して、奈良に行く事にした。
あの修行僧の男は、
いったいその庭で何を感じて、何を見たのだろうか!
後半は、明日のブログに続く。