●予言の裏側
人は何かを予言されて、それが当たるとビックリします。
私はかつて、初めて行ったダンスホールで、
いきなり隣にいた友人に、こう予言しました。
「このダンスホール、潰れる(つぶれる)よ。」
やがて、それが当たるのですが、
まぁ、一応前もって言い当てるのですから、
凄い予言だと、驚かれるかもしれませんが、
裏側を知れば、そう驚く事でも無かったりします。
これは私がアメリカに留学中でのお話です。
当時私は、学費を稼ぐ為に、
シアトルのダウンタウンで、アルバイトをしていました。
最初どこで働いたらいいか、考えた時、
食べ物屋がいいと思いました。
それも日本人レストランがいいと思いました。
なぜなら、
他のレストランは分かりませんが、
日本人レストランの場合、まかない料理が出るという事を聞いていたからです。
留学も1年もすると、日本食が恋しくなるものです。
そこで、シアトルで日本人レストランを探してみると、
紅花というステーキレストランがあるのを見つけました。
うまくいけば、まかない料理にステーキが出ると思い、
すぐに紅花に申込みに行きました。
すると、即、不採用でした。
アメリカでは、飲食店でアルバイトする場合、
市の衛生許可試験をパスしなければならないというのです。
そんなの全然知らなかったぁ。
マジか!
当然、試験は全部英語です。
しかも日本の様に、それ用の参考書や問題集もありません。
ただ、何度受けてもいいという事なので、
ダメもとで、いきなり受けに行きました。
もう昔の事なので、どんなテストだったか覚えていませんが、
結果は、即日免許を貰いました。
記憶ではかなり、簡単なテストだった気がします。
例えば、食べ物類は床から何㎝以上離れて置かなければならないとか、
多分、日本人には常識となっている様な問題だったと思います。
私はさっそく紅花で働く事になりました。
担当は皿洗いです。
こりゃあ、手が荒れるなと思って職場に着くと、
早番の方が、手順を説明してくれました。
お皿やコップを、ウェイトレスさんが持って来たら、
まず、洗剤の入ったがシンクでざっと洗います。
それから自動食器洗い機用の動く台座に乗せます。
その台座が4つ位あり、それが順々に自動食器洗い機の中に吸い込まれていきます。
洗われて出て来た食器とコップを確認して、落ちない汚れがあれば、
取って洗うというものでした。
これは何も知らない私でも、出来る簡単なものでした。
手が空いた時間に、ウェイトレスさんがやる仕事を手伝って、
コップに氷と水を入れてあげたり、
コックさんの野菜を切る手伝いをしたので、
かなり重宝がられました。
今まで来たアルバイトの中で一番優秀だとも言ってもらえました。
別に私は優秀でも何でも無かったです。
ただ空いた時間は、他の人を手伝ったというだけです。
優秀の裏側も、実はそんな事ではないでしょうか。
まかない料理は、さすがにステーキは出ませんでしたが、
コックさんが、あまったステーキ肉で作るまかないはとても美味しかったです。
あと驚いたのは、
お客さんが毎回チップを、食事代以外にくれるのですが、
そのチップの一部が、皿洗いのバイトにも分け与えられるのです。
それは予想外の収入で嬉しかったです。
そんな紅花のアルバイトで知り合った男性と、
帰りにダウンタウン(街中)に行った事がありました。
なにやら新しいダンスホールがオープンしたというので、
見に行かないかというのです。
本当は行きたく無かったのですが、
色々と仕事を教えてくれた先輩だったので、
断れずに行く事になりました。
こういう付き合いって、仕事をすればあるものです。
そこはダウンタウンの外れにあったのですが、
紅花からそのダンスホールまではバスで行けました。
実はダウンタウンの中心部での、バスの乗り降りは無料なのです。
だから、町の特定の円の中なら、どこからでも乗り降り無料です。
これはとても便利で、いい制度だと思いました。
ダンスホールは、意外と地味な建物の地下にありました。
入り口で、彼がポケットから入場券を出して渡しています。
そうか、彼女にでもドタキャン食らって、臨時にオレを誘ったんだなと思いました。
ダンスホールに入ると、
人がいっぱいです。
暗いの分かりませんが、100人位いたでしょうか。
結局私達は、
そこに2時間位居たでしょうか。
彼は大満足だった様ですが、
私は正直来ない方が良かったと思っていました。
彼はそんな私に、
「シアトルにはこういう娯楽施設が無かったから、
きっとここは流行るよ! 絶対!」と言いました。
しかし、私はボソッと、
「でも、このダンスホール、潰れる(つぶれる)よ。」と言うと、
「えっ、ウソ! いつ?」
「そんな遠い未来じゃないと思うけど・・」
彼はそんな事ないだろうと言いいながら、別れました。
やがて、それから3ヶ月位経った頃でしょうか。
ある日仕事場に行くと、
その先輩が、
「お前の予言、当たったぞ!」と言ってきたのです。
聞くと、
あのダンスホールが、いきなり潰れたというのです。
直接の原因は資金難と言われていますが、
間接的な原因は、
そこの経営者が射殺されたからでした。
別にそれを分かっていて予言した訳ではありませんでした。
では、私はどこで、ダンスホールが潰れると思ったのでしょうか。
もう一度、私が始めてダンスホールに行った夜に、
時間を戻して説明しましょう。
私は初めてダンスホールに来たので、
ただただ、圧倒されっぱなしで、言葉も出ませんでした。
周りを見回すと、
暗いホールの中を、ミラーボールのライトが回っています。
私達は、とりあえず小さなテーブルのある隅の椅子に腰かけて、
飲み物を頼みました。
私は踊りませんでしたが、彼は好みの女性を見つけて一緒に踊っていました。
暗闇にいても、人は段々とその暗闇に慣れてくるものです。
しばらくすると、
暗闇だった場所も、段々と目が慣れて何かあるのか分かってきました。
すると、私はある事に気がつきました。
みんなが踊っている沢山の足の向こうのダンスホールの一部の床が光っているのです。
目を凝らして床を見つめると、
何か床の下で動いています。
私は何が動いているのか、近寄って見てみました。
すると、
動いていたのは、魚でした。
鯉もいるようでしたが、ほとんどは見た事が無い魚です。
床の下に、水槽があるのです。
多分、高さ30cm位の水槽があり、
その上に強化ガラスみたいな物を置き、
みんながそのガラスの床の上を踊っているのです。
ある人は、ジャンプして魚がびっくりしているのを面白がっています。
そしてある人は、ステップを踏みながら、
魚を追いかけている感じでした。
私はその光景を見て、
嫌ーな感じがしました。
魚が逃げる光景を見て、何か不吉な感じを覚えました。
それで帰り際彼に、
「このダンスホール、潰れるよ。」と言ったのです。
不吉な理由は3つあります。
■まず、魚も生き物なので、それぞれに感情があります。
それが毎日、脅かされ、追いかけられ、足蹴にされる。
そんな魚が沢山いるのです。そこに霊障が生じる可能性は十分あるのです。
■床下に大きな水槽を置くのは良いと言えません。
亡くなった霊は、人間の霊も、生き物の霊も水が大好きです。
特に地面よりも低い地下室の水には、自然と集まりやすいと言えます。
集まって来たのが良い霊ならいいですが、悪い霊だと良く無い事が起きかねません。
■最後に、このダンスホールを開いた人たちの先祖霊や守護霊の問題です。
中には、ダンスホール自体が嫌いな先祖もいるだろうし、
そんな魚の上でダンスするのは良く無いと思う先祖もいるでしょう。
そんな先祖の反対にあうのです。
例えば、
最近、猫や鳥を虐待して殺されているというニュースが流れますが、
多分、犯人は今まで誰にも見られていないから、
平気で続けているのだと思いますが、
見ている人はいるんですよねー。
いや、見ている霊はいると言った方がいいでしょうか。
その人の先祖霊が見ているんですよね。
相当がっかりしていると思います。
考えを改めないと、
やがて、悲惨な将来が待っていると思います。
そんな3つの理由で、私はダンスホールが潰れると思ったのです。
どうですか、
一見凄そうに思える私の予言も、
裏側を知ってしまうと、なんだぁという事です。
END