●人形離れしない娘
占い師の所には、色々な問題が持ち込まれる。
恋の問題、家の問題、友人関係から仕事の問題まで・・
ほとんどの生活に密着していると言ってもいいでしょう。
ただ、話を聞いてみると、
さすがに、それは占い師にじゃないだろう。という相談もある。
私が最初に、この電話相談を受けた時、そう思った。
なぜなら、相談の内容が、
小学生になる娘さんが、
なかなか人形離れ出来ないで困っているというのである。
一応、私も独身男性なので、
子育ての経験は無い。
だから、子育て関係の相談をされるなら、
私よりももっと相応しい人に相談された方が良い。
赤ちゃんの泣きやみ方法とか、
授乳の仕方を聞かれても、うまく説明できない。
ていうか、それ占い師に聞いちゃう?
ただ、私が彼女の話を聞いてみようと思ったのは、
彼女がこう言ったからである。
「今まで児童館や、児童相談所の方に、
娘を連れてって相談したのですが、ダメでした。
どうか話だけでも聞いて下さい。」
ちょっとエゲツナイ話だが、
私としても、話を聞くだけでお金をもらえるなら、
これほど楽な仕事は無い。
彼女のご主人は、貿易の仕事をなさっていて、
ヨーロッパをはじめ、東南アジア、北米を行き来しており、
毎月どこかの国に出張なさっているという。
そんなご主人は、アンティークの人形を集める趣味があるという。
だから家には、約20体を超えるアンティーク人形が飾られているそうである。
20体と言うと少ない様にみえるが、より良い人形が手に入ると、
前の人形はオークションで売ってしまい、良い人形と入れ替えるのだという。
問題の兆候は、約1年前に起きたという。
ご主人が、アメリカ出張から戻った時、
また1つ、アンティーク人形を買ってきたのである。
ご主人は出張の疲れも忘れた様に、帰宅するとさっそく
買ってきたアンティーク人形を旅行カバンから出して眺めた。
すると、もう寝ていたはずの娘さんが起きて来たという。
「パパ、お帰りなさい。」
そして、しばらくご主人が眺めていた人形を遠目に見ていたのだが、
段々と近づいて来て、そっとその人形に触ったという。
「抱いてもいい?」
今までは、ご主人が人形を買って来ても、
まったく興味を示さなかった娘が、初めて人形に興味を持ったという。
ご主人も自分の趣味が初めて娘に認められた様な気がして、
「ああ、いいよ。」と人形を娘に渡した。
娘さんは人形を受け取ると、
まるで赤ちゃんを扱う様にして、両手で大事に持ち、
頭を撫でてから、抱きしめたという。
しばらくして、ご主人が、「もういいだろう。」と言うと、
娘さんは、「もうちょっと。」と言ってなかなか離さないという。
20分も経った頃だろうか、
ご主人が、お父さんにも見せてと言って、
人形をとりあげようとすると、
急に娘さんが、「これミクに、ちょうだい。」と言い出したのである。
こんなに娘がご主人の人形に興味を示したのは初めてだった。
しかも欲しいという。
そこで、ご主人はこの人形と入れ替えるはずだった前に買った同じ種類の人形を、
飾ってあるケースから出して来て、
娘に「はい。じゃあ、これをミクにあげようね。」と言って差し出した。
しかし、娘さんは、
「こっちの方がいい。」と言って買ってきた人形を離さない。
同じ種類の人形で大きさもほぼ同じ、
若干今回買ってきた人形の方が古い時代に作られたもので、
人形を作ったメーカーが違うという物だったという。
価値としては、今回買ってきた方が、今まで飾ってあった人形よりも高い人形だった。
ご主人もやっと探して来た人形だけに、
前の物ならあげられるが、こっちは勘弁して欲しいと、
奥さんにも頼み、娘を説得してもらったが、
それでも娘さんは、頑として新しく買ってきた人形がいいと、
泣きだしたという。
これには2人とも困ってしまい、
とりあえずその夜は、娘さんに人形を預ける事にした。
明日娘が幼稚園に行っている間にでも、
古い人形と取り換えようと、夫妻は話したという。
ところが、娘さんは翌日から人形を持って、
幼稚園に行く様になったのだ。
それは幼稚園だけではなかったという。
食事の時も隣に人形を置き、
お母さんと買い物に行く時も、その人形と一緒。
寝る時も一緒なら、トイレに行く時も一緒なのだと言う。
人形を取り換える時が無いという事で、
ある日、娘さんが寝ている時に、こっそり入って、
人形を取ろうとしたのだが、娘さんがギュっと人形を抱きしめていたという。
そこで手を解いて、人形を何とか取って前の人形と取り換えた。
ところが、翌日娘さんが怒って起きて来て、
直ぐにケースから買ってきた方の人形を取り出して、部屋に閉じこもってしまったという。
奥さんは、もうしないからと、何とかなだめた。
しかし、娘さんの機嫌が治るまで、3時間もかかったという。
ご主人も、いつか飽きるだろうと思っていたのだが、
その状態が1年続いても、変わらなかった。
娘さんは、いつでも人形を離さなかったのである。
やがて、深刻な問題が浮上した。
娘さんが小学生になったのである。
小学生になると、さすがに学校に人形を持って登校するクラスメイトはいなかった。
やがて先生から電話があったという。
奥さん達も、学校の周りのみんなが人形など持って登校しないと分かれば、
娘も恥ずかしがって、持っていくのを止めるだろうと、安易に考えていたという。
しかし、娘さんは周りの目などまったく気にしない様で、
先生に注意されても学校に人形を持っていくのを止めなかった。
その時から、お母さんは児童相談所など色々な所に相談に行ったという。
人形を可愛がるのはいい。でも四六時中一緒というのは幾らなんでもおかしい。
娘はどうなってしまうのか。
私も、奥さんの話を聞いていて、
何点かおかしいなという感じた所はあったのだが、
実は奥さん、
もう1つ、私に相談してきた理由を話してくれた。
それは、テレビで見たのだというが、
テレビに同じような人形が出ていて、思わず恐怖に慄いたという。
同じ人形だったからである。
その人形の名は、
後半は、明日のブログに続く。