●悪徳不動産屋
このお話は、昨日のブログ(●頻繁に夢に出る、祖父の名前)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-12048237081.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
ある女性から、比較的深刻そうな相談が舞い込んだ。
彼女は、生れてから今までずっと貧乏だったという。
今は亡き父親は、工場で働いていたが、
生前から何人もの人に騙されて、常に借金があったという。
その上、工場が倒産、長年働いたのに、退職金もなく無職となった。
母親がパートに出るようになるが、2年後に病気になり入院。
父親は何とかツテを頼りに、小さい工場に雇ってもえるもその会社も倒産。
彼女は大学には行けず、高校生の時からバイト三昧。
どうせ大学には行かないと分かっていたので、バイトが主体の高校生活だった。
彼女が高校を卒業する頃から、少し家庭は明るさを取り戻したという。
彼女は卒業と同時に、大手の自動車会社の工場勤務となり一人暮らしを始め、
母親は無事退院。父もセキュリティの会社で雇ってもらえているという。
それから10年、家族はなんとか普通の暮らしをしてきて、
彼女にも200万円位の貯金が出来、
結婚を前提とした彼も出来き、全てがうまくいき始めたと思われた。
彼女は言う、「不幸は波の様に、やって来るのでしょうか。
一旦引いた不幸の波は10年後にまた大きな波となって襲ってきたのです。」
突然、父親が脳溢血で倒れ、そのまま帰らぬ人となった。
そして、結婚を考えていたという彼氏は、彼女の父親が亡くなったのを聞いた2日後に、
出て行ったという。しかも、今まで彼女が働いて貯めた貯金の200万円も消えていた。
警察に相談に行ったというが、被害届は受理されなかったという。
その理由の1つが、盗られた200万円は、
全てが彼女が稼いだお金ではなく、
その中のいくらかは元彼が稼いだお金が含まれていたからだという。
それでも元彼が入れたお金は10万円ほどで、190万円くらいは彼女のものだと訴えたが、
「個人間のトラブルになるので、弁護士雇って解決してください。」と言われてしまったという。
私達の人生は、どうしてこうツイていないのでしょうか?と彼女は嘆いた。
私はここまでの彼女の話を聞いて、
元彼がそこまで考えての行動なら、計画的な悪意が感じられると思ったが、
如何せんお金の問題は、私も裕福な暮らしではないので、
そう簡単に助けてあげる訳にもいかないし、
付き合った男が悪かったとしか、言いようがない。
私が助けてあげられるとすれば、何か彼女が霊的に、不幸を背負ってしまっている場合だが、
彼女に色々と話を聞いてみても、特に霊的に悪いという話は出てこない。
彼女のアパートには仏壇とかは無いが、実家のお母さんは、毎日仏壇で供養しているし、
お父さんも亡くなるまで、墓参りを欠かした事は無いという。ご実家の家相も悪く無かった。
そんな時、彼女がふと、変な事を言ったのである。
それは「なぜ、守護霊のお祖父さんは、私達を助けてくれないのでしょうか?」と言うのである。
とりあえず聞いてみた。「なぜ、貴方の守護霊がお祖父さんだと分かりましたか?」
すると、彼女は、頻繁に彼女の夢の中に、お祖父さんが現れるのだという。
確かに!夢の中に頻繁に現れるのは、守護霊である場合が多い。
そこで更に聞いてみた。「夢に出たお祖父さんは、何か言いませんでしたか?」
「何も言いません」と彼女。「じゃあ、夢に出てくるお祖父さんは、どんな顔をしていますか?
怒っている顔とか、笑っている顔とか。」
すると、彼女は意外な事を言うのである。
「顔は出て来ません。毎回、お祖父さんの名前だけ夢に出てきます。」
これは意外である。名前だけ出てくるという守護霊。
「え!? どんな風に出て来るの?」
「漢字で縦に、佐藤益次郎(仮名)って。」
夢の中に名前だけが、たてに?
佐
藤
益
次
郎
奇妙な夢である。こんな話を聞いたのは、私も初めてだ。
少し興味あったので、もう少し詳しく聞いてみた。
「佐藤益次郎って、空中に字が浮かんで出るの?」
「いえ、何かに書かれている時が多いです。」「どんな物に、書かれているの?」
「ある時は、木材の片面に書いてあったり、ある時は、十字架に書いてあったりします。」
「え?お祖父さんって、キリスト教?」「違うと思います。キリスト教なんて聞いた事ないし・・・」
なんか嫌な予感がする。
十字架に名前って、私の知っている限り、これは、
呪いだ!
彼女は、名前は木材や十字架に書かれていると言ったので、
詳しく聞くと、どうやら、
木材とは、杭の様に先が尖っているという。
これはもしかしたら、墓石の代わりに使われる墓標ではないかと思った。
普通は、お墓には墓石を建てるが、
墓石は高価である。そこでお金が無い人は、
墓石の代わりに木の角柱の先を削って、墓に突き刺し、
そこに名前を書いて墓標とした。
また、十字架もよく聞くと、長い方の木の下の方が少しだけ2つに分かれているという事から、
これは、十字架人形ではないかと思った。
十字架人形とは、呪いのワラ人形と同じような意味合いを持つ。
わらで作るワラ人形は作るのが大変だが、
十字架人形は、2本の木を組み合わせて、
長い方の木の下の部分を少し2つに分けて足とするので、
比較的簡単に呪いの人形が出来る方法だ。
それら2つに、お祖父さんの名前が書かれているという事は、
ターゲットがお祖父さんである事を物語っている。
聞くと、お祖父さんは既に他界しているという事なので、
お祖父さんの子供である、彼女の父親や、
お祖父さんの孫である、彼女に怨みが継承されているのかもしれない。
彼女の夢に、その呪いの杭や十字架人形が出るのは、
怨みの念を飛ばしている死霊の可能性もあるが、
彼女の守護霊や先祖霊が、彼女に知らせている可能性もある。
そうなると、
今までの彼女や彼女の家族の不運。
そして、お祖父さんを呪う夢。
この2つは、偶然では無い様な気がした。
ここまでは、私の、
そんな様な気がするというだけで、何の確証も無い。
本当に、お祖父さんは怨まれる様な事をしたのか。
そこに今回の相談の大きな鍵がある様な気がした。
そこで彼女に、お祖父さんの佐藤益次郎さんとは、
どういう人物なのか聞いてみた。
すると、彼女は会った事が無いという。
彼女が産まれた時にはもう亡くなっていたというのだ。
ただ、祖父はとてもお金持ちだったという。
彼女は、もう亡くなってしまった人への呪いも、私にかかってくるのですか?
と聞いてきたが、
実はある。
孫の代まで祟るというのは、よくある事なのである。
勿論、それはどんな怨みかによる。
ただ孫の代まで祟るという事は、よっぽど強い怨みなはずである。
それだけに、その佐藤益次郎さんという彼女の祖父が、
どんな人物だったのか興味があった。
彼女との相談は、一時中断となった。
彼女が父親に、祖父の佐藤益次郎について聞いてみるという事になり、
私はその返事待ちとなった。
ところが1週間経っても、彼女からの連絡は無かった。
やがて、私も日々の仕事からその事を忘れかけていた。
半月も経った頃だろうか。
再び彼女から電話があった。
そして、彼女の口から、信じられない様な事実を聞かされるのである。
あれから、彼女はお母さんにお祖父さんの事を聞いたという。
しかし、母親は余りお祖父さんの事については知らなかった。
父が言っていたのは、お金持ちで、都内に大きな屋敷を構え、
何でも買ってくれる優しいお祖父さんで、
亡くなるまで不動産の仕事をしていたという。
彼女のお母さんは、そんな優しいお祖父さんが、
人に怨まれる様な事はしていないだろうと言うのだ。
普通はこの時点で、終わるのだろうが、
彼女は違った。
なにしろ、呪いの夢を見たのは、父親や母親ではなく、
彼女自身なのだから、父親の言葉だけでは納得がいかなかったのだろう。
彼女は、お祖父さんの妹さんに会いに行ったという。
あの佐藤益次郎さんの妹が、90歳を超えてご健在だったのだ。
今は関西に住んでいるというその妹さんに会いに行った。
そしてお兄さんの佐藤益次郎さんの話を聞いてきたのである。
それは、何もかも初めて聞く話で、
彼女にとっても、衝撃的な話だったという。
1945年、
日本が戦争に負けた。
辛い戦後の始まりである。
当時、佐藤益次郎さんも妹さんも、戦争で全てを失ったという。
そんな時、兄の佐藤益次郎さんは、仲間と闇市を始めたという。
ところが、闇市をやっている内に、
もっとうまい儲け話がある事に気が付いたという。
それが、土地の詐欺だった。
当時、東京は焼け野原。
空襲によって家々は焼けて無くなり、都会は丸焼け同然だった。
当然、土地の権利書は全て灰になった。
それだけではない。国の登記所も焼けて無くなり、
土地の所有者を示す登記簿などの記録が保管されている役所も焼けてしまったのだ。
つまり、そこの土地が誰のものか証明するものが無いのである。
今では考えられない事だが、当時の状況は酷かったらしい。
やがて、佐藤益次郎さんと仲間達は町中の地図を作ったという。
町を歩き回り、それぞれの家の跡をチェックしたという。
当時、家々は空襲によって廃墟になり、
それでもなんとか生き延びた人たちは、トタンや板などで、
なんとか雨風を防げる程度の掘っ立て小屋を建てて住んでいた。
また、他の家では、離れ離れになった家族が来た時の為に、
「今は川越の叔母の所に疎開しています。」の様な札が立っていたという。
そこで、佐藤益次郎さんと仲間達は、
掘っ立て小屋も無く、疎開先などの連絡票も無い土地をマークしたという。
そんな土地は、全員死んだだろう。
ならばその土地をもらっても誰も文句を言うやつはいない。という考えだった。
佐藤益次郎さんと仲間達は、そういう土地の中でも価値がありそうな場所に、
次々とバラック小屋を建てて、自分の土地の様に占拠しはじめた。
これが、佐藤益次郎さん不動産の仕事だったのだ。
やがて、アメリカからマッカサー元帥が来て総司令部GHQを設置した。
そして、東京での検閲が強めていくにあたって、
佐藤益次郎さんと仲間達は、次々と住民たちから安く土地を買い集めたという。
今から考えると、いい土地が二束三文で取引されたという。
人々は、なぜ大切な土地を二束三文で売ってしまったのだろうか。
いくら食べ物に困っているとはいえ・・・・
そこには、お年寄り達を騙す佐藤益次郎さんと仲間達の悪知恵があったという。
彼らは、騙せそうなお年寄りや女性がいると、すかさず訪問してこう言ったという。
「もうすぐ、GHQにより、
土地は全てアメリカに取り上げられる。
そうなると、権利書は紙クズ同然です。
今なら、私達が少しでもお金になる様に転売してあげましょう。」
紙クズになるという、悪魔のささやきだった。
勿論デマである。
後に騙されたと、家に押しかけて来た老人もいたという。
また、ある時は、
中学生くらいの子供が、土地を返してくれと何度も何度も家に抗議に来た時もあったという。
その子は、親を空襲で亡くし、東北の方に疎開していたらしいが、
なんとか東京に帰って来た時、家も無く土地も取られていたと泣いていたという。
そうやって、佐藤益次郎さんはお金持ちになっていたのだ。
私は彼女の話を聞いて、
それが呪いの原因だと思った。
人から財産を奪うという行為が、
やがて、財産を奪われるという霊障となって、その子供や孫にきているのだろう。
子供や孫には罪は無いが、
罪のあるお祖父さんの財産で裕福に暮らしている子らに、
霊障が及ぶというのもある意味、分かる様な気もする。
ただ、佐藤益次郎さんを怨んでいる人が多そうなので、
だれが呪いをかけているのか分からない。
そこで、彼女には、
短冊に「佐藤益次郎に迷惑をかけられた霊へ」と書き、
お線香とお水、そして当時食べ物に困っていた時代なので、
常に何かの食べ物を供えて、
「佐藤益次郎に迷惑をかけられた霊へ。お祖父さんの代わりに私が1年間謝ります。
どうもすみませんでした。どうか成仏なさって、良い来世へと生まれ変わって下さい。」
これを毎日、1年間続ける様にアドバイスした。
そして出来れば、お父さんにもやる様に勧めてみて下さいと。
私はこの相談を終えて、
最後の中学生くらいの子供の話が、やけに心に残った。
戦争は終わったが、両親は亡くし、
家も失くし、そして土地も騙し取られてしまった。
当時の戦後は、食料も無く、仕事も無く、
中学生の男の子ひとり、その後どんな人生を歩んだのだろうか。
私には、その辛い現実を想像する事すら出来ないが、
ただ、
佐藤益次郎に対する怨みが、その子のものでは無い事を願ってしまう。
なぜなら、
怨みは、その人をも幸せにはしない。
たったひとりぼっちでも、幸せになって、
どこかで生きていて欲しい。
END