●無一文シングルマザーからの再起


 


イギリスの南西部に、グロスタシャーという州がある。
 

ここは、知る人ぞ知るバドミントン発祥の地であるバドミントン村がある。

 

ここに仲の良い姉妹が住んでいた。
 

ジョアン。妹ダイアン。
 

決して裕福という家庭では無かったが、
 

6歳の姉は、妹の為に自分で物語を作り、読み聞かせて喜ばせていた。

 

そんな優しい姉であったが、
 

転校して、厳しい小学校に入学してから様子がおかしくなった。

 

先生は厳しく、学校の規律も厳しかった。
 

感性が豊かだったジョアンは、対人恐怖症になり、
 

やがて社会不安障害になってしまう。

 

病気は中等学校時代になってもずっと続いた。
 

クラスの前でスピーチしようとすると、
 

緊張して、吐いてしまったらどうしようと心配していたら、
 

急に気持ちが悪くなって、なんと本当に皆んなの前で吐いてしまったのだ。

 

皆んなに笑われ、



恥ずかしさからそのまま家に逃げ帰った。


 

それから彼女は、不登校になってしまう。



 

社会不安障害の症状は更に強まった。

 

悪い事は重なるもので、
 

母親アンが多発性硬化症にかかり入院した。
 

母が衰弱していくのを見ると、ジョアンの病状は更に悪くなった。


 

それでも彼女は、母の入院費を稼ぐ為にも、
 

大学に行く傍ら、派遣社員として働いた。


 

しかし、社会不安障害の為に一ヶ所での仕事が長続きできず、
 

何度も職を変えた
 

そんなお母さんも10年も闘病生活を頑張ったのだが、
 

最後は自宅で亡くなった。45歳だった。

 

彼女は、愛する母を失った悲しみから、イギリスを離れてポルトガルの地に移る。

 

そこで出会ったジャーナリストと結婚して、女の子を出産した。
 

ところが、


夫の姑と一緒に暮らす結婚生活は思った様なものではなかった。

 

彼女は、わずかな所持金しか与えられずに、
 

乳飲み子を抱えて、イギリスに逃げ帰った。

 

しかし父親は、8歳年下の秘書と恋仲になっていて結婚していた。


 

 

もう父親の元にも戻れない。



 


彼女は、ホームレス一歩手前だった。
 

この子が居なければ、ホームレスに身を甘んじていたかもしれなかった。


 

 

この子の為にも、何か食べる物を買うお金を稼がないと。

 

彼女はなんとか教会で働き始めた。
 

しかし、


意外と世間の目は冷たかった。


 

彼女を見ると、「ふしだらな未婚の母!!」と、

 

ワザと皆に聞こえる様に罵倒された。

 

彼女は、せっかく得られた教会の仕事を辞めた。


 

子どもに食べさせるため、自分は何も食べない日が続いた。

 

彼女は、生活苦、そして子育ての将来の不安から、
 

うつ状態になっていた。
 

日々の生活苦が、彼女を更に追い詰めた。


 


もうこれ以上、無理。

 

 

 

 

自殺しよう。

 

 



 

すると、娘がわずかな食糧なのに、
 

とっても幸せそうな笑顔で、私に微笑みかけた。
 

この子は、こんなにひもじいのに笑っている。



 

 

もう少し私も頑張ってみよう。




 

娘が居なかったら、自殺していたかもしれないと彼女は後に語っている。





 

 


そうだ。
 

お金は無いけど、
 

この子の為に、昔私が妹の為に作ってあげて様な物語を書いてみよう。

 

 

 

町中の人達が、クリスマスの準備で忙しい12月21日。
 

彼女は娘を抱きながら、生活保護を申請に行った。
 

生活保護を受けながら、彼女は必死に娘を支えに生きた。



 

 


お金も無い。手に職も無い。コネも無い。
 

ただ1つ。
 

小さい頃から物語を書くのが好きだった。


 

 

これがダメなら、その時は娘と・・・
 

 


しかし、周りの人達は相変わらずそんな彼女を批判的に見ていた。
 

世に出るかどうかも分からない小説なんか書いて!
 

もっとまともな職業について地道に働くべきじゃないのか!と。


 

やがて彼女は、外にも余り出れなくなり、ひきこもりとなった。

 

そして鬱病(うつ)になり、数ヵ月治療することになってしまう。

 

そんな時だった。
 

妹のダイアンに、今また物語を書いているのよ。と話すと、
 

ぜひ書いたものを見せてほしいと言ってきたのである。
 

小さい時、妹が喜ぶ顔見たさに書いた小説。
 

「もし妹が喜んでくれなかったら、その時はもう辞めよう。」
 


すると、
 

 


妹が笑った。
 

「お姉ちゃん、続きが読みたい!!」

 


やがて彼女は、娘と妹の存在に助けられてうつを克服、

 

2年がかりで小説を書きあげた。


 

 

 

31歳になっていた。


 

 

 

すぐにイギリスの大手出版社12社全部に持ち込んだ。

 

 


しかし、



 

 

現実は厳しかったのだ。




 

 

 


12社もあった大手の出版社は、どこもとりあってくれなかった。




 

 

 


「物語が長すぎるんだよ。!!
 

 こんなの子供が読めるか!!




 

 

 

「これは子供には難し過ぎるだろう。
 

 だからが書いた物はダメなんだ!!!」   


 

 

 

が書いたものだと、
 

 男性読者の受けが悪いんだよね。悪いけど無理。」


 

 


編集者の中には、長い小説を前に、
 

半分読む気が無いという男性担当者もいたという。





 

 


愛する娘が喜ぶ様な物語を書きたいと思い書いた物は、
 

大人の男性には、理解出来なかったのかもしれなかった。





 

 


しかし、彼女は諦めなかった。



 

大手は無理でも、



小さい出版社なら・・・









 

 

 

ところが、
 

そこで奇跡が起きるのである。





 

 

 


持ち込まれた小さい出版社の編集長が、
 

彼女の原稿を家に持ち帰った時だった。




 

 

 

彼はその原稿を一切読んでもみなかった。
 

しかし、
 

近くにいた8歳の娘に読んでみるかと渡したのである。


 

 

 


その女の子は、「うん」と言って自分の部屋に持っていった。


 

あんな長い小説、難しくてダメだろう。と思っていると、




 

 

1時間後、



娘のアリスが部屋から出て来た。


 

「パパァ!!
 

 これは他どんな本よりも、ずっと素敵だわ!」と言ったのである。


 

 


余りの娘の反応の良さにびっくりした編集長は、
 

試しに出版してみる事にした。



 

 

ただし彼女には条件をつけた。
 

それは、


が書いた物だと、男性の読者が読まない可能性が高いので、
 

書いたのは男性だと臭わせて欲しい。
 

貴方の名前、ジョアンはヤメテくれ。



 

 

それでも彼女は嬉しかった。


 

 

 

始めから期待もされていない小説だったので、
 

刷った部数も少なく、
 

わずかな原稿料だけが支払われただけだったが、彼女は大満足だった。







 

 


これで少しは、娘と生きていける。





 

 

 

 

 


ところが、ここでまた奇跡が起きる。






 

 

 

小規模な出版社から、わずかしか印刷されなかった本だったが、


 

 

あっという間に売り切れると、

 

 

あの本は無いのか?


あの本はどこで売っている?


あの本の続きはあるのか?

 

 

という子供達や親からの問い合わせが殺到したのである。


 

 


急きょ増刷に増刷となった。




 

 

なぜ、彼女の小説がこんなにも子供達に人気が出たのだろうか?
 

 

ある雑誌が子供達にインタビューした。
 

なんで、この本が好きなのかな?

 

 

子供は、すぐにこう答えたという。
 


「だって、自分が魔法の世界に行った気分になれるんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

 ハリー・ポッター だ~い好き!」

 

 



 

 

その後、あっという間にベストセラーとなり、世界中の賞を総なめにする。



娘と自殺しなくて、良かった。
 

 


実は、彼女は物語の中で、
 

女性の主人公、ハーマイオニーを通して、
 

読者の女性達にメッセージを送っていると言われている。
 



 


女性は自分を、そんなに過小評価しなくていいのよ。
 

男性に遠慮せず、自分の能力を伸び伸びと発揮していいの。

 

それは現代の女性への応援メッセージとして、
 

ハーマイオニーというキャラクターと、その言葉に込められている。



 

 

 

その後、彼女は、
 

母子家庭の為の慈善活動であるGingerbreadの大使となり、
 

多額の寄付や活動を行って、
 

自分と同じように頑張っている母子家庭の家族を助けた。

 
 

 

数々の挫折と差別を乗り越えてきた彼女は、
 

愛する娘に、こんな教訓としての言葉を残している。
 

 

 

 

その男性の人間性を知りたければ、


 
 その人が自分よりも弱い立場の人を、
 

 どう扱っているのか、見てみる事よ。
 


  J.K.ローリング

 



 

 

小説が長過ぎるとか、女が書いたものは売れないと、
 

大手出版社12社の全てに断られた彼女だったが、

 

 

現在および、過去の世界の歴史上を通しても、
 

彼女よりも稼いだ男性作家は、
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 















 

 

 

ひとりも、いない。


END