●たった1個のタイガーマスク
明後日の4月6日から入学式の方もいらっしゃるでしょう。
私は、この時期になると、
思い出す事があります。
随分前になりますが、
あるお母さんからこんな電話相談を受けました。
「息子に、弟の死の事実を教えてもいいでしょうか?」
そんな印象的な相談でした。
彼女には、5歳の息子さんがいました。
しかし、本来、その息子さんには弟がいたのです。
今まで、その事実は息子が小さかった事もあり、
いっさい話さずにきたそうです。
ところが、ある日、
彼女が仏壇の前で、ご供養していると、
息子がやってきて、
興味深そうに、何やっているの?と聞いてきたというのです。
亡くなった人の冥福を祈っているのよ。と答えると、
息子さんは、さらに亡くなった人って誰?と聞いてきたというのです。
彼女はその時は、はっきりとは言えなかったそうですが、
本当は言った方がよかったのか、
ずっと考えていて、
私に相談してきたのでした。
人の死、それも身内の死を、教えるかどうか、
悩まれる方は、彼女だけではないでしょう。
こういう問題は、
ケースバイケースであり、それぞれに違う事情がある事でしょうから、
一概には言えない事です。
しかし、私が長年占い師をしてきた経験から言わせてもらうと、
「聞かれた時が、言うチャンス」である場合が多いのです。
なぜなら、
上の彼女の場合でも、
なぜ息子さんは、急に仏壇で祈るお母さんに興味を持ったのでしょう。
なぜ、興味を持っただけでなく、誰と聞いてきたのでしょうか。
それは偶然ではなく、もしかしたら、そこには、
息子さんだけの意思ではなく、
息子さんに事実を教えて、
という亡くなった人の意思と希望が作用している可能性があるのです。
だから、
私は彼女に、
あるままの事実を、息子さんに話してあげてはどうですか。
「ホントはね。弟がいたのよ。」と。
双子で生まれて来るはずだったんだけど、
弟の方は流産して、お兄ちゃんの貴方だけがこの世に産まれたの。
だから、弟の分も、生きてあげてね。
彼女はその様にしますと言って、電話切られた。
本来なら、話はここで終わりである。
しかし、それから1年後、
再びその彼女から、電話があったのである。
あれから、彼女が仏壇で供養する時、
ときどき、息子さんも手を合わせる様になったという。
そして、そんな息子さんが驚く様な事を言ったという。
息子さんが、小学生になるというので、
お祖父さんが、ランドセルを買ってくれたのだが、
そのお祖父さんに、
「弟のランドセルも買ってあげて」とねだったのである。
熱心にねだる息子さんに負けたお祖父さんは、
仕方なく、安いランドセルをもう1つ買ったという。
ところが、息子さんは喜ぶどころか怒ったという。
なんでボクのと同じ良い物じゃないのかと。
結局、店に戻って、
高いランドセルと交換してきたという。
ただ、それだけなら、
再び私に電話をしてくる事は無かったのだが、
仏壇にあげたランドセルを見て、
息子さんは、そのランドセルも小学校に持っていくと言い出したのである。
彼女は、困ったしまったという。
そんな仏壇にあげた物を学校に持っていくなど、
また、2つもランドセルを持っていくなど、
他の人からおかしいと思われるに決まっている。
そこで、再びの相談の電話となった。
私は、その話を聞いて、
なんて素敵な息子さんかと思った。
きっと人を思いやれる人に成長するだろうと思った。
こんな時の私のアドバイスは決まっている。
それは、まず、
「なるべく、心優しい息子さんの意見を実現させてやりたい。」
という事から考える。
かといって、
小学校一年生の子が、毎日2つのランドセルを持っていくのも大変である。
それに、
いずれ教科書も弟の分を買うと言い出すかもしれない。
どうしたらいい・・・・
その時、ふと、
弟さんが生きていればなぁ。と思った時、
私は、生きていれば弟さんも実は優しい性格だったんだろうなと思ったのです。
そして、お母さんに、
「そのランドセルは、今も新品ですか?」と聞くと、
ビニールから出していない新品のまま仏壇にあがっているという。
そこで、私はこうアドバイスしました。
■まず、3日間、仏壇の弟さんに、
このランドセルを寄付しますがいいですかと許しを得る事。
■息子さんにも相談して、寄付する先を息子さんに選ばせ、
息子さんに寄付させる事。
■最後に、仏壇で、このランドセルを使う子供を守ってあげてねとお願いする。
その後、お母さんがあちこちの養護施設や支援施設などに電話して、
新一年生がいるかどうか確かめて、
息子さんが寄付に行ったという。名乗らずに。
自分と同じ様に、どこかで、
弟のランドセルが小学校に通っている。
そして、同時に困っている人が助かる。というので納得したという。
この様に、児童養護施設などに、
ランドセルなどが届けられるという現象は、
その後、2010年頃からニュースに取り上げられ、
タイガーマスクランドセルとして、人々の心を打った。
タイガーマスクとは、
テレビアニメで放送された、プロレスのヒーローの話で、
その物語の中で、彼は勝ち取った賞金を、伊達直人として孤児院に寄付していた。
その後、名前を伏せて、孤児院に寄付された物に、
一言「伊達直人より」と書かれていた事があり、
テレビなどで現代のタイガーマスクと話題になった。
私の話は、そんなタイガーマスクの話題が出るずっと前の話である。
タイガーマスク運動と称して、
今まで沢山のランドセルが寄付される微笑ましい現象が起きているが、
その中の1個が、
たった6歳の子供からのプレゼントだった事は、
知られていない。
今年も、岡山で、
「5年生になった岡山のタイガーマスク」と名乗る差出人から、
岡山市こども総合相談所にランドセル10個が届いたというニュースがあった。
同一人物からのランドセルの寄付は平成23年に始まり、5回目だという。
近く県児童養護施設等協議会を通じ、県内の児童福祉施設にランドセルを贈るという。
相談所によると、
ランドセルは15日朝に包装して配達され、
男児用と女児用が各5個づつ。
そして同封の手紙にはこう書かれていたという。
「つらいことや、しんどいことがあっても、
まけずに・・・・ 入学、おめでとう。」
END