●恐ろしい絵画



これは私がアメリカの大学に通っていた頃のお話です。






大学はシアトルという大きな市の中にありました。

シアトルには、マリナーズという野球の本拠地の球場があり、

イチローが最初に所属して活躍した場所である。

その球場のそばに、大きな骨董屋がある。

私は1度だけしかそこに行った事は無いのだが、

そこはとても大きく、日本の高校の体育館より広い場所に、

沢山のガラクタが、詰め込んであるという感じの店である。

主に中古の家具が多かった様だが、

中に入ると売れそうな物は何でもという感じで置いてあった。



 

私が見た時には、

そこに、そんな恐ろしい絵画があったなど気がつかなかった。



恐ろしい絵画と言うと、



悪魔か妖怪を想像されるかもしれないが、



一見普通の絵に見える絵画が恐ろしい事もあるのである。



 









 


私は普段は、大学の寮に住んでいた。

寮は、ユニバーシティ通りから近く、

よく食事や本屋や、教科書を買いにその通りに出かけた。

なぜなら大学の教科書は、大学では買えず、

大学指定の本屋で買う事になっていたからである。

アメリカというのは合理的というか、

その本屋に行くと、新品の教科書だけでなく、中古の教科書も売っていた。

また、いらなくなった教科書買いますなどの札も下がっている。

日本では考えられない。




そんな本屋の道路の向いに1軒の花屋がある。

その花屋は日本人の姉妹が経営していて、時々私も立ち寄って顔見知りだった。


 

ある日、

暇つぶしに寄ってみると、

こんな相談をされた。


「知り合いのアメリカ人が、

 町の骨董屋で絵画を買ってから、

 不吉な事が起き始めたんだけど、ちょっと診てくれない。」と言うのである。



あの骨董屋だ。


私も彼女達の家に呼ばれてご馳走になった事もあり、

引き受ける事になった。




詳しい話を聞くと、こうだった。

先月、そのアメリカ人の男性が、骨董屋で古そうな絵画を買ったという。

すると、3日後、

突然火の気がまったく無いはずの倉庫が燃え上がったというのだ。

幸い家には燃え移らなかったが、倉庫は全焼したという。

最初は放火とも考えられたが、ドアには南京錠が付けてあり、



消防署の方も、内部から燃えているので、



何か燃えやすい物が中に無かったか聞かれたという。

しかし、もう5年以上も開けていない倉庫であり、

ましてや火の気のある様な物も中に無かったというのだ。




それから間もなくして、

台所でボヤ騒ぎが起きた。

魚を焼いている時に、何故か火が天井まで上ったという。

消火器で消し止めたが、キッチンが粉まみれで大変な後始末だったという。



いずれも、彼らがその家に住んで20年間、起きた事が無い事であり、

これは、おかしい。

どうも、骨董屋であの絵画を買ってから火事が起き始めていると感じたという。



それで彼は知り合いだった花屋の姉妹に相談、

私に話が回って来たのである。




私も話を聞いた時は、

絵画が火事を起こすなど、ちょっと無理が無いかと思っていた。





 


しかし、

原因はその絵画だったのである。






 

 

私達が、彼の家に着くと、

すぐにプーンと微かに倉庫が燃えた時の臭いが漂っていた。

倉庫と母屋とは2m位しか離れていなかったので、風があれば危なかったという。





さっそく家にあがらせてもらい、

その絵画というのを見せてもらう事にした。





私達はリビングで待たされ、

彼は、絵画は地下にあると言って取りにいった。




アメリカの家は、ごく普通の家でも地下室がある家は多い。

特に竜巻が起きる州では、地下室は必須らしい。




 

2分ほどすると、

彼は1枚の絵画を手にしてリビングに戻って来た。





「これです!」 と、


私の目の前に見せてもらった絵画を見て、

私は、ゾクッと嫌な感じを受けた。







そして、

すぐに一連の火事の原因は、この絵画だと感じたのである。








彼が説明する様に、

その絵はとても古い物の様だった。

と言うのは、絵画の裏に日付けが書いてあった。

何年、何月何日と。そして名前が。


とても古い絵なので、価値があるかもしれないと思って買ったという彼に、

私は、この絵を持っていると、

また火事が起きるかもしれませんよ。と忠告した。







その絵画には、

小さな男の子が描かれていた。

いわゆる肖像画である。





しかし、その男の子の背景が異様なのである。




その男の背景には、

家が燃えている様子が描かれているのである。


男の子の表情もとても暗く描かれている。




私は遠慮なく彼に私の考えを言った。

もしかしたら、

この絵のこの男の子は、

背景の家の火事で亡くなったんじゃないかな。

裏の日付は亡くなった日じゃないかな。

そして、描いたのはその子の親か兄妹か。

そうであれば多分、悲しい気持ちを抱きながら描いたと思いますよ。




そんな作者の念が入っている様な気がします。

私はその男の子を供養しながら、その絵を燃やす様にアドバイスした。



 

この様に、

絵画でも、

災難を描いたものや、

人が亡くなる様子を描いたもの、

人を刺しているとか、切っているとか、

拷問している絵には、たまにその作者の悲しい念が入っている事がある。

悪い時には、その絵と同じ現象が起きる事があるのである。





 

貴方が、絵画を買おうと思う時、



もし、それが誰かの不幸を題材にしていたら、


美術館などならいいのだが、

自分の家に飾るのには、注意が必要である。


END