●残酷な天使のテーゼ

 


このお話は、昨日のブログ(●悪魔のささやき)の続きです。

 

従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-11980859337.html

 


を先にお読みください。


そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ

 

 

ある時、とても不気味な相談が舞い込んだ。

その奥さんは、少しノイローゼ気味な感じの話し方だった。

私は冒頭から、「奥さん、落ち着いてお話し下さい。」と言ってしまうほどだ。

彼女の話をメモしたノートを整理して順にお話しするとこうだ。

彼女は都内にある築25年の一軒家に住んでいて、

ご夫婦と息子さん、娘さんの計4人で暮らしていた。

ところが、去年の夏頃辺りから、この家族を不気味なものが、襲うという。

彼女いわく、それは悪魔だというのだ。

悪魔が最初に手をかけようとしたのは、息子さんだという。

それは昨年の夏、彼が大学からバイクで帰る途中だった。

いつもの帰り道を走っていると、不意に耳元で、誰かが、

”右”とささやいたという。その声につられて、彼が右を見ると、

なんと、左の路地から車が出て来て、接触事故を起こしたのだ。

幸い、路地から出て来た車は、確認の為に運転手が見える範囲までで止まったので、

車の先端部分とバイクが接触して、衝突までには至らなかった。

また、息子さんが道路に投げ出された時に、対向車や後続車が止まってくれたので、

轢かれる事もなかった。だた、足を骨折して入院となった。

それでも一歩間違えば、死ぬ可能性もあった事故だったという。

次にターゲットにされたのは、中学生になる娘さんだという。

彼女が友達の家から帰る途中、音楽を聞きながら、歩いていたという。

その時、後ろから、誰かが、”右!”と怒鳴る声が聞こえたという。

彼女は驚いて、歩きながら後ろを振り向いたという。

しかし、後ろには誰もおらず、「あれっ」と思った瞬間だった。

やはり、左の路地から出て来た車に轢かれそうになったのである。

間一髪だった。車は彼女の服をかすり、急ブレーキ。

あと1Cm前に出ていれば、間違いなく彼女の体は車に当たっていたという。

息子さんの時は、偶然だと思われていた、

あの不気味な声”右”は、娘さんにも襲いかかったのである。

彼らは言う。その声は、男の声で、今思い出しても気持ちが悪い声で、

まるで、悪魔の様な声だったと。

そしてその2件の事故以来、その悪魔は、彼女の家にも来るのだという。

それは、夜中になり、家族が2階に上がると、

誰も居ない1階から、あの気持ち悪い悪魔の声がするという。

何といっているのかは、近くに行けないので聞き取れないというが、

それ以来、夜中にトイレにも行けない状態だという。



そして、今日、電話を掛けてきた彼女が、襲われたのだった。

彼女が自転車で、買い物に行って、荷物を前かごに入れ、自宅に帰る時だったという。

すると、後ろから”右”と言う悪魔のささやきが・・・・

彼女は子供達の話を聞いていたので、急ブレーキで自転車を止めた。

すると、すぐ前の道から車が出て来たという。

彼女は曰く、もし、走りながら、後ろを振り向いていたら、死んでいました。

その興奮冷め終わらないうちに、私に電話してきたという訳だった。

話しを聞いた私は、確かに、ただ事じゃない何かが、彼らを襲っているなと思ったが、

事故の話しだけでは、それが一体何なのか、

悪魔だとしたら、なぜ悪魔は家族の命を狙うのか、皆目見当もつかなかった。

ここ半年~2年以内に身内、知り合い、実家などで、亡くなった人はいませんか?

と聞いても、誰も亡くなっていないという。

また、一応家相とかもざっと聞いてみたが、問題なさそうだ。

というより、24年間その家に住んでいて、今回の様に、悪魔が現れたのは初めてだという。

私は最終的に、分からないと答えたのだが、

彼女は、きっと悪魔が家にいるので、来て診て欲しいと泣きつかれた。

結局3日後に、行く事を約束した。























 

 

 


悪魔に狙われているという家族。



 


正直言って、私は今まで悪魔に出会った事が無い。

だから、悪魔が本当に存在するのか、

それとも、私が思っている様なものでは無いものが、悪魔なのか。

それは分からない。

ただ、面白半分に殺す事だけを目的に善良な家族を襲っているのであれば、

それは何であれ、悪魔なのかもしれない。







 

 

 


私も悪魔は怖い。

それなのに何故、今回の依頼を引き受けたかと言うと、

彼女に泣きつかれた事もあるが、

話しを聞いていて、今回の事が悪魔の仕業だとしても、

今の所、危なかったとはいえ、この家族にまだ死者が出ていない。

また、憑依もされていない様だし、病気にもなっていない。

だから、それが悪魔だとしても、

そんなに怖がる必要も無いのかしれないと思ったからである。










 

 


さて、3日後の月曜日朝、

さっそく彼女の家を訪ねた。




 

全面白い二階建ての家で、

外見からは、悪魔が居そうなおどろおどろしさは無い。



 

家に左側に駐車スペースがあり、

白の格子の柵が、車の出入りと家の門を兼ねていた。

若干、庭の木々が手入れをしてなくて、うっそうとしているのが気になったが、

地図で見る限り、周辺に墓地や火葬場、沼など気になるものは無かった。





家族の方は、全員学校か会社に行っていて奥さん一人だった。

私は玄関から入ると、直ぐにダイニングに通され、

予め用意してもらっておいた家の間取り図を拝見させてもらった。




築25年で、問題があったのは今回が始めただという事で、

この悪魔騒ぎは、家相や土地の問題の可能性が低いと思った。

また、25年前に新築で建てたもので、中古住宅では無いので、

前の住人が自殺したとかの、問題も考えなくてよい。





 

2階は4部屋で、子供達の部屋とご両親の寝室である。

問題は、夜中になると、

悪魔の様な声が聞こえて来るという1階だ。


 

「大体ですが、

 1階のどの辺から聞こえて来たか分かりますか?」




 

 

しかし、誰も部屋から出て聞こうと思わなかったので、

1階から聞こえたとしか、分からないという。






図面を見ると1階は、

約19畳のLDKと6畳の和室、それにトイレ風呂などである。





まずは水回りのトイレと風呂を見せてもらった。



特に問題は無かったが、洋式トイレの便座のフタが開いていたので、

便座のフタは常に下げておく方が、良いと伝えた。

次に和室を見たが、これも特に変わった所は無い。

残るは一番広い19畳のLDKだ。




 

私は広いLDKをゆっくり見回した。

何かゾクッとする様な、置物や石は無いか、

寒気がする様な目をした人形や絵は無いか。



しかし、いくら見回しても、そんな悪い感じのする物が無い。

LDKに付随しているキッチンも、問題が感じられない。








何か見落としているのかと、もう一度間取り図を見る。





もう調べてない部屋は無い。








いや、待てよ!




ここ調べてないなぁ。






それは図面では、見落としやすい場所だった。












階段の下の収納である。




階段は斜めになっているので、その空スペースを収納にする場合が多い。

しかし、図面に書くと、階段に隠れてしまい、

酷い場合には、図面にはそこに収納がある事が分かりずらい時もある。


私は奥さんの許可を得て、階段下の収納ドアを開けた。






すると、


 

ゾクッとする様な寒気がした。



中には3段の棚があり、色々な物が放り込んである感じの物置だった。






懐中電灯を借りて、しばらく中を見回していると、

白い化粧箱が棚の奥の方が置いてあった。

私はそれを見た瞬間、思った。




「すいません。

 あれ、骨壺ですか?」






そうだと言う。



5年前に交通事故で亡くなった次男だと。





 

「5年前・・・・」




 

私は、遺骨をここに保管していた事が、

今回の一連の事件の原因だと思った。

悪魔の正体は、報われない次男の霊障だったのだ。





 

今回の霊障には、2つ原因があると思う。

■まず1つは、長い間亡くなった次男をお墓に入れず、

 暗い物置の中に放っておいた事。

 家族は九州から転勤で東京に来たのでお墓が無かったという事情があるにせよ、

 お墓を建てるお金が無いのであれば、霊もその間ある程度待ってくれるが、

 聞くと、お墓を建てるお金はあったが、また転勤する可能性も無い訳では無かったので、

 色々考えている内に忘れ去られてしまった様だ。

 また、交通事故で亡くなった時、保険金や示談金などが入ったにもかかわらず、

 そのお金を新車を買うお金に回してしまったという。

 そして、事故は相手のわき見運転だったという。


 

■もう1つは、

 遺骨が階段の下の収納に仕舞いこんであったという事である。

 遺骨に限らず、仏具は階段の下に仕舞わない事である。

 なぜなら、普段から家族全員が、その上を踏んで通るからである。

 足蹴にされる雰囲気と、足音や振動が、

 遺骨は耐えられなかったはずである。




 


こういう事から、

今回の事件は起きたのだと思った。




それはどういう事かと言うと、



早くお墓に入れてもらいたい霊は、

(特に考えが未熟な子供の霊とか)

もし、新しく死ぬ人が出れば、お墓を作ってもらい、

一緒に葬ってもらえると思う場合があるのである。

つまり、3件の交通事故になりそうになった事件は、

すべてこの次男の霊が起こしたものだと言える。




 

その後、

家族全員で、次男の遺骨に謝り、

近くお墓を建てると約束した。






 

多分、このまま誰も彼の事を気付かずにいたら、

本当に誰か亡くなっていたかもしれない。




 

 

 

生きている人間でも、時々そうだが、



 

 

たまに、子供は残酷な事をする事がある。

 

ふと、そんな事を考えてしまうのだ。


それは、まるで







残酷な天使のテーゼの様に、私は感じた。


END