●幽霊の街




最近の出来事で、世界を恐怖させたもので、

アフリカのエボラ出血熱がある。

サーズの時もそうだったが、海外からの得体のしれないものの上陸には、

みな一応に恐怖を抱くものである。




そこまでの恐怖は無かったが、

ちょっとだけ似た様な相談があったのを思い出したので、

今日はその時の事を書いてみたいと思います。




 

渡河の友人で、坂崎(仮名)という囲碁を得意としている人がいた。

彼は海外を旅行するのが好きで、

暇を見ては、海外へ一人旅に出かけている男だった。





私も少し囲碁をやるので、(アマチュア3段くらい)

囲碁が強いという彼にいつか会ってみたいと思っていた。



そんな坂崎さんと、いきなり会う事になったのだ。


 

彼が囲碁のプロ試験の為に、東京に出て来ている時に、

市ヶ谷の駅からほど遠くない、

エースインというビジネスホテルで会う事になった。




私は、もしかしたら一局囲碁を相手してもらえるかもしれないと、

ひそかに携帯用の囲碁セットをカバンに忍ばせて、出かけたのだが、

結局そんな暇は無かったのを、今でも覚えている。



 

私と渡河が、ホテルに着くと直ぐに、

坂崎さんの部屋に電話してもらった。



この時はまだ、彼の相談依頼は、

「霊について多少知っている人に話を聞きたい」

というだけだったので、

取り次いでくれた渡河も、詳しい相談内容を知らなかった。



 

しばらくすると、上から彼が下りて来て、

まず渡河が挨拶を交わし、私を紹介した。

眼光がするどく、でも、気さくそうな男だった。




私達は、静かな喫茶店へと場所を移して、

さっそく彼の話しを聞く事にした。




彼は椅子に座るや否や、すぐに奇妙な事を聞いてきた。

「海外から

 幽霊を一緒につれてきてしまう事ってありますか?」

と言うのである。





渡河などは、それを聞いて一歩席を後ろに引いたくらいだった。

私も思わず、彼の後ろや周りを見回したほどだ。





私は少し落ち着いてから、その質問に答えた。

「海外から幽霊を一緒につれてきてしまう事は、


 あります。」


「やっぱり、あるんですか?」と彼。


「例えば、

 貴方か一緒に行った方の体に憑依して来たりして。

 一番多いのが、

 霊が憑りついている物を、日本に持ち帰った場合です。

 壺とか、絵とか、人形とか。

 以前、台湾から持ち帰った屏風に昔の人の霊が入っていて、

 それを日本に持ち帰ったら、

 霊が、夜な夜なその屏風から抜け出たというものがあります。」




 

それを聞くと、彼は自分に起きた問題を話し始めた。




話は3ヶ月前にさかのぼった。



彼はメキシコに一人旅に出かけていたという。

彼の旅行は普通の方と違って、

その国のバスなどを利用して、

日本人が訪れない様な僻地にも足を運ぶというスタイルだという。




その時も、メキシコの聞いた事も無いような村を、地図を片手に、

バスや相乗りタクシー等を使って、まわったという。



ところが、メキシコのある村に寄ってから、

急に気分が悪くなり、食欲も無くなり、

熱は出なかったが、旅行を続けられる状態ではなくなったという。

彼は当初の予定だった太平洋からメキシコ湾に出る計画を断念して、

日本に帰国した。




そして、その最後に彼が訪れたメキシコの村が、問題だったのだ。

 

その村の名前は、プエブロ・ファンタズマ、という村だという。

彼いわく、

その村には、現在も沢山の幽霊が住んでいるという事で、

メキシコの言葉で、

プエブロ・ファンタズマとは、幽霊の街と言う意味だそうだ。



そこには廃墟が多数あり、

そこに訪れる人を、穴の中に引きづりこんで行方不明にさせるという。



その場所に着いたのが、もう午後だったのと、

一緒に行ってくれた現地の人に反対されたのもあって、

彼は廃墟に入る事は無かったそうだが、


彼の具合が悪くなったのは、その時からだったという。

現在、体調の方は良くなったのだが、

彼は他の問題に悩まされているというのだ。






そして、それこそが、今回の相談、

「海外から

 幽霊を一緒につれてきてしまう事ってありますか?」

の本題だった。





それは、

彼の自宅に、海外から連れて来た霊がいるのではないかというのである。




それは、

彼が自宅で寝ていると、

彼以外誰も居ない部屋から、話し声が聞こえて来るというのだ。

そして、

段々と頭痛がしてくるのだという。

酷い時は、頭痛で一日中寝ているのだという。


それは医者に行って薬をもらっても全然効かないのだそうだ。




そして不思議な事に、

自分の部屋から一歩外へ出ると、

その頭痛は、無くなっていくという。




こんな事は、あの村を訪ねる前までは無かった事で、

きっと、あの幽霊の街から、

亡霊か幽霊を、連れてきてしまったに違いない。



そして、その幽霊は彼の部屋に居ついているのでは。と彼は言う。






彼は囲碁の勉強に差支えるという事で、

プロ試験の今は、実家に帰省してて、

最近は自宅には帰っていないという。



 

そこで、後日、

彼が住んでいる神奈川のアパートに来て、診て欲しいという依頼だった。







渡河はあまり乗り気では無かったが、

私は、うまくすれば、友達になり囲碁が強くなれるかもとという打算もあり、

引き受ける事になった。









 

こうして私たちは、

幽霊の街から憑いてきたかもしれない霊と、対じする事になったのである。

 

後半は、明日のブログに続く。