●ジェットコースターな人生
私の友人の渡河には、
黒崎(仮名)という幼友達がいます。
彼は行動派のやり手で、
最初はスーパーの仕入れ部門で実力を発揮し、
その後独立、車のディーラーをしながら、金融会社を設立。
私は彼がスーパーの仕入れ部門で活躍している時から知っていましたが、
最初はとても怖い感じで、早口で、仕事出来る感じの人でした。
その後、私も彼から安く車を買った事があり、
保険にも詳しい彼に、何度かお世話になりました。
そう言えば、お金も借りた事がありましたっけ。
絶頂期にあった彼と、3度ほど池袋で会った時なんか、
毎回高級料理をおごってもらいました。
そんな彼は、高級自動車フェラーリとベンツに乗り、
高価な時計や靴・バック・スーツなどを持ち、
高級住宅地にマンションと自宅を持っていました。
当時から私とは段ちの生活ぶりでした。
幸せ=お金という人生目標を一直線に歩んでいる彼でした。
ある時、彼の自宅に呼ばれた事があり、渡河と行ってみると、
彼はお金を返済できない債権者の方から、800万円はするという刀を担保として押えたと、
私たちに見せてくれました。
サヤから刀を抜くと、私たちの前で、部屋の空気を切る様にブルンブルンと振り回しました。
危ないと思って、少し下がった私たちを見て、まんざらでも無い顔をしていました。
その時、何となくですが、彼の目の色が少しおかしくなった感じがしました。
それから間もなくして、
北海道の札幌にある金融会社の支店がおかしくなり始めたという話を耳にしました。
それでも彼の豪遊ぶりは、渡河によると変わらなかったといいます。
しかし、その5年後の渡河の結婚式では、
なんとなく怒りっぽくなっていて、
ちょっと近寄りがたく、挨拶程度しか話せませんでした。
今から思うと、
なんでもっと話さなかったのか後悔します。
もし、話していたら、
彼が抱える悩みを聞いてあげられたかもしれないと・・・
ある日突然、
私に国際電話がありました。
渡河からです。
外国に行っていた渡河から、何の用かと思って出ると、
開口一番、
「黒崎が自殺したよ。」でした。
私は思わず、「ホントかよ!!」しか言えませんでした。
あの黒崎が・・・
あの成功者の黒崎が・・・
この時、私は彼ともう5年も会っていませんでしたが、
なんとなく、一度彼と会わなければという気持ちがあっただけに、
残念です。
黒崎さんの奥さんが、外国に居た渡河に電話したそうです。
渡河が言うには、
黒崎は、工場誘致の一件で大きな損失をかぶり、
その裁判にも負け、返せない程の借金を作ってしまったという事でした。
私には金融の仕事はよく分かりませんが、
彼はお金を貸す仕事から、段々とお金で土地を売買する方にも手を出していたようです。
その過程で、同業者の裏切りにあい、悪い話に手を出してしまった様でした。
家族に宛てた遺書には、その同業者の名前も書いてあったといいます。
そして彼は自分のマンションで首を吊って亡くなったのでした。
まるでジェットコースターの様な人生だったといいます。
私の思い出でも、全て羽振りのいい彼しか思い浮かびません。
人は貧乏でも、なんとか生きていけるものですが、
一度絶頂を味わうと、マイナス=死しかないと思ってしまう時があります。
もし、私か渡河に相談してもらえれば、
何か解決策があったのに。と思うと、とても残念です。
さて、
自殺した人が成仏するのが一番難しいのです。
最悪の場合、来世がありません。
ずっと暗闇でうごめき苦しみ、生まれ変わらない人もいます。
それを救えるのは、残された家族からの供養です。
私と渡河は、黒崎さんの家族の元に行きました。
彼に最後の別れを告げると、
彼の自宅に戻り、色々とアドバイスしました。
ここからは、私に出来る彼への最後の恩返しでした。
成仏するまで、毎日供養してあげる必要がある事。
彼は昔から車が大好きだったので、
命日には彼が大事にもっていたスーパーカーのミニカーを供えてあげる事。
そして、成仏を祈る家族の思いが、
黒崎に直に届くようにする為に、特別な方法をもちいました。
これは霊の世界をよく知っている人だけに、伝わる方法です。
その方法とは、
仏壇で黒崎の成仏を祈る時に、
彼が書いた自殺時の遺書を一緒に供える事です。
自殺時の遺書という物は、
彼の人生の最後の訴えと思いが込められています。
それこそが彼の魂が入っている最高の遺品なのです。
この魂の入った遺書を供養してあげるのが、
もっとも早く自殺者を成仏への道へと歩ませる方法なのです。
これを同時に供養・説得する事によって、
自殺した魂を安らかにし、成仏への道に歩みやすくするのです。
「黒崎、早く成仏して、来世に生まれ変わってくれよ。」
私達は彼の冥福を祈りました。
最後に、
黒崎の残された家族ですが、
黒崎が裁判に負けて、一文無しいや借金地獄になる直前に、
なんと彼は、愛する家族と離婚していました。
生前、あんなに愛してた妻と娘と別れていたなんて驚きでした。
よく食事をおごってもらった時に、
娘さんの写真をみせて、
こんなに大きくなったんだ。
可愛いだろうと、自慢されたことを思い出します。
そんな家族と別れていたのです。
だから、残された家族だけは無一文ではなく、
自宅を慰謝料としてもらっていて、無事だったのです。
そして、生命保険も別れた妻名義でした。
幸せ=お金という
彼らしいジェットコースターの人生の締めくくりだったのです。
「これだけあれば、オレがいなくても、
お前と娘は、幸せに暮らせるだろ。今までありがとう。」
ただ、
彼は最後に1つだけ、ミスっていました。
それは奥さんの最後の一言で、確信が持てました。
彼女はこう言ったのです。
「バカ、
お金が無くても、
貴方さえいれば、
貴方さえいれば、親子3人貧乏でも幸せなのに・・・」
黒崎さんの冥福を祈る。かや博史
END