●悪夢を生んだ母の日
このお話は、昨日のブログ(●悪夢を生む人形)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-11932677241.html )
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
契約している会社の部長の奥さんからの電話だった。
5月末頃から、奥さんが悪夢を見る様になったという。
そして、6月に入ってからは最近は軽い頭痛もするのだという。
悪夢を見る時は、誰かにしつこく物を頼まれたり、
誰かに追いかけられたり、砂漠でさ迷っていたりと、さまざまで、
それが特に誰かという特定の人物は出てこなかったという。
「今まで、悪夢はよく見る方でしたか?」
「いえ、小さい頃には見た事はありますが、
高校生になってから今まで、悪夢など見た事はありません。」
「悪夢を見たり、頭痛がしだしたのは、家族の中で、貴方だけですか?」
「はい、隣に夫が寝ているのですが、夫は悪夢はいっさい見ないそうです。
ただ、夫は毎晩の様にお酒を会社帰りに飲んでくる場合も多く、
家でも晩酌をするので、ぐっすり寝られるのでしょう。
頭痛はある様ですが、多分二日酔いのケースだと思います。
私が悪夢を見る前からそうですから。あと、娘と息子も悪夢や頭痛は無いそうです。」
実は、去年の末に、上司からお土産を貰ったのだが、
そのお土産が、この悪夢と頭痛の原因ではないかというのである。
それは、インドネシアに長期出張に行っていた上司が、
当地の木彫りの人形を、くれたのだそうだが、それを夫婦の寝室に飾って置いたという。
ご主人は気に入っていたそうだが、奥さんはその人形がなんとなく気持ち悪いとずっと思っていたという。
そう思いながらも、上司のお土産というのと、夫が気に入っているならと、ずっとそのままにしていた。
ところが、最近悪夢を見始めてから、悪夢はやはり、この人形のせいではないかと思い始め、
インターネットで調べたと言う。すると、この人形では検索出来なかったが、
インドネシアには、実際に呪術師が何人もいて、黒魔術で憎い相手に呪いをかける事もあり、
その時に人形も使う事があると知ったという。
彼女の不安は、いっきょに疑惑へと変わり、すぐにその人形を寝室から居間に移したという。
しかし、それからも頭痛はおきた。むしろ、その人形を移動させてからの方がなんとなく酷くなったという。
そこで、私に是非その人形を見に来て欲しいというのである。
上司にもらった人形なので、やたらに捨てる訳にもいかず、
かといって、下手に扱ったら、何かもっと悪い事が起きるのではないかと不安なのだという。
そこで念の為に聞いてみた。「何か誰かに怨まれる心当たりはありますか?」
彼女は少し考えてから、「無いと思います。」
「では、その人形をくれた上司から、ご主人が怨まれている事は無いですか?」
奥さんの勘が当たっているとすれば、一番呪いをかける可能性のあるのは、お土産をくれた人物である。
しかし、奥さんは、「無いと思います。その上司の方は、うちにも何度も来て、
夫を部長に強く推薦したのもその方ですし、とても良い方です。」という。
どうも電話では分からない何かがある様に感じたので、
私は翌朝、彼女の家に伺う約束をした。
私は朝10時に、部長宅に伺った。
千葉の新興住宅地に、ご自宅はあった。
2階建てで、家の敷地と同じ面積位の庭と駐車場がある家だった。
庭は南にあり、太陽が庭と家の中を照らす良い家である。
外門から玄関まで、やや坂を登る感じになっていて、家の中へと通された。
「さっそくですが、
上司から頂いたという、インドネシアの木彫りの人形から拝見できますか?」
まず、依頼主が一番気になっている事に手を付ける事にしている。
私は、現在その人形が置かれているという居間に通された。
「あれです!」と奥さん。
それは女性の人形だった。
木彫りの人形だと聞いていたが、
それは茶色やこげ茶色ではなく、黒に近い。
高さ30cm位の痩せた女性の木彫りの人形である。
近くによって、色々な角度から見て見た。
そして、しばらくその人形の近くに居てみた。
しかし、その人形に対して、怖いという感じがしない。
普通、呪いを発している人形であれば、
なにかしら、怖いと感じるのだか、
気持ちが悪いという感じさえない。
これは、私でなくても、普通の人が5人見て、3人が怖いと感じるなら、
その人形には霊が入っているか、呪いの中継点になっている可能性がある。
あと、人形の目を見ても、生きているという雰囲気も無い。
また、人形の臭いを嗅いでみた。
呪いの中継点になっている人形の場合、
微妙に、動物の臭いや、生ごみの臭いがする時がある。
しかし、特に変わった臭いも無かった。
どうやら、ただの人形のお土産だった様だ。
その事を奥さんに伝えると、
少し安心された様だった。
しかし、問題はなんら解決した訳では無い。
5月末頃から、奥さんに悪夢を見させ、頭痛を起こさせたものは何だったのか。
人形じゃないとしたら、それは何なのか。
実は、電話で相談を受けた時から、
なんとなく人形が原因では無いのではないかと思っていた。
なぜなら、
上司の方から人形を貰ったのが去年である。
それなの、悪夢を見始めたのは5月末である。
半年も寝室あって、何も起きていないのがちょっと違う感じがした。
それに、人形を寝室から居間に移しても、
頭痛は治らず、むしろ酷くなったと奥さんは言っていた。
つまり、人形が奥さんに悪夢を見させたのでは無いのではないかと思ったのである。
だから、これではっきりした。
奥さんに悪夢を見させ、頭痛を起こさせたものは、
まだ、
奥さんの寝室にいる!
寝室は2階だという。
ちょっと緊張するが、怖くは無かった。
何しろ、毎日ご主人と奥さんがその部屋で寝ていて、無事な訳だから、
危険なものでは無いはずだ。
はたして、奥さんに悪夢と頭痛を与えた物は何なのだろう。
昨日の夜からずっと考えていたが分からなかった。
■5月末頃から起き始めたという悪夢。
■頭痛は朝起きた時、起きるという。
■特定の人が出てこない悪夢。
まったく見当もつかない。
それだけに興味はあった。
ゆっくりと、2階への階段を登る。
全部で14階段だ。
階段を登る時、段数を数える癖がついてしまった。
これも職業病かもしれない。
13階段の時は注意してあげているのだ。
(ちなみに、気になる方は下記(不吉な階段)をお読み下さい。)
http://ameblo.jp/hirosu/entry-10649739470.html
奥さんが先に寝室に行き、ドアを開ける。
中は真っ暗だったので、明かりを点ける。
「どうぞ」
「お邪魔します。」
8畳位の寝室に、ウォーキングクローゼットが付いている広い寝室だ。
南と西側の窓には厚いカーテンが、かかっており、
電気を消すと真っ暗になるのは、
この厚いカーテンで窓からの光を完全にシャットアウトさせるからだと思った。
普段から、この寝室はカーテンをして真っ暗にしているという。
部屋には置物や絵画など、太陽光によって色あせてしまうものが多数あるというのだ。
また、聞くとこのカーテンは、防炎カーテンだという。
なるほど、そんなカーテンがあるのか。
南側のカーテンを開ると、
そこはベランダに出られる通路にもなっている大きなガラス戸だった。
私は許可を得て、奥さんのベッドを中心に調べた。
なにしろ、一緒に寝ているご主人は悪夢など見ないし、頭痛もしないというのだから、
きっと奥さんの寝ている方に問題があると思ったからだ。
ベッドの下や、枕、ベッドのバネまで見たが、問題が無い。
他の置物や絵画にも、気になる物は無かった。
残すはウォーキングクローゼットだけだった。
ウォーキングクローゼットとは、主に洋服を仕舞う場所だが、
普通、洋服は洋服ダンスに仕舞うが、
ウォーキングクローゼットは寝室と洋服を飾る場所が続いている部屋なのである。
しかし、不思議な事に、
いくらウォーキングクローゼットを見てみても、怪しい物が無い。
洋服と、上の段に帽子類、下には履いてない靴など。
私の感性に引っかかるものが無いのだ。
なんと、この部屋には、何も悪い物が無いのである。
ここまできて、すっかり行き詰ってしまった。
それも、ウォーキングクローゼットの中の箱を全部開けて調べて、
なんとお騒がせな事をして、何も無いとは!!
ちょっと、冷静になれ、自分!
と言い聞かせて考えた。
まずいなぁ。
部屋が広すぎて、何か見落としたのかなぁ。
こんな時は、目をつぶって、大きく息を吸いはいた。
冷静になって考えた。
考えろ、考えろ!!
■5月末頃から起き始めたという悪夢。
■頭痛は朝起きた時、起きるという。
■特定の人が出てこない悪夢。
そうか!!
「あのう。奥さん、
何かこの部屋で、
4月か5月から置き始めた物はありますか?」
「4月か5月ですか?」
すると、奥さんは、
ウォーキングクローゼットの中から帽子とバッグを取り出して来て、
この帽子とバッグは主人から、
そして、あそこの花は娘から母の日に貰いました。
他には無いという。
ウォーキングクローゼットの中にあった帽子とバッグは、
さっき調べたが、問題無かった。
念の為に、もう一度手にとってよく見て感じたが、やはり問題は無い。
残すは、
私はあそこと指差された、娘さんから贈られたという花を見た。
それは小さな植木鉢に入った花で、
植木鉢ごと綺麗にリボン風にデコレーションされているものだった。
それが2つ。
ガーベラという花だという。
昔は母の日は、カーネーションと決まっていたが、
今は色々とバーリエーションがある様だ。
普通の花の様に見えた。
普通の綺麗な花である。
なんら怪しい所が無い!!
私と奥さんは、とりあえず、隣の娘さんの部屋を見せてもらう事にした。
私が廊下に出て、
続いて奥さんも、寝室の明かりを消して、ドアを閉めた。
その瞬間である。
奥さんに悪夢を見せ、頭痛を起こさせたものが分かったのである!!
そうだったのか!!
私は明かりを点けて、もう一度寝室に戻った。
そして、奥さんに言った。
「多分信じられないと思いますが、
貴方に悪夢を見させ、頭痛を起こさせたのは、
このガーベラの花です!!」
「ええ!!??」
希にこういう事が起きるのである。
花は生きている。
そして、花は太陽を欲しがる。
ある種の観葉植物は、太陽が無くても平気な物はあるが、
花の精霊は時として、太陽を欲しいと、
人間に訴える時があるのである。
もちろんそんな花が訴えるテレパシーみたいなものは、
人間には分からない。
でも敏感な人は、それを夢の中でキャッチしたり、
頭痛となって受け取ってしまうのである。
その後、奥さんはすぐに、そのガーベラの植木鉢を、
庭に植え替えてあげたという。
その日から、悪夢や頭痛は起きていない。
END