悪夢を生む人形




これは今年の6月に相談された比較的最近のものである。


契約している会社の部長の奥さんからの電話だった。





5月末頃から、奥さんが悪夢を見る様になったという。


そして、6月に入ってからは最近は軽い頭痛もするのだという。





それまでの彼女は、毎朝5時半には起き、


朝食の準備、お弁当作りと、朝の目覚めもとても良い方だったという。


ところが、5月末頃から悪夢はしょっちゅうで、


起きたら頭痛までするようになったのだ。





悪夢を見る時は、誰かにしつこく物を頼まれたり、


誰かに追いかけられたり、砂漠でさ迷っていたりと、さまざまで、


それが特に誰かという特定の人物は出てこなかったという。






「今まで、悪夢はよく見る方でしたか?」



「いえ、小さい頃には見た事はありますが、


 高校生になってから今まで、悪夢など見た事はありません。」



そう彼女は語った。





「悪夢を見たり、頭痛がしだしたのは、


 家族の中で、貴方だけですか?」




「はい、隣に夫が寝ているのですが、


 夫は悪夢はいっさい見ないそうです。


 ただ、夫は毎晩の様にお酒を会社帰りに飲んでくる場合も多く、


 家でも晩酌をするので、ぐっすり寝られるのでしょう。


 頭痛はある様ですが、多分二日酔いのケースだと思います。


 私が悪夢を見る前からそうですから。


 あと、娘と息子も悪夢や頭痛は無いそうです。」





彼女は、悪夢を見た時期はそれほど気にしなかったそうだが、


さすが、頭痛をともなってきた時に、医者に診てもらったという。


しかし、結果は問題無いとの事だった。






では何故、私に相談してきたかと言うと、


彼女は、この悪夢と頭痛の原因に心当たりがあるというのである。




実は、去年の末に、


上司からお土産を貰ったのだが、


そのお土産が、この悪夢と頭痛の原因ではないかというのである。




それは、インドネシアに長期出張に行っていた上司が、


当地の木彫りの人形をくれたのだそうだが、


今まで、それを夫婦の寝室に飾って置いたという。




ご主人は、気に入っていたそうだが、


奥さんは、その人形がなんとなく気持ち悪とずっと思っていたという。




そう思いながらも、上司のお土産というのと、


夫が気に入っているならと、ずっとそのままにしていた。




ところが、最近悪夢を見始めてから、


悪夢はやはり、この人形のせいではないかと思い始め、


インターネットで調べたと言う。




すると、この人形では検索出来なかったが、


インドネシアには、実際に呪術師が何人もいて、


黒魔術で憎い相手に呪いをかける事もあり、


その時に人形も使う事があると知ったという。





彼女の不安は、いっきょに疑惑へと変わり、


すぐにその人形を寝室から居間に移したという。




しかし、それからも頭痛はおきた。


むしろ、その人形を移動させてからの方が、なんとなく酷くなったという。




そこで、私に是非その人形を見に来て欲しいというのである。




上司にもらった人形なので、やたらに捨てる訳にもいかず、


かといって、下手に扱ったら、


何かもっと悪い事が起きるのではないかと不安なのだという。




そこで念の為に聞いてみた。



「何か誰かに怨まれる心当たりはありますか?」



彼女は少し考えてから、


「無いと思います。」




「では、その人形をくれた上司から、


 ご主人が怨まれている事は無いですか?」




奥さんの勘が当たっているとすれば、


一番呪いをかける可能性のあるのは、お土産をくれた人物である。





しかし、奥さんは、



「無いと思います。


 その上司の方は、うちにも何度も来て、


 夫を部長に強く推薦したのもその方ですし、とても良い方です。」


という。






どうも電話では分からない何かがある様に感じたので、



私は翌朝、彼女の家に伺う約束をした。









奥さんに、悪夢を見させ、頭痛を起こさせたものとは、




後半は、明日のブログに続く。