●最後の船長のように
このお話は、昨日のブログ(●奇妙な泡声)の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-11918653366.html )
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
成城に住んでいるという女性からの相談でした。
事の起こりは、1ヵ月前にさかのぼるという。
彼女の二十歳になる息子さんが、突然奇妙な声が聞こえると言い出したのだ。
それは、ゴボゴボと誰かが、顔を水につけて喋っている様な声、
水の中で誰かが、もがいている様な声だという。
よく聞いても、何と言っている分からない泡のような声だという。
その声は、家に居る時だけ聞こえるのだと言う。
ところが、一昨日から、彼女にもその泡声が聞こえだしたのである。
それは息子から聞いていた、水の中から誰かが、話しかけてる様な声だった。
息子が言っていた事は、本当だったのだ。
それと同時に、怖くなったという。これは病気じゃない!
何か恐ろしいものが、この家にいる!
そう思った彼女は、色々調べてここに電話してきたという。
私は、その奇妙な声とも音も考えるものをメモしてみた。
■泡(あぶく)の様な声
■ゴボゴボ、と顔を水につけて喋っている様な声
■水の中で誰かが、もがいている様な声
■最初は息子さん。そして奥さんがだけに聞こえる声
■家にいる時だけ聞こえる声で、1階でも2階にいる時でも聞こえる。
■家のどこから聞こえるのか分からない
■1ヵ月前から聞こえ出した
彼女の家に行く事になった。
彼女の家は、豪邸では無かった。
庭は広い方だろうが、家は築30年以上というそのままだ。
庭はあまり手入れをされていない感じだ。
この時はまだ、まさか私が、
世にも奇妙な不思議体験をする事になるとは、予想もつかなかった。
ベルを鳴らすと、ご長男さんが出迎えてくれた。
大学生だという。
私は家に上がらせてもらうと、
まず、風呂場をチェックした。
次にトイレと台所。
というのは、
■泡(あぶく)の様な声
■ゴボゴボ、と顔を水につけて喋っている様な声
と、いずれも水に関係していると思ったからだ。
だから、まず家の中の水回りを確認してみたのだ。
しかし、
いずれも極普通の風呂場とトイレと台所だった。
次に気になるのは、外だ。
息子が指摘した声は、
ある時は天井の方とか、ある時は外からだと言ったという。
つまり、外から聞こえたという時もあった訳だ。
私はとりあえず、家の周りを見学した。
玄関から右周りで、勝手口にまわり、
細長い裏庭を見て、表の庭に戻ってきた。
別に疑う訳ではないが、
やはり井戸があるんではないかと、チェックした。
■水の中で誰かが、もがいている様な声
というのが、どうしても気になったからだ。
人が溺れるとしたら、井戸か風呂ぐらいだからだ。
しかし、井戸らしきものは無かった。
表の庭に、小さな池があったが、
あの大きさでは、幼児が溺れるくらいで、
とても普通の人が溺れるような場所では無い。
やっぱり、家に来てもさっぱり分からない。
その内、昼になり、
「かやさん、お昼食べましょう。」
と声がかかった。
なんと、お寿司をとってくれていた。
いかん!
何の成果も無く、お寿司までご馳走になってしまった。
そんな後ろめたさを感じながら、
奥さんと息子さんとの3人で、食事をとった。
私達が食事していたリビングからは、
庭が一望できた。
今は亡きお爺さんが、作ったというその庭は、
小さな池、岩、木々などが一つの良い風景を作っていた。
私はふと、「いい眺めですね」と褒めた。
すると、
「あともう少しで、この庭の半分が無くなるんですよ。」という。
なんと、庭の半分を駐車場にするという。
息子さんが二十歳になり、大学進学中に免許を取ったので、
車を買い駐車場を作ると言うのだ。
まぁ、この家に来た時になんで駐車場が無いのかと思ったのは確かだが、
私はその事を聞いて、なんか胸騒ぎがした。
「えっ、どの辺りの庭が無くなるんですか?」
息子さんが、窓際まで来て説明してくれた。
「あの池はどうなるんですか?」と私。
「あの池は無くなります。」と息子さん。
「池に魚はすんでいますか?」
「いえ、昔は綺麗な金魚がいましたが、
今は何もいません。」
う~ん。池が無くなるのか。
なにか胸騒ぎがする。
私は食べ終わると、外に出て、
池に近づいて行った。
池は1m位の小さなものだった。
その池をじっと見ていた時だった。
家族の方からは、池には何も居ないと聞かされていたが、
そこには、メダカがたくさんいた。
しかも、一匹だけやけに大きなメダカがいる。
明らかに、周りにいる普通のメダカよりも5倍は大きい。
その大きなメダカが、私の方を見ている様な感じを受けた。
その時、ふと、
私は何故か、目をつぶってみた。
すると、かすかにだが、
ゴボゴボと、泡の様な声が聞こえたのだ。
それは、ホンの1・2秒の事だったが、
ここの家族が聞いたという声だと思った。
そして、それはこの小さな池の中から聞こえた様に思えた。
一瞬の事だったので、気のせいかとも思ったが、
そうではなかった。
なぜなら、
私は直ぐに、家にいる奥さんと息子さんに、
「今、あの泡声、聞こえましたか?」と聞くと、
「はい、今聞こえました。
なんで、分かるんですか?」と言ったのだ。
信じられない事だが、
私の中で、
1つの仮説が、頭に浮かんでくるのだ。
しかし、そうなると何故あのメダカ達は、
池が取り壊される事がわかったんだろう。という疑問が残る。
私は息子さんに、
「もしかして、
あの池のそばで、池を取り壊す事を話したりしましたか?」
と聞いてみた。
すると、したという。
駐車場の建設にあたり、
2社に見積もりを頼み、
そのたびに、あの池を取り壊し、庭の半分、
ここからここまでを駐車場にするという打ち合わせを、
あの池辺りでしたというのだ。
もう金魚もいないあの池を、埋め立ててくれるという話も。
それを聞いて、私の仮説は揺るぎないものとなった。
それは、
1ヵ月前に、息子さんが池の上で、
ここに駐車場を作り、池を取り壊す事を話した。
そんな様子から、自分たちの危機を強く感じた魚達が、
なんとか助けてもらおうと、必死に息子さんに訴えたのだ。
それが、テレパシーみたいなものとなり、息子さんに届いたが、
もちろん、その言葉は息子さんには理解出来ない。
不気味な声としか思われなかったという訳だ。
私も自分がたてた仮説だが、初めての出来事だし、
はっきりした自信は無い。
ただ、1ヶ月前からの出来事が、
泡声がし始めた時期と一致している事。
また、水からの声という点でも、つじつまが合う。
そして、私が池の中から聞こえた様な気がするという一瞬の声。
その全てが、上の仮説を支持していた。
それを聞いた奥さんも息子さんも、半信半疑だったが、
なんとか説得して、
係る費用は、私が払うのでという事で、(3万円の中から)
メダカ達を他に移動させる事になんとか同意してもらった。
実は私も半信半疑だったが、
これ以外の事は、まったく考えられなかったのだ。
もちろん、私も率先して手伝う事にした。
まず、一時的にメダカを避難させる為に、
大きなカメと網2つ等を買ってきた。
そしてタライに、メダカを取り、大きなカメに移していった。
私達は、メダカに「助けてあげるからね。」と声をかけながら、
網でメダカをすくっていった。
結局、メダカは40匹くらいいただろうか。
また金魚はいないとの事だったが、3匹ほど黒い金魚がいた。
黒いから分からなかったのだろう。
その全てを、大きなカメに移すと、
同時に買ってきた浮草と藻もいれた。
水は池の水をくんできて注いだ。
また、他にも、
駐車場にする時に、
移動させる木はいいとして、伐採してしまう木には、
3日前から、半分に薄めたお酒を一杯根元にかけて、
お線香を1本焚き、「今までありがとう」と感謝の言葉と、
3日後に切ってしまう事を詫びるように勧め、
池の周りにも、3日前から、半分に薄めたお酒をかけてまわり、
お線香を1本焚き、「今までありがとう」と感謝の言葉と、
3日後に埋めてしまう事を詫びるように勧めた。
また、この池と庭を作った亡きお爺様に、
工事の1週間前から、池と庭半分を取り壊す事のお許しをこう様に、
供養を毎日するように勧めた。
すると、
駐車場の工事が無事済んだ後も、
あの泡声はしないという。
正確には、あのメダカ達を他に移したあたりから、
泡声はしなくなったそうだ。
私にとっても、とても奇妙な体験だった。
当時は、
あのデカいメダカが、自分たちの危機を察し、
テレパシーか何かで、人間に訴えていたのだとしか考えられなかったが、
今、冷静に考えると、
もう一つの可能性が考えれられる。
それは、お爺さんの霊だ。
あの庭を造り、金魚やメダカを飼い、
小さくても、いつも家族がリビングから見て癒してくれる
あの庭を、壊すな、残って生きている魚達を殺すな。と、
奥さんと、息子さんに訴えていたのかもしれない。
しかし、そうなると疑問もある。
なぜ、ゴボゴボと水の中からの声だったのか、
なぜもっと聞き取れる様なメッセージじゃなかったのか。
例えば、「池を壊すな」とか、「メダカを殺すな」とか
夢に出て来て言っても良かったものだ。
そう思うと、
やはり、あのメダカ達が、人間に訴えたと思わざる負えない。
最後に、そんな事を思わせる事があった。
それは、私がメダカ達をタライに移している時だった。
池の中のメダカや金魚を、網ですくっていったのだが、
さっきまで池の表面にいた、あのデカいメダカが見当たらない。
まぁ、いいかと思って、どんどん小さいメダカ達をタライに移していった。
やがて、全てのメダカと金魚を取り終えたと思えた時、
あのデカいメダカが現れ、
自分から網に入って来た。
気のせいかもしれないが、そんな感じだった。
それはまるで、
船がもう沈むという時に、
乗客が全員避難して、
自分以外の全ての人の安全が確認できたあと、
最後にやっと船長が避難する、そんな姿に見えたのです。
END