●孤独死の道連れ
このお話は、昨日のブログ(●猫石 )の続きです。
従って、昨日のブログ(http://ameblo.jp/hirosu/entry-11864359212.html )
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
私の友人の渡河のお爺さんは、練馬区で盆栽を趣味と実益を兼ねて育てていた。
1週間ほど前、その渡河のお爺さんから盆栽1つと石を買った高田さん。
石は大きな猫よりもちょっと大きい位のものだという。
さっそく、自分の庭の棚に盆栽を置き、庭の角辺りに石を設置したという。
ところが、石を地面に置いたと同時に、猫の声が「ニャオー」としたのである。
でも、石の下には、猫などいない。周り見回しても猫などいないのだ。
再びその石を地面に置くと、「ニャオー」と鳴いたのである。
高田さんの娘さんが、興味をもったのか、その石を持ち上げてみたという。
そして石を地面に置くと、「ニャオー」と鳴いたので、大騒ぎとなった。
私たちは、渡河の運転で高田さん家に行く事になった。
高田さんの家は、青梅街道をずっと行った田無市にあった。
現在、田無市は無い。
2001年に保谷市と合併し西東京市となったからである。
車を走らせながら、窓を開けた。
田無は、まだ都会よりも自然が少し残っている感じだ。
運転しながら、渡河が話しかけてきた。
「オレが思うに、
その石に、猫の怨念が憑りついているんじゃないかな。」
「どして、そう思うんだい?」
「いや、石が猫の大きさだし、石から猫の鳴き声がするんだぜ。
きっと、誰かがその石で、猫を殺したんじゃないか!」
「殺された猫の怨念が石に染み込んでいて、
怨めしやって鳴いたんだよ。」
「そうだな、
その可能性もあるかもしれないね。
でもなぁ、
君のお爺さんは、その石を長い間保有していたのに、
別に特に悪い事起きてないよね。
これから行く高田さんにしても、
猫の声を聞いただけで、悪い事が起きた訳じゃない。
オレの気のせいかなぁ。
あまり悪く思えない。」
「あと、鳴き声なんだけど、
俺たちは、その猫の鳴き声を聞いていないから、断言は出来ないけど、
高田さんは、猫の鳴き声を最初に聞いた時、
小さい猫が石の下敷きになったのかと確かめたって言ってたよね。」
「ああ、それが?」
「つまり、高田さんは、猫の声に恐怖を感じたとか、
怖かったという感じを受けてないんだよね。
普通、声には性格が出るもんなんだ。
もし、怨みがある猫なら、
もっと怖がらせるような鳴き声になる様な気がするんだよね。」
「あと気になるのは、
高田さんが最初に猫の声を聞いた時、石は手に持っていたんだよね。
それなのに、なぜ、
猫は石の下敷きになっていると思ったんだろう。
もし、石の中から声がしたんなら、持っているんだから分かるんじゃないかな。
それともう一つ、
なぜ、石を持ち上げた時は猫は鳴かず、
石を置いた時だけ鳴いたんだろうか。
なんかそこに、この謎を解くカギがある様に思えるんだ。」
そうこうしている内に、我々は高田さんの家に着いた。
車を路駐した後、門で渡河が挨拶をしている間、
私はずっと庭の方を見ていた。
高田さんの家は、比較的新しいと思われる二階建ての家で、
庭には芝生が敷き詰められていた。
高田さんは、別に怒っていなかった。
娘さんが気味悪がっているので、持っていって欲しい程度の気持ちで、
渡河のお爺さんとは仲が良いらしい。
私たちは、家には上がらず、さっそく庭に直行した。
娘さんが家の中から心配そうに見ている。
「あった。 あの石だろう。」
大きな猫を横にしたような、つるつるした石が、
庭の角の方に、置かれていた。
私はしばらくその猫石を見てから、渡河に、
「ちょっと持ち上げてみてくれないか」
「えっーーー、まじか?
自分で持った方が、分かるんじゃないかい?」
「いや、オレは周りの様子とか見たいから、持ってみて」
渡河は、恐る恐るゆっくりと、その猫石を両手で持ち上げた。
「・・・・・・」
やはり、石を持ち上げる時は何も起こらない。
「じゃあ、石を置いてみて」
渡河、やや逃げ腰で、石をゆっくり置いた。
そこにいた全員が、耳を澄ました。
「・・・・・・」
猫の鳴き声はしなかった。
話によると、
娘さんもあれから2度ほど試したそうだが、
あの時の3回の鳴き声以来、石は鳴かないという事だった。
少し残念である。
正直、私も猫の声を聞きたかった。
私たちは、石の回収の前に、
少し時間を頂いて高田さん家族に尋ねた。
「あのう、家はけっこう新しい様ですが、
新築で建てられたのですか?」
「10年程前に建てました。」
「その時、ここはどんな土地でしたか?」
「更地でした。」
「更地っていう事は、前に家があって、
それを取り壊したんですかね。
何か聞いていませんか?」
すると、奥さんが、
「後から聞いた事ですが、
昔、ここにお婆さんが独りで住んでいたそうです。」
「そうですか。
では、何か猫について、
ここと関係しそうな事、聞いていませんか?」
すると、奥さんが、こんな事も聞いたという。
それは、そのお婆さんは、猫を4・5匹飼っていたという。
そして、ある日突然孤独死してしまったという。
噂では、死後1ヵ月で発見されたという。
その後、遠い親戚の遺族の方が更地にして、土地を売りに出したのだ。
それを聞いて、私には何となくだが、想像がついた。
多分、孤独死したお婆さんと一緒に猫達も餓死したのではないだろうか。
いわば孤独死の道連れになってしまったのではないか。
お婆さんは、お墓に埋められたかもしれないが、
猫達は庭に埋められたと考えられる。
私は高田さんの娘さんと奥さんに、
きっと猫達を供養してあげると、この先良い事が起きると思いますよ。
と言って、
1週間、お線香と、
猫の食事とお水を石の前に供えて、
「お腹空いてよね。喉が渇いたよね。
一杯食べて、一杯飲んでね。
一週間供養してあげるから、成仏してね。」
と声をかけてあげる様にアドバイスした。
結局、あの猫石はそのままにして、
私たちは高田さんの家を後にした。
帰路の車の中で、渡河が、
「どうして、猫は鳴いたんだろうね?」
と聞いてきた。
「うん。
僕は猫の言葉は分からないけど・・・・
多分、
多分だけど・・・
「ありがとう。」って言った様に思えるんだよね。」
「どうして?」
「多分、餓死していた猫達は、
供養もされず、庭隅に穴を掘って、
そこにただ埋められただけだったと思うんだ。
誰にも見送られず・・・
誰にも見向きもされず・・・
そんな時、高田さんが、あの石を置いた。
多分それは、
猫達にとって、とても嬉しい事だったのかもしれないよ。
石を置くことによって、
それも猫に似た石を置く事によって、
お墓にしてくれて、ありがとう。って。
END