●猫石
これは私が東京に住んでいた頃のお話しです。
皆さんがよく御存じの、猫目石(キャッツアイ)というのがあると思いますが、
それとは違う、ある不思議な石のお話です。
ある日、私の友人の渡河が、
予告も無く家にやって来た。
手にケーキをぶら下げている。
彼が何か土産を持ってきている時は、何か私に御願い事がある時だ。
「今日はなんだい?」
「ちょっと、かやに聞いて欲しい話があるんだ。」
「オレのお爺さんは知っているよね?」
「ああ、知ってるよ」
渡河のお爺さんは、練馬区で盆栽を趣味と実益を兼ねて育てていた。
私も行った事があるが、
200坪位の庭に盆栽が所狭しと置かれ、
店構えなど無いが、知り合いや近所の方、同好会の人に売ったり、
交換したりしていた。
「あのお爺さんに、何かあったの?」
「実は、先日、
知り合いの人に、盆栽と石を売ったんだけど、
その石が、気持ち悪いという苦情が来たんだよ。」
「気持ち悪い?」
「ああ、石が鳴くんだ」
「石が鳴く?」
「ああ、猫の鳴き声で鳴くそうだ。」
確かに不思議な話である。
私も石が鳴くなどという話しは聞いた事がない。
石を買われた人(高田さんとしておこう)の話をまとめると、こうだった。
1週間ほど前、
渡河のお爺さんから盆栽1つと石を買った。
五葉松の盆栽と、
石は大きな猫よりもちょっと大きい位のものだという。
さっそく、自分の庭の棚に盆栽を置き、
庭の角辺りに石を設置したという。
ところが、
石を地面に置いたと同時に、
猫の声が「ニャオー」としたのである。
高田さんは、その石で小さな猫でも押しつぶしたかと思って、
急いで石を持ち上げたという。
でも、石の下には、猫などいない。
周り見回しても猫などいないのだ。
しかし、再びその石を地面に置くと、
また「ニャオー」と鳴いたのである。
その瞬間、
高田さんは、その石がまるで猫の様な気がしたという。
確かに石の大きさも、大きな猫とさほど変わらない物だったから、
まるで、猫がその石に憑りついていると感じたと言う。
でも、気のせいかもしれないと思って、
その事を家族に話すと、
高田さんの娘さんが、興味をもったのか、
高田さんが反対するのを、押し切って
その石を持ち上げてみたという。
しかし、何も反応が無い。
「お父さんの、聞き違いじゃないの?」
そう言って、石を地面に置くと、
「ニャオー」と鳴いたので、大騒ぎとなった。
その後、渡河のお爺さんの所に、高田さんから、
どこであの気持ち悪い石を取ってきたのか?
とか、
気持ち悪いので、早く回収に来てくれ。と電話がかかってきたという訳だ。
「それで?
お爺さん、どこでその石を拾ってきたって?」
「それが、随分前の事で、
どこでその石を拾ってきたのか覚えていないというんだよ。」
「でも、だいたいいつもどんな所から拾って来るんだい?」
「多摩川にはよく行ってみたいだよ。」
「川の石かぁ」
川の石など、訳のわからない石はなるべく持ち帰らない方が良い。
昔の墓石の代わりだったものや念が入っているものがある。
でもどうしても、綺麗で持ち帰りたいという場合は、
その石をお線香の煙で供養し、塩をかけて2日位日光の当たる所に置いておく。
しかし、
それは、いずれも、人の墓や人の念の話である。
猫というのは、初めてである。
この時点で、私にはさっぱり分からないとしか言えなかった。
とりあえず、まずは石の回収である。
私たちは、渡河の運転で高田さん家に行く事になった。
やがて、
この不思議な猫石の正体が、分かる事になるのである。
この時点で、
この猫石の真相が推測できる人は、私よりも鋭い人である事は間違いない。
後半は、明日のブログに続く。