●世界一の先生



ある貧しい農家に、

女の子が産まれ、ジョアンナと名付けられた。



貧しいがゆえに、家も汚かった。

彼女が3歳になった時である。



洗濯もままならない汚い布団などの環境が原因で、

クラミジアがアンの目に住みつき、炎症を起こした。

アンの目はトラコーマになり、

やがてほとんど見えなくなった。








弟がいたが、障害児で体が不自由だった。

当時の父親は言う。

「クズばかりの家族だな。」






9歳の時、

唯一看病をしてくれた母が、亡くなった。





残ったのは、

盲目に近いのアンと、障害児の弟。

そして、大酒のみの父親だった。





父親は、「面倒くさいのが残ったな。」

「一銭の酒のたしにもならねぇ。ガキ2人。」




彼に迷いは無かった。



2人を救貧院に置き去りにして、捨てた。






救貧院に捨てられても、弟とふたり励まし合った。





しかし、その弟も結核で亡くなる。





一人ぼっちになってしまったアンは泣いた。

いっぱい泣いた。




やがて、アンの目の病気も悪化。

盲目となる。







親に捨てられ、

目が見えなくなったアンは、全てに絶望し、うつ病になった。






そして、それが悪化。

緊張型分裂症となり、精神病院に放り込まれる。










何にも反応を示さない患者で、

一日中ベッドにうずくまり、一言も話さない。

誰か来ても動こうとせず、何も自分から食べようとしない。







看護婦たちもささやいた。





あの子は、もうダメだ。」









病院の看護長も、

回復の見込みがまったく無い、

あんな面倒な子は、

ビルの地下でいいと、

施設の地下にある独房に監禁させ、

人目につかないように、隔離した。






冷たい地下室で、人目につかず、ただ死を待つだけのアン。


























そんなアンに、

小さな光が、差しこみます。























看護婦もあまり来ない様な地下室ですが、

そこに、ひとりの掃除婦が掃除をしにやってきました。



彼女はクリスチャンで、

掃除もみんなが嫌がる地下室をかってでていました。



彼女の目の前に、生きる望みを失った少女が寝ていました。

彼女は、掃除に来るたびにアンに声をかけましたが、

でも、何の返事も帰って来ません。





他の看護婦たちが、見捨てたのに彼女は違いました。

掃除時間以外でも、昼休みは毎日彼女のベットに行き、声をかけました。




ある時は、アンに聖書を読み聞かせ、

ある時は、自分で焼いたクッキーを差出し、

ある時は、アンの為にケーキを買ってきました。






しかし、絶望し死を待つだけの盲目のアンは、

それらにいっさい耳をかさず、食べる事もありませんでした。



そんなただ無視される状態が3ヶ月も続きました。





さすがに、あの掃除婦もこりただろうと、思われましたが、

そうではありませんでした。





なぜなら、その掃除婦にも小さい子供いて、

アンの事を自分の子供と同じような目で、見守っていたのです。






そんなある日、

愛情が少し伝わったのか、

差し入れた食べ物が、食べられていました。




アンが初めて食べてくれた。


掃除婦のおばさんは、嬉しくなりアンを抱きしめました。




アンは不自由な口調で、「あい・がとう」と言いました。


いい子、

この子は本当はいい子なんだ。








「私・・・生きてて、いいの?」







「当たり前でしょ、いいの!

 生きてて、いいのよ!」









大丈夫、

 あなたは、ひとりじゃないのよ!」






その後、アンはこの優しい掃除婦のおばちゃんの励ましもあり、

目の治療を積極的におこなった。



何回かの手術で、少しだけなら見えるようになる。


やがて、なんとか盲学校に行けるようにまでになった。



そんな時、

学校で、アンはひとりの同級生に感動する。




その子はまったくの盲目で盲難聴なのに、

自分よりも勉強に熱心で、指文字で人と会話もできるようになっている。

それ以後、アンは彼女と友達になり必死に勉強した。

自分と同じ様な苦しみを持つ人々を助けたい。


彼女は猛勉強し、学校では卒業生代表にまでなっていた。

ついにアンは教師となったのである。














ある時、

重度の身体障害児の娘を持つ親が、

この子の世話を出来る人をと、教師を探していた。



目が見えず、耳も聞こえず、

口もきけないという少女の名前は、













ヘレン・ケラー














お願いしに行った全ての病院に断られ、

誰もこんな面倒な子は無理と、みんなに見放された子だった。








そんな時、

この先生ならもしかしてと、

最後の望みとして紹介された教師こそが、

彼女、アン・サリバンだったのです。






アンは、ヘレン・ケラーを立派に教育し、

ハーバード大学にまで入学させるのである。







厳しさの中にも、愛情があったアン・サリバン先生。





そんなアンが、

みんなに見捨てられた三重苦のヘレン・ケラーに、常に伝え続けた言葉がある。


ヘレンが泣いている時

ヘレンが絶望している時

そしてヘレンが、希望を失いかけている時に、

指文字で、アンは心を込めて、ヘレンに優しく伝えた。





































大丈夫、

 あなたは、ひとりじゃない!」






END