●花火ノイローゼ
人には、それぞれ怖い物がある。
毛虫が怖い。とか、
ゴキブリが怖い。とか。
そんな中、
夏の季節になると、思い出すのが、
花火が怖いという女性の事だ。
夜空を彩る、綺麗な花火。
そんな花火を、怖がる人がいたのである。
彼女は大学生だが、母親に付き添われてやってきた。
どこに連れて行けばいいのか分からないという。
精神科でみてもらう様に言われたが、
その前に、私の所に来たのだという。
私の前でもずっと下を向いているほかは、
普通の大学生の女性にみえる。
彼女の母親が口火を切った。
「この子、花火が怖いんです。
特に夏の季節になると、
なるべく花火の音を聞こえない様にと耳栓をするんです。」
「なぜ、花火が怖いんでしょうか?」
「なんか、花火の音が自分を呼んで幽霊の声に聞こえるというんです。」
「幽霊の声に。」
「はい。
夏でなくても、花火がなると、すぐに耳栓をして怖がるし、
テレビでも花火が出ると、チャンネルと回してしまいます。」
それは、もう花火ノイローゼと言っていい状態だという。
「他には、何か不思議な事はしますか?」
すると、お母さんは、
「大きな花火大会が近くである夜は、
家中の電気をつけて、その日は寝ないんです。
特に、隅田川花火大会の夜は酷くて、
電気を消して、音楽とテレビを一日中つけっぱなして、
布団をかぶって、
水も食事も取らないんです。」
「水も食事も取らないというのは、
トイレに行きたくないという事でしょうか?」
「はい。」
返事を含めて、ここまで娘さんは一切話さない。
「どうして、花火大会の夜だけ寝ないのですか?」
すると、またお母さんが、
「なんか、花火大会の夜、
幽霊が娘を迎えに来ると言うんです。」
「幽霊が迎えに来る?」
「はい。」
つまり、まとめると、
花火の音は、自分を呼んでいる幽霊の声に聞こえ、
花火大会の夜に、幽霊が彼女を迎えに来るというのだ。
そして、そんな状態がもう何年も続いているという。
これが、事実だとすれば、
確かに、花火ノイローゼになっても不思議ではないと思った。
この時、まだ7月に入ったばかりだった。
なので、彼女の母親はいう。
もうじき、今年も花火大会の季節になります。
その前に是非、診てほしいんです。
なぜ、この子だけ、こんな風になってしまったのでしょうか?
私に出来る事は何かないでしょうか?
これは、ただのノイローゼじゃない。
そう思った。
後半は、明日のブログに続く。