●呪い
電話相談をしていると、
たまに懺悔というか、
自分がやってしまった事を後悔する相談もある。
彼女は、学生時代、
ある役者志望の男性を好きになった。
役者志望の人は、まだ収入がとても少なく、
普段の生活や家賃を稼ぐ為に、
アルバイトをしている人が多いという。
彼もファーストフード店でアルバイトしていて、彼女と知り合った。
その後ふたりは、親しくなり、付き合う様になった。
始めは、今日はどうしてもリハに参加したいので、
バイトのシフトに代わりに入ってくれないかというものだったという。
彼女は喜んで、彼の代わりにシフトに入った。
しかし、段々とそんな日が多くなり、
やがて、彼はバイトを辞めた。
その後は彼女が、
勉強そっちのけで、アルバイトをして彼の生活を支えたそうである。
彼女は二人分働いた。
家賃は全額彼女が払い、
食事代も彼女が払うか作った。
それでも、自分が彼を支えているというのが、嬉しかったという。
彼は今は指輪とか買えないけど、
ミサンガを作ったんだと渡してくれた。
彼女はそれがとても嬉しかったという。
彼女の中では、婚約指輪の様に見えたのかもしれない。
彼は役者修行一筋に時間を費やす事が出来、そのおかげもあって、
段々と役者としての収入が貰えるようになった。
しかし、
収入があっても、その事は大した収入ではないと、
彼女にはウソを言って、
相変わらず、家賃は彼女が払い続けた。
ある夏、
彼に大きな仕事が入った。
久しぶりに彼が、おごってくれた。
それだけで、彼女は嬉しかった。
頑張って5年間、ここまで彼を支えて来てよかった。
仕事のロケ地が、離れていた事もあり、
3ヶ月間、ふたりは会えない状況となった。
それでも、
彼女は彼が帰ってきた時の為に、
一品でも彼が好きな料理をと、仕事の合間に料理を勉強した。
そして、電話も毎日かかさず、自分から彼にかけた。
ところが、
彼が仕事に行ってから、1ヵ月した頃から電話が通じなくなった。
1週間ぶりに、通じて理由を聞くと、
携帯の電池が切れて、なかなか充電出来なかったという。
彼女はそれを聞いて、
すぐに、携帯電話ショップに行き、
交換バッテリーを3つ買って、彼に速達で送った。
しばらくは、電話で会話出来たが、
やがて、彼が電話を無くしたらしく電話で会話が出来なくなった。
それで、公衆電話からしてくれるという彼の言葉を信じて、
彼からの電話を待った。
しかし、彼から電話が来る事はなかった。
それでも彼女は、きっと彼は仕事で忙しいに違いない。
いずれ、あと1ヶ月もすればまた会えると思っていたという。
ところが、彼は帰って来ると、
彼女には会わず、アパートを引き払ってしまったのである。
そして、どこかに引っ越してしまい、
電話で彼女に「別れよう」と言って来たのである。
超一方的だった。
理由を聞いても、答えてくれない。
今まで支えて来たのに、と言うと、
「お前も、オレの様な男と付き合えて幸せだったろう」と言われた。
後で分かった事だったが、
彼は3ヶ月のドラマの撮影の期間中に知り合った女性と、良い仲になっていたのである。
それを聞いて、
彼女の中の何かが壊れた。
自分の貯金も青春も捧げたのに、
電話一本で別れを告げた彼を許せなかったという。
彼女はインターネットや書物を調べて、
魔術や、わら人形、写真に針を刺すなど、
あらゆる呪いをしたという。
特に、彼の足が悪くなりますようにと、集中させた。
役者が出来なくなれば、
戻って来てくれるかもしれないという微かな望みもあったかもしれないという。
やがて、
彼女が彼を呪いを始めてから1ヵ月が過ぎた時である。
後半は、明日のブログに続く。