本堂を見ない男





これは占いの相談で出た話ではなかった。





久しぶりに同窓会で会った時、


旧友との雑談の中で出た話でした。







その時、


突然、こんな事を聞かれたのです。








「神社にお参りに行く時、


 本堂の方を見ないで進んだ方が、



 願いが叶うっていう、



 そんな事聞いた事ある?」、と。






「えっ? どういう意味?」と聞き返すと、










彼が言うには、


彼が務めている会社の社長は、


大変な幸運の持ち主で、



仕事はとても順調で、多数の取引先に好かれ、


新しくやる仕事も全て当たるという。





プライベートでも素敵な結婚をし、


親友も色々な方面で活躍している人が多いという。







そんな社長は、


毎月、近くの神社に参拝に行くというのだ。






社員のみんなも、社長の幸運にあやかろうと、


社長と一緒に、その神社に参拝に行くという。






ところが、


そこで、その社長は不可解な行動をするのだというのである。







普通、


神社の鳥居をくぐると、


まっすぐ目の前に、本堂がある。



そして本堂に向かって、参道が真っ直ぐ伸びている。





本堂のお賽銭箱や鈴などを、目前にして


その本堂を見ながら参道を歩いて行くの普通である。






しかし、社長は違うのだという。






社長は鳥居をくぐると、


本堂の方を決して見ずに、うつむきながら、


ゆっくりと、ゆっくりと参道を歩くのだと言う。




あまりに社長がゆっくりと歩くので、


他の社員達は、全員お賽銭をあげ参拝を終え、


ずっと、社長を待っている状態なのだという。







ある社員は言った。


「もしかしたら、社長みたいに、


 本堂を見ながら歩いては、いけないのかもしれないな。」





また、違う社員は言った。



「いや、もしかしたら、参道をせかせか早く歩いてはいけないのではないか、


 社長みたいに、時間をかけて歩いた方が願いが叶うのではないか。」と。







そこで、次回、


その社員たちも、社長を真似て、


本堂を見ずに歩いたり、


時間をかけてゆっくり参道を歩いてみた。




しかし、社長の様に幸運が訪れた者は無かったという。





そんなある時、



ある社員が、


「もしかしたら、社長はお賽銭に高額なお金を入れているんじゃない!」



と言い出した。







「そうか、だから、ゆっくり歩いて皆が全員終わった後、


 自分だけ1万円とか入れているのかもしれないな!」






そこで、


その日は早く参拝を終えた彼は、


お賽銭箱が見える所で、ずっと見張って、


社長がいったいいくら入れるのかをずっと見張ったという。








やがて、


社長がゆっくりと歩いて、お賽銭箱の前に来た。


息をのんで、見守る社員。







すると、


社長は財布を出して、





なんと、











みんなと同じように、5円しか入れなかったのである。









こうして、冒頭の私への質問となったのである。




「神社にお参りに行く時、


 本堂の方を見ないで進んだ方が、


 願いが叶うって、


 そんな事聞いた事ある?」、と。






私もそんな事は聞いた事が無かった。


参拝する時に、本堂のどこかを見てはいけないのだろうか?







「ちょっと、分からないなぁ。」


それしか言えなかった。








実は、この時の話はこれで終わりである。







結局、社長の行動と、神社の幸運の関係は分からず仕舞いで彼らとは別れた。








私も不思議だと思いながらも、深く考える事も無く、




それから1年が過ぎた。













そんなある日。



偶然にも、その神社の近くを通る事があった。










私はあの時の事を思い出し、


時間もあったので、


その神社に参拝していく事にしたのである。










大きな鳥居をくぐった。







特に変わった感じはしない、ごく普通の神社だ。



しいていえば、


普通の神社よりも自然が多い感じで人も少ない。





そんな事を考えながら、



私も参道を歩いて、本堂の方に向かった。











しかし、




その時、







私はある事に気が付いたのである。













あれ?




そういえば、







私も、本堂の方を見ていないじゃないか!








しかも、多分、他の人から見たら、




きっと、私も随分ゆっくり歩いている様にみえるのかもしれないなぁ!!










そうか、




そうだったのか!










社長の謎の行動と、幸運の謎が分かったように思えたのだ。







そして私にはこれ以外には、考えられなかった。















後半は、明日のブログに続く。