●首吊り死体の呪縛




人生、いつ何時


どんなに災難が降りかかってくるか分らない。








あるOLの方が相談にこられた。


彼女の身に降りかかった災難は、彼女や彼女の家族への不幸ではなかった。



それなのに、彼女は半分ノイローゼだという。










事の始まりは、


彼女がいつものように、朝会社に通勤する時に起こった。





その日、いつもよりも手かけるのに手間取り、


電車の時刻に間に合うように、朝食も取らずに家を飛び出したという。


そして、ちょっとでも早く駅に着く為に、


途中にある公園を突っ切って行く事にした。






この公園の中を通った事が、後に彼女をノイローゼにさせる事になるのだった。







実は彼女、今までも何度か遅れそうになると公園を突っ切った事があったそうだ。


ただ、この日は風もなく、


生暖かい空気が公園全体を包んでいたという。




彼女が丁度その公園の真ん中に差し掛かった時、


ふと、大きな木が揺れているのが見えた。


その時は、


「あら、風も無いのにあの木だけ揺れてる」と思ったそうだ。


ところが、


段々近づくにつれて、その揺れているものが木ではなく、


人間じゃないかと思い始めた。


そして、もう少し近づいた時、


それが首吊りした人間だと分ったのである。









彼女はその場で腰を抜かし、しばらく声も出なかった。


どのくらいたっただろうか、3分、いや5分。


やっとの事で、バックから携帯電話を出し110番したという。






その間も、目の前に首吊り死体があり、


ゆらゆらと揺れながら、彼女を上から見つめていたという。







もじどおり、彼女が第一発見者となってしまい、


警察の事情聴取をされた。


死体はすぐに警察の方によって降ろされた。








普通は、これで一件落着となる事案なのかもしれない。





しかし、


感受性の強い彼女の災難は、ここから始まるのである。







その後、風の噂で、


首吊り自殺した人は、近くの工場の社長だった事が分ったという。


彼女とは無縁の人である。







しかし、


それからいつもの公園を通れなくなったのは当然だが、


道端の普通の木を見ても、ちょっと揺れると首吊り死体を思い出し、


会社で仕事をしている最中にも、


ふとあの首吊り死体が頭をよぎるようになると言う。




家に帰ってきても、


あの首吊り死体が後ろから見ているのではないか。


窓からのぞいているのではないか。


何か、自分が責められているように感じるようになったという。




あの時、警察が来るまでほっとかないで、


自分が降ろしてやれば助かったのではないか


とか、


腰を抜かしていないで直ぐに警察に電話していたら、助かったのではないか。


そんな風に、自分を責めてしまう事があるという。


そして、時々その首吊り死体が夢の中にも出てくるのだという。






「先生、あの死体がいつも頭から離れないんです。


 きっと、私を責めているのでしょうね。


 どうして私に付きまとっているのでしょうか?」





そういって彼女は私に助けを求めた。


 

後半は、明日のブログに続く。