●顔面麻痺の息子
ある所に、
占星術師をしている女性がいた。
ある日、彼女に
待望の赤ちゃんが産まれる。
男の子だった。
しかし、産まれる時、
なんのに因果か、
まさかの医療ミスが起きてしまう。
産科医が鉗子の扱いを誤り、
赤ちゃんの顔面の左側の神経を傷つけてしまい、
唇とあごと舌の神経を麻痺させてるという失態を起こしてしまったのである。
これにより、
生まれた息子は、
永久に言語障害と
顔面麻痺を発症する毎日となってしまった。
母親はたいそう絶望した。
顔面麻痺から顔がやや崩れ、
学校に行くと、いじめのターゲットとなった。
「おばけが来た!」
「怪獣!」
言語障害で、しゃべる言葉も舌ったらず。
それがいじめに拍車をかけた。
「ブタがしゃべった!!」
やがて、言葉だけじゃなく暴力も受け始める。
「おばけブタは学校に来るな!」
友達もあまり無く、段々と内向的になっていく息子。
よくひとりで空想したり、
漫画や映画をみるのが好きになった。
それを見かねた母親は、
一方的にいじめられないようにと、
息子と一緒に格闘技を習い体を鍛えさせた。
12歳の時、
母親と顔面麻痺の息子を捨てて、夫が出て行った。
離婚である。
父親に捨てられたという事が、
彼をいっそう絶望させ、一時不良となる。
しかし、母親の励ましもあり、
大学に入り、演劇と脚本を勉強した。
母親だけは、彼を見捨てなかった。
でも、
母子家庭にのしかかる高額な大学の授業料。
やがて、その授業料の支払いが困難となる。
母子の希望だった大学を、
中退した。
貧乏な子は、夢を追いかける権利もないのか、そう思った。
使い果たした貯金。
親子は極貧生活を強いられた。
23歳になった彼は、
俳優になって母親を助けたいと思った。
頻繁にオーディションに望んだ。
しかし、顔面麻痺の彼はうまく笑える演技が出来ない。
「お前のような言語障害で、顔面麻痺なやつが、
役者になれるはずがない。」そう言われた。
オーディションに20回落ちた。
その間、生きていく為に、
どんなエキストラでもやった。
せりふが無い役は当たり前だった。
「言語障害で、ろれつが回らないお前が、
せりふをもらえると思うのか?
笑わせるなよ!」
ポルノ映画の端役もやった。
日銭を稼ぐ極貧生活。
将来の俳優を夢見て、色々なオーデションを受けた回った。
しかし、
次のオーデションで丁度50回目だった。
もう、これで落ちたらダメかもしれない。
自分の運命を呪った。
「神様、最後です、
どうか合格しますように。」
彼が呼ばれた。
「君、俳優になりたいの?」
「はい。」
「無理じゃない。
多分、どこ行ってもねぇ、
ロクにせりふも言えない。
それに、その顔じゃぁ」(笑)
不合格だった。
落ち込んだ。
しかし、ある日
彼は、テレビで、
絶対不利と言われた選手が、奇跡の大逆転で勝つ試合を見る。
自分もやってみたい。
その試合と、自分の今までの人生をかさねた。
自分の人生を逆転する成功物語を書いてみた。
その脚本を恐る恐るプロダクションに持っていくと、
先方は、その脚本を大いに気に入った。
脚本料としては破格の7万ドルという値段をつけて採用すると言ってくれたのだ。
7万ドルといえば、貧乏な彼にとっては喉から手が出るお金だった。
しかし彼は断った。
値段じゃなかったのだ。
安くてもいい、その代わり、
この脚本の主役にして欲しい。
映画制作サイドとしては、彼の風貌では売れないと思い、
脚本料を36万ドルまで出すので譲って欲しいと頼んだ。
しかし、俳優の夢を捨てきれない彼は、それも断った。
結局、脚本料は36万ドルではなく、2万ドルとなり、
この映画は、彼が主演となって上演される事になった。
この映画は、
無名の彼が主演という事で、
スターが出ない作品の為、低予算となり、
ほんの少しの映画館でしか上映されなかった。
つまり、
映画会社も、配給会社もまったく期待していなかったのだ。
でも、彼にとっては生まれて初めて、
自分が主演となった作品を、母親に見せる事ができたのだ。
それだけでも嬉しかった。
しかし、ここで奇跡が起きる。
ほんの少しの場所でしか上演されなかったこの映画が、
段々と話題を呼び始めたのだ。
「この映画を見て勇気をもらった。」
「感動しました。」などなど、
徐々に評判を呼び、
やがて、
是非この映画を見たいと言う人が、列をなすようになり、
彼が書き上げた作品は、
なんと!
見事、この年の第49回アカデミー賞で作品賞を獲得したのだ。
たったこの1作品で、国内外の映画賞を多数受賞する。
そして、主演と脚本を担当した彼は、
無名俳優から一躍スターに上り詰めたのである。
彼自身の体験を元にした、
そのボクシング映画
「ロッキー」
は、彼の名前
「シルヴェスター・スタローン」を
世界中にとどろかせたのだった。
当時、彼はこんな言葉を残している。
「人生ほど重たいパンチはない。
だが、大切なのは、
どんなに打ちのめされても、
こらえて、前に進み続けることだ。
そうすれば、
勝てる。 」
人は誰でも、
自分にしか書けない人生がある。
きっと貴方も、
シルヴェスター・スタローンの様に、
最低1作は、自分の歩んだ道で、
最高の作品が書けるだろう。
http://www.youtube.com/watch?v=WTvH4LJRcP8&feature=related
END.