もらわない という (きずな)





昔、


ある女子大生が、埼玉県からわざわざ来てくれた。






彼女は前年の冬に、


父親母親を、一瞬にして交通事故で失ってしまった。







その絶望感と将来への不安は、


他人には計り知れないものだろう。







そして、私の所へ来た時、


これから一人で生きていかねば生らないという重圧に負けそうになっていた







元気ない彼女に、


どんな良い未来を語ってあげても、


明るくなりそうにない雰囲気だった。








そんな12年前であった。


















今、彼女は、


自分で起業し、社長である。






大学を卒業後、大きな会社には入社せず、


自分が将来したいと思う会社に武者修行のつもりで入社。


8年修行した後に、自分の会社を立ち上げたのだ。



一人になっても、決して負けなかった彼女。


久しぶりに会った彼女は、


社長の貫禄自信をもっていた。








感心な事に、


彼女は、


12年前の私がアドバイスした事を今も実践しているという。











当時、私がしたアドバイスは、たいしたものでは無かった。







でも、


ワラをもつかみたい彼女には、


心の支えになったのかもしれない。









そう思うと、言って良かったと思った。












「貴方は、今一人になってしまい、


 淋しいかもしれませんね。


 でも、


 きっと、お父さんも、お母さんも、


 お兄さんも、


 一人残した貴方を、心配して見守っているはずですよ。」









普通、


残された家族が一人の場合、


法律的には、


財産は全て、独り残された彼女の物になる。


父親の持ち物も彼女の物となり、


母親の持ち物も彼女の物となり、


兄の持ち物の彼女の物となる。




でも、



実物はもらっても、気持ちではもらわない事を勧めたのである。




つまり、


財産は全て引き継いでも、




車は父親の物。のまま


キッチン用品や洋服、靴、バック等は、母親の物。のまま



オーディオ機器、帽子、自転車等は兄の物のまま








だから、


使う時は、



「父さん、車、借してね。」


「母さん、このバック、今日借りるよ。」


「兄ちゃん、オーディオ使わせてね。」




処分する時は、


「父さん、歯ブラシ私使わないから捨てるけど、許してね。」


「母さん、この服、私使わないから捨てるけど、許してね。」




まるで、


そこにまだ家族が生きているかのように、話しかけてから使うのです。







これは、


亡くなった後も家族として扱ってもらうと、


嬉しく思い、応援したくなる霊は多いのである。







彼女は、その日から、


忠実にそれを実行したという。









もし、そこに誰か居たら、


きっと彼女が一人芝居をしているように写っただろう。






しかし、


本当に、一人芝居だろうか。










その後、彼女は元気を取り戻し、


大学に入った時からの夢を、再び追い始めたのである。







彼女は、


毎日、家を出るとき、


こんな風だったという。








「父さん、今日も、車借りるね。


 母さん、靴借りたよ。


 兄ちゃん、留守番と犬頼むよ。


 行ってきます。」









想像するだけでも、



私には、そこに、



一人芝居ではなく、


娘を見送る家族が、見えるようだ。





いってらっしゃい


 気をつけてね。」






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