●自殺マンション
マンションなどで自殺事件が起こった場合、
そこに3つの悲しみが発生する。
1つは、自殺した本人の悲しみ。
2つ目は、残された家族の悲しみ。
そして、
残るひとつの悲しみ、
それが今日のお話である。
朝、事務所に来ると、
玄関前で渡河が待っていた。
「おはよう。」
「おはよう。
君が居るって言う事は、嫌な予感だなぁ」
「そう言うなよ。」
「今日は、何の用だ?」
「3日前の新聞読んだ?」
「どこを?」
「女性の大学院生が自殺した記事があったと思うんだけど
あれ、オレの叔父さんのマンションなんだ」
「ほう、それは災難だったね
じゃあ、また。」
「冷たいなぁ。
頼むよ、叔父さん困ってるんだ。」
「叔父さん、神奈川だっけ?
遠いなぁ。
じゃあ、また。」
「待ってよ、
オレの車で連れてくからさぁ
知り合いのマンションでもやっぱり自殺者が出たんだ
そしたら、その後、そのマンションに、
自殺した人の幽霊が出るという目撃情報が出回り、
マンションの住人が、次々と引越したりして、
結局、そのマンションは
数年後に取り壊しとなったんだよ」
「頼むよ。
叔父さんを助けたいんだ
力になってくれないか」
マンションなどで自殺事件が起こった場合、
そこに3つの悲しみが発生する。
1つは、自殺した本人の悲しみ。
2つ目は、残された家族の悲しみ。
そして、最後の1つは、
自殺現場を貸していた大家の悲しみだ。
大家の場合、金銭的な要因ではあるが、
大家にも、養うべき家族がいるのである。
「渡河、お前、いつもろくな話もってこないなぁ
それで?
その子、どうして自殺したの?」
「亡くなってしまったので、詳しい事は分らないんだけど、
当初、マンションには男女で入居したらしんだ。」
「でも、亡くなった時は、一人暮らしだったらしい。
1ヶ月前から彼女独りで暮らしていたようだ。
彼氏との別れが原因かもしれないな。」
「遺体は?」
「今は、警察の安置所だと思うけど、
神戸にいる実家が引き取るようだ、
ただ、部屋の荷物は始末して欲しいということなんだ。」
「始末して欲しい?」
「ああ、何でも彼氏と、
駆け落ち同然で、故郷の実家を出て来たそうなんだよ」
「それで、部屋の荷物は? どうしたの?」
「まだ、全部手付かずにしてあるよ。
叔父さんもこんな事初めてでアタフタしちゃって
オレんとこ電話して来たんだ。」
「どう思う?
このままじゃ、やばいだろ?」
「どうかな
確かに、自殺した人の霊は、成仏しにくいよ。
中には地縛霊として、
亡くなった場所に居ついてしまう場合も多いよ」
「だろう、それで困ってるんだよ。
叔父さんのマンションも、そうなってしまわないか心配なんだ」
「何か良い方法は無いか?
あっと言う間に成仏してもらう方法って無いの?」
「それは無いなぁ」
「じゃあどうしたらいい?」
「幽霊マンションになってしまうのか?」
「何か方法は無いのか? かや」
「落ち着けよ、渡河。
方法がまったく無い訳じゃないよ。」
「じゃあ、すぐに成仏できるの?」
「いや、自殺者は、すぐには成仏できないだろう。」
「じゃあ、どうするの?」
「うん。
そうだな、
幽霊マンションにしない為には、
幽霊が出ないようにしないといけない訳だな。」
「ああ」
「仕方が無い
こうなったら、
霊に移動してもらうしかないかな。」
「霊に移動してもらう?
どうやって?」
「とりあえず、現場に行って見てみよう」
気がすすまなかったが、
私達は、
渡河の叔父さんのマンションに向かう事になった。
不吉な、自殺マンションへと。
後半は、
明日のブログ(8本のアイスクリーム)に続く。