●物を盗む霊



ある日、


とても興味深い相談が舞い込んだ。












それは、


物を盗もうとする、というのである。

















物を盗む


はたしてそんな事があるのだろうか?
















電話をかけてきてくれた婦人も、


バカげた話をしてて申し訳ないという様な口調である。














電話での相談の概略はこうである。






2階建ての1軒屋でそれは起こった。




ちょっと広すぎる家には、夫婦2人で住んでいる。





ある日、


夫婦が1階の寝室で寝ていると、





夜中の3時頃であろうか、


2階の部屋で物音がする事に、婦人が気がつく。






怖くなり、夫を起こした。





ふたりは、耳を澄ましてみると、


たしかに小さな音が2階の部屋からする。






泥棒だろうか?









夫は台所から包丁を持ってきた。



婦人は携帯を持ち、いつでも110番できるようにと、


110を打ち込んで、後は押すだけにして右手持っている。





2人はゆっくりと、階段を登って、


音のする部屋へ。






まだ、かすかに音がする。


そこは、夫婦が趣味をする部屋だった。





開けるぞ!


夫がドアを開けると、


床に何かが落ちる音がしたという。




直ぐに部屋の明かりを点けると、

















そこには誰も居なかった。






窓も閉まっており


その窓にはがかかっていた。







いわゆる密室である。











夫婦が、気のせいだったのか?


と思った瞬間!






床の上にミニカーが転がっているに気がついたのだ。



そう言えば、暗闇で何かが落ちる音もしたな。


夫婦はぞっとしたという。




幽霊の仕業以外では考えられなかった。














そして、昨日。


また2階で物音が・・・・









今度はさすがに夫婦も動けずにいた。



2階に見に行くことはしなかった。



翌朝、





明るくなってから、2人で見に行くと、







やはり窓は鍵もしまっていた。




そして、



床には、またミニカーが転がっていたという。







夫婦は、


霊がミニカーを盗もうとしているんではないか?


という信じられない結論しか考えられなかった。という。



霊はミニカーを盗もうとして、霊は壁を通り抜けたものの


ミニカーは壁を通り抜けられず、床に落ちたのだろう。


と、そんな相談だった。
















この当時、私はまだ駆け出しで、


霊にとても興味あり、


はたして霊が本当に物を盗もうとするのだろうかと、


疑問に思い、



無謀にも、そのお宅まで行きましょうということになったのだった。













夕方、田園調布の駅で待ち合わせとなった。




待ち合わせている時、


私は後悔した。








今日電話で知り合ったばかりの人の家に行くのは、


ちょっと無謀だったな。




しかも、


幽霊がでるかもしれない得体の知れない家に行こうとしている。









しかし、そう考えている間にも、


ご主人が車で迎えに来られた。





紺色のベンツで来られるという事で、車はすぐに分った。





「どうも、かやです。」


「普通の格好されているんですね。


 もっと羽織ハカマとか鈴とか持っているかと思いました。」



「はい。ごく普通の人ですよ」







10分位走っただろうか、


銀杏並木らしい道を抜けて、何本か道を曲がると、



一軒の和風の家にたどり着いた。







大きく立派な家だが、


何となく淋しい感じだ。






庭には芝生。


玄関までは飛び石風の通路になっている。




2階の窓は全てカーテンが閉めてあるが、


誰かが私を見ている様な感じを受けるのは気のせいだろうか。





もう家の外には、夕闇が迫っていた。















まさか、この後、


霊と交信まがいの事までやることになろうとは、


この時の私はまだ、


想像もしていなかった。





後半は、明日につづく。