●古い表札



これは、


友人の知り合いが引っ越した時のお話である。











その知り合いを仮に、豊田さんとしておこう。





豊田さんは、車のディーラーをしていた。


商売も順調に行き、店も大繁盛。


そして、


もっと大きな家に買い、引っ越すことになった。







子供も出来、


今住んでいる所が手狭になったのも、


引越しの理由の1つだったという。














いままで苦労して大きくなった事務所



そんな家族をずっと見守ってきた家ともお別れです。




引越しには、友人も手伝いに行った。










食器などは高価なものあり、


一枚一枚丁寧に新聞紙に包んでダンボールに入れた。



友人が豊田さんに聞いた。




「この自転車はどうするの?」


「ああ、だいぶさびているからね。捨ててくよ


「あっそう、じゃあ、もらってもいい?」


「ああ、いいよ」



荷物整理も最後になった頃、


再び友人が尋ねた。





「この表札は持っていくんでしょ。新聞で包むの?」


「いや、考えたんだけど、


今度の家の玄関には合わないんだよね。」



捨てていくよ。」


「いる?」


「いらんわ、オレ、豊田じゃねえし」


そんな会話をしているうちに、家の中もからっぽになり、


いよいよ引越しです。





「なんか、かや先生言ってた?」



「ああ、太陽が昇っている間に、


 全ての荷物を新居に運び入れるたほうがいいって言ってたよ。」



「あっそう、じゃあ、もう出発した方がいいな」





4時間後、引越しは無事終了。




新居は、それはそれは豪華な3階建ての家だそうだ。


奥さんと子供も大よろこび。








しかし、


それから1年後、




商売が急速に傾き始め、


さらにそれから2年後、


結局、


その豪華な3階建ての家を手放す事になってしまったのです。






私は、


後からその話を友人から聞いて、


「えっ」


古い表札、捨てたんだ。」



「そうかぁ、どんな表札だった?」


「なんか古そうな表札で豊田って、苗字だけの表札だったよ」



「多分、先代が家を建てた時から使っていた表札なんだろうなぁ」





「捨てる時、お礼も言って無いんだろうなぁ」


「塩で清めて無いだろうし、ビニールにも入れてないだろうなぁ」



「まぁ、絶対関係しているとは言わないけど・・」と前置きして




「その古い表札を捨てたのは良くなかったなぁ」


「えっ、古い表札って、捨てたらダメなの?」



「いや、古い表札でも、2通りあって、


 今まで良くない運で発展しない家に居たのなら、捨てていいんだよ。


 でも、豊田さんみたいに、


 今まで順調に良くなっていった家の表札は捨てないで、

 

 新しい新居に持っていった方がいいんだよ。」




 良い運も引き継がれるんだよねぇ


 特に先代の家を建てた時の魂みたいな物も入っている場合もあるし、



 どうしても新しい玄関に合わないのであれば、


 どこか他の場所に飾っとけば良かったんだよねぇ。