●名も無い音楽家
どちかというと、歌手よりもバックの音楽家達は地味な存在です。
でも私は思う。
ピアノやバイオリンなどの楽器を弾く人達は、その存在だけで人の為にたっています。
音楽は言うなれば天使の翼です。
音楽家は聞く人に安らぎの翼を与えているのです。
地味な存在ですが、ある人は誕生日に弾いてもらったピアノが一生忘れられない思い出となり。
ある人は教わったピアノで自信がつき人生の逆境を乗り越える力となることでしょう。
だから、もし貴方が音楽を仕事としてやっているならば、
音楽家というだけで十分貴方は生きている価値があるのです。
人は切羽詰った時、どんな音楽を必要とするのか、
その答えは下の話の中にあるのかもしれません。
これは、ある名も無い音楽家の話である。
ある町に、親孝行のバイオリニストのジョージがいた。
「かあさん、オレ、今度仕事で世界をまわるんだよ」
「無理をしないでおくれよ」
母子家庭でもジョージは明るく育った。
「オレ、バイオリンしかできないけど、きっとみんなの心に幸せを届けるよ」
「旅から帰ったら、うんと親孝行するからね。かあさん」
仕事は船での世界一周だった。
しかし、船での扱いは2等船客扱いだった。
酔っ払いから、心無いやじも飛んだ、
「お前、へたなんだよ!」
「もっとハンサムな方いなかったのかしら!」
「もっと楽しい曲弾けないのか!やめちまえ!」
仕事を終わるたびにいつも思った。
「こんなオレで、みんなの役にたっているんだろうか?」
そんな夜中に、悲劇は起こった。
船が硬いものに衝突したのだ!
「船が沈むぞー!!」
船上は大パニックだった。
子供たちは泣いていた。
お年寄りも妊婦も死を覚悟した。
もうダメだ!
そんな時、船の片隅から音楽が流れてきた。
まさか、こんな時に、誰が?
振り向くと、そこには酔っ払いになじられてた一人のバイオリニストがいた。
ジョージだった。
不安な顔の群集の中で、唯一、穏やかな顔でバイオリンを弾いていた。
音楽はやがてハーモニーになった。
ジョージだけではなかったのだ、仲間のバンドメンバー全員が加わった。
彼らは避難するボートの順番には並んでいなかったのだ。
沈んでいくタイタニック号の船上で、バンドメンバーたちは、死ぬまで演奏を続けた。
人々がパニックにならないように。
みんなが落ち着いて行動できるようにと。
彼らの音楽はみんなにこう語りかけていた。
「大丈夫だよ、みんな助かるからね。」
拝啓、
「かあさん。帰れなくなりました。」
「みんなの為のバイオリンの仕事が入りました。
ごめんね。かあさん」