これは実話です。

思い出しながら書いていますので、違う部分もあるかもしれませんが、
亀が顔をさすっている場面は全国ネットのテレビで流れたので、
今もどこかの民放に保管されていると思います。



亀のトロ吉。


約40cmX約60cmと、亀を飼うには大きいとは言えない水槽に、
2匹の亀が飼われてました。


図体の大きい方がオス亀吉。小さい方がメス亀子と名づけられました。


亀子は活発で、ヤンチャ娘といったところ。
亀吉はおっとりしてて、どっしりタイプ。


餌をあげる時は、水槽をコンコンとたたてからあげました。


亀子は、水槽をコンコンとたたくと、餌が来ると思い、活発になったが、
亀吉は、いつも寝ているままだった。


亀子が腹いっぱい食べた頃に、
亀吉がやっと起き出してきて、残りの残飯を食べてるのが習慣となっていた。


日にちがたつにつれ、みんなは亀吉のことを、トロ吉と呼ぶようになっていた。


餌をやりながら、
「おいトロ吉、早く起きて食べないと、亀子に全部取られて、無くなっちまうぞ!」
「ったく! トロいんだから」


ある日、トロ吉の大好物を買ってきた。


大きい方をトロ吉の側に、小さい方を亀子の側に置いた。

しかし、トロ吉がもたもたしている間に、両方とも亀子に取られてしまった。
「トロ吉のバカッ!もう無いぞ、トロトロしてっから・・・」
トロ吉はそれでも、わずかに残ったカスを美味しそうに食べて満足そうだった



悲劇は突然やってきた。


ある日、仕事で3日明けて家に帰って来ると、亀子が死んでいたのだ。


その時の映像が全国テレビに流れて、多くの人を感動させ、涙を誘った。


なんと、トロ吉が、死んだ亀子の顔を、何時間も両手でなでていたのだ。
「亀子、お願いだ、目を開けて! 目を開けて・・亀子・・・」とでも言っているように
何度も何度も、亀子の顔をなでていた。


私には、亀も涙を流すんだと、目に光るものが見えたように思えた。


トロ吉は、生き返るはずもない亀子のそばを決して離れることはなかった。


テレビの放送でも上のようだとコメントしていた。


トロ吉!、おまえ!

おまえ、ホントは、トロ吉じゃなかったんだな!・・・・・ゴメン


亀は万年と言われているけど、その後、トロ吉は長くは生きなかった。


庭の片隅に、小さく2つ、仲良く並んだ墓がある。


一つは亀子のお墓。
そして、もう一つのお墓には、










愛吉と書いてある。