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旅行第2日:7月18日
※タングルウッド音楽祭のコンサート鑑賞

クーパーズタウンからのドライブで3時間も要して、今夜の宿泊地「バークシャー・トラヴェル・ロッジ」にチェックインしたのは18時過ぎ。インド系、はたまた中東系と思わしきフロントのおっちゃんに「タングルウッドまでどうやって行くのがいい?」と尋ねると、プリントアウトした案内図をくれました。

部屋に荷物を運んで、コンサートの予約Eメールの紙を取り出して慌しくふたたび運転。タングルウッドまでは順調に15分ほどで到着。

広大な原っぱの駐車場にクルマを停め、小さなゲートから入場。チケットはすんなり発券してくれました。

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すでに陽は傾きつつありましたが、広大な芝生の広場の中に屋根つきの野外音楽堂が鎮座しています。多くの人々がすでに来場していました。

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その美しい光景をみた瞬間、私は「ここにも天国がある」とつぶやきました。しかしそうした感慨は胃袋をみたすことができないので、広場の隅にある売店でピザを購入。食べきれない分は明日の朝食に回すことに。

土産のショップも魅力的で、自制心がなければ次から次へとシャツやらフーディを買いこんでしまうところでした。

さて、開演時間が迫ってきたのでそろそろ席へ。
今回のプログラムは、
1.「ティル・オイゲンシュピーゲルの愉快な悪戯」(R.シュトラウス)
2.「アメリカの歌」(コープマン)
3.交響曲第7番(ベートーヴェン)

もともと予定されていた指揮者はクリストフ・フォン・ドホナーニー。
この人の指揮では、1993年の5月にウィーンの国立歌劇場で「神々の黄昏」の素晴らしい公演に接したことがあり、昨年(2013年)の5月にエルサレムでイスラエル・フィルのコンサートにて10年ぶりに「再会」するはずでした。しかし、指揮者本人の体調不良で別の指揮者に交代していたのです。そして今回も、家族の健康問題とのことで、私がドホナーニーの演奏に再び立ち会うことは叶わないことが判明したのは1週間ほど前のこと。

そのためタングルウッド行きをためらったのですが、結局思い直して訪れることにしたのです。

しかしその決定が正解だったことは、コンサートがはじまった瞬間に確信しました。ボストン交響楽団の演奏も、指揮ぶりも見事なものだったからです。

周囲の椅子席には年配の人たちが多数。隣席の年配のご夫婦と話が弾みましたが、一曲目が終わり「あなたこの曲今まで聞いたことがある?」と尋ねられ、「あります」と答えると「どこで?」と聞かれたので、「1992年のフランクフルトのことなんですよ」と答えると、「あなたは色々なところに聴きにいっているのね」と驚かれたので、やや恥ずかしくなった私は「いや、幸運にもたまたま機会に恵まれたのです」と答えました。

このご夫婦はタングルウッドから100キロほどのレイク・ジョージという湖畔に住んでいて、奥さんは元教師。毎年ここに通うのが楽しみだといっていました。小澤征爾のチャイコフスキー「1812年」は素晴らしかった、との思い出の披露も。野球の話題になって、ご主人から「タナカをどう思う?」ときかれたので、「レッドソックス・ファンとしては、すべてのヤンキース選手っを嫌うべきとされているので....」というと二人は大笑い。

二曲目の「アメリカの歌」はバリトンのトーマス・ハンプソンが本当に見事。はじめて耳にする歌曲でしたが、終演と同時に多くの人々がスタンディング・オベーション。ハンプソンは何度もカーテンコールに応えていました。

休憩時間中に屋根の外に出てみると、日没後で相当冷え込んできた大勢の人々が毛布にくるまりながら寝転んだり、椅子に座ったり。日本で言えば軽井沢のような気候でしょうか。

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さて、最後のベートーベンの7番は圧巻。力強いリズムが強調され、特に最終楽章ではクレッシェンドしながら、この曲の特徴である「舞踏」的な要素をふんだんに強調する、エネルギー満点の演奏。最後の音が終わった瞬間に、私も含め聴衆は総立ちのスタンディング・オベーションで賛辞を送りました。

拍手の最中にお隣ご夫婦は退席。握手をして別れます。私は最後の拍手が鳴り止むまで10分してから退場。実によいコンサートでした。

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ところが人々の流れに沿って出口に向かうと、どうも私がクルマを停めた場所とは違うようです。ふたたび元に戻り、あちらでもない、こちらでもない、と右往左往していると、係員の人が「迷ったんでしょ」と声をかけてくれました。

ひょっとして一晩中クルマがみつからなかったらどうしよう、という不安さえ脳裏をよぎっていた私は、彼のアドバイスで駐車場にたどり着くことができて一安心。以前駐車場で迷子になった東京ディズニーランドでの体験を思い出しながら。

さらには坂道が夜露で濡れていたので、タイヤが空転し、ひょっとして脱出不能に?とヒヤリとしましたが、斜めへの発信を繰り返して無事抜けられることができました。

ロッジにたどりついたのは23時ごろ。充実するも長い一日の感慨にひたる間もなく、まさにバタンキューの体で眠りについたのです。

(つづく)