The Beatles Lover No.5 ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ

人気ラジオ番組が、読んで楽しめるテキスト版になりました。

 

NEW!ビートルズを愛するすべての人に!ゲストの米村幸雄さんの研究成果を満載

 

ディープなファン目線、そしてサウンドメーカー目線でビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していく人気ラジオ番組「The Beatles Lover No.5」。

杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。

382回【2024年7月20日〜26日】の放送は、『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』の主な執筆者の一人である米村幸雄さんをゲストに迎えてお送りします。

 

 

【サミー】米村さんは鳥取にお住まいですよね。海がある…。

【幸雄】海はありますけど、砂丘の方が有名かもしれませんね。

【裕】僕は鳥取砂丘には行ったことがないんです。

【幸雄】ぜひいらしてください。ただ、この時期は熱中症に気をつけて欲しいです。ドクターヘリが呼ばれたりする。暑いところに行くという準備をして来ていただきたいです。

【裕】サミーさんは米村さんに会いに鳥取に行ったんですよね。

【サミー】昨年の5月でしたが、砂丘はすごく暑かった。

【裕】ラクダもいるんですよね。

【幸雄】観光上、イメージ的にラクダもいた方が良いだろうということでしょうね。

【サミー】写真撮影用にいました。ラクダに乗って砂丘を歩けるのかと思ったら、またがって写真を撮影するだけでした。杉田さんも私も海なし県の生まれなので、海への憧れがある。

【裕】魚も美味しいんでしょう。行ってみたいですね。

【サミー】という訳で今週は『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』はどんな本なのか?読みどころは?といったお話を米村さんに伺っていきたいと思います。

オープニングテーマは杉田裕の「ビートルズなんて誰も知らない」

 

『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』の特徴とは

【サミー】2009年に初版を発行し、名著とも言われた『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』が、このたび新版として生まれ変わりました。

【裕】今回の新版で米村さんの担った役割は?

【幸雄】サミーさんのしもべのようにこき使われて…(笑)。

【サミー】そんなことないですよ〜(笑)。

【幸雄】それは冗談として…サウンド解説の部分を主に担当しました。土台となる原稿を書いて、それをサミーさんに送って構成してもらうという役割でした。

【裕】大元となる情報は米村さんから出ているんですね。

【幸雄】そうなります。

【サミー】今回の新版と、2009年の旧版との違いは?

【幸雄】旧版の発行から15年経過していますが、その間にオフィシャルの情報がたくさん出てきました。2017年の『サージェント・パパー』から始まって『リボルバー』までスーパーデラックス版が出ましたが、その情報はもちろん反映しています。新『赤版/青盤』も。また、映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』のBlu-rayも出ましたが、その中にオリジナルのモノも収録されていました。それを解析すると面白いことが見つかったので、その情報も足しています。

【サミー】新しい事実が解明された最近の事例をご紹介ください。

【幸雄】映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』で使われたオリジナル・モノ・バージョンは、レコードのモノと同じと思っている方も多いのですが、違っているんです。

【サミー】なぜ違う?

【幸雄】ビートルズがライブ演奏する映画ですから、たっぷりエコーの付いた音が入るのはおかしいと、監督のリチャード・レスターが考えたのでしょう。

【裕】なるほど。

【幸雄】そこで、ジョージ・マーティンが映画の撮影前に完成させた音を監督が却下して、ボーカルのエコーを削ることになったのでしょう。

【裕】映画監督とマーティンは考え方が違っていたんだね。

【幸雄】もっと驚いたのは「キャント・バイ・ミー・ラヴ」。レコード用のモノにはハイハットが足されていましたけど、映画用にはそれとは違うドラムスが入っている。誰でも叩けそうな4ビートの演奏です。

【サミー】誰の演奏でしょうか?

【幸雄】特定はできませんけど、ハイハットの方はリンゴで、映画用の4ビートは別の人、例えばノーマン・スミスかもしれません。そうしたことまで分かって、当時の状況がもっと鮮明に見えてきた。

【サミー】ジェフ・エメリックはノーマン・スミスが叩いたと受け取れる発言をしていました。

【幸雄】彼の記憶なのでどこまで信用するかなんですけど、他に候補者もいませんからね。『全曲バイブル新版』では、ジェフ・エメリックを信用することにしました。

【サミー】その場にいた人の証言は大事ですよね。もちろん人の記憶ですから薄れていったり、変わっていくこともありますけど。

 

 

【裕】ジョンとポールも、作曲の記憶が曖昧で食い違っていることもある。

【サミー】そういうこともありますね。でも、立場を変えてみれば、そこまで大きな矛盾はない。

【幸雄】書かれた情報であれば、本の読み方、行間の読み方によるのかもしれません。発言者のニュアンス、読み手の受け取り方なども影響する。

【サミー】ジョンは最初のアイデアを誰が出したのかという観点で語っている。一方、ポールは完成までにどのくらい貢献したのかを言っている。このあたりのことは『全曲バイブル新版』に米村さんが書いていますね。例えばジョンの曲でも、ポールは7:3でジョンの曲という言い方をする。

【幸雄】そうですね。

【裕】さて、そろそろ曲を聴いてみませんか。

【サミー】『ア・ハード・デイズ・ナイト』で面白いエピソードがあれば…。

【幸雄】映画の中では使われていませんが、「ぼくが泣く」(I'll Cry Instead)。これはアルバムB面に入っていますが、ジョンは映画用に作った。だけど、監督に却下されたということになっている。おそらくジョンは撮影前にデモテープを作って監督に聴かせていたと思うんですけど、監督は「キャント・バイ・ミー・ラヴ」の方を気に入って使ったという話も残っている。

【裕】ふむふむ、そうだったんだ。

【幸雄】ただし、不思議なことに、この曲のロング・バージョンが存在している。

【サミー】アメリカのモノに収録されていますね。

【幸雄】録音時期は映画公開の1ヶ月前。ロング・バージョンをなぜ作ったんだろう?映画用に作った?違いは分かりますけど、理由は想像もつかない(笑)。今後、いろんな方に研究していただきたい。

【サミー】リスナーの方から仮説をお寄せいただけると嬉しいですね。

 

60年目の「ア・ハード・デイズ・ナイト」間奏の謎を楽しむ

【サミー】ビートルズファンからの反響が大きい『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』ですが、読みどころは?

【幸雄】ディープなファンの方だけではなく、初心者の方にも読みやすい本になっていると思います。

【サミー】そこはだいぶ意識しましたよね。

【幸雄】本文の中には難しい音楽用語などが出てきてしまうので、それとは別にコラムを用意して、押さえて欲しいポイントを散りばめています。

【裕】参考書みたいですね(笑)。

【幸雄】初心者の方は、まずはコラムを読んでいただいて、好きな曲の解説を読み進めるような使い方が良いのでは。

【サミー】逆にマニアの方、ディープなファンの方は、どこに注目して欲しいですか?

【幸雄】仮説を2つ提示している場合があります。その例のひとつが、「ア・ハード・デイズ・ナイト」の間奏部分。ハーフスピード録音で、ジョージのギターとマーティンのピアノが入っているというのが一般的に知られていますよね。ただし、実際にハーフスピードで聴いてみると一番大きく聴こえているのはベース。ピアノでは絶対出せないスライドやハンマリングを入れることができて音の低い楽器となると、ベースギターしかない。だから、基本的には3人でやったんだろうとなる。

【裕】ふむふむ。

【幸雄】それとは別に、ジョージが通常スピードで弾けないフレーズを、なぜここに入れたのか?

【サミー】それが一番不思議です。

【裕】弾けないって決めつけてしまって良いのだろうか(笑)。

【幸雄】ハーフスピードで録音したということは、そういうことでしょう(笑)。

【裕】確かにね(笑)。

【幸雄】自分たちは演奏できないけど、そのフレーズを入れたいという気持ちを優先していたのでしょう。

【裕】そのフレーズの出どころは?

【幸雄】ビートルズと同じような経路をたどったヤードバーズなのでは、という仮説です。彼らは前年の秋に3曲デモ録音をして、そのテープを持ってデッカのオーディションに行って落ちるんです。それを拾ってくれた会社がEMI。

【サミー】2年前のビートルズと同じだ。

【幸雄】そのデモテープはEMI経由でビートルズも聴いていたのかもしれない。その中の一曲「ハニー・イン・ユア・ヒップス」のイントロが、まさに「ア・ハード・デイズ・ナイト」間奏のフレーズなんです。

【裕】そうなんだ。

【幸雄】それを弾いていたのがエリック・クラプトン。いろんな人間が関連してくる。

【サミー】「ハニー・イン・ユア・ヒップス」を聴いていただきましょう。

 

 

【幸雄】似てるというか、冒頭の3小節目までは全く同じなんです。

【裕】ホントですね〜。「ジョージこれ弾けないか」って誰かがリクエストした。

【幸雄】そう思いますね。演ってみたけど弾けないので、ハーフスピード録音に落ち着いたって考えるのが、一番しっくりくる。

【サミー】その無茶振りをしたのは誰なんだろう?

【幸雄】それを想像して楽しんでいただくのが良いですね(笑)。

【裕】レコード発売後のライブでもこの曲を演奏していますよね。ジョージは猛練習したのかな?

【幸雄】映画の公開は64年7月ですけど、その頃にBBCのラジオでライブが放送されました。ライブといっても、当時はスタジオで録音したものを放送していたんです。その音源を聴くと、モノラルレコードの間奏に差し替えていることが分かる。

【裕】えっ、そうなの!?

【幸雄】テープを編集しています。間奏の7小節半くらいは、レコードの音を入れ込んでいる。

【サミー】ライブを放送しますと言っておきながら、レコードの音を入れ込んだ編集バージョンを流した。

【幸雄】それが7月中盤くらいの状態です。そのあとのライブでは、ちゃんと演奏している。だからジョージは猛練習したのでしょう。映画の主題歌でヒットしていたので、ライブで演らないわけにはいかない。

【裕】クラプトンに弾き方を教えてもらいに行ったとか?

【サミー】その辺りから二人は仲良くなったとか?

【幸雄】ゲストでクラプトンを呼んできていたりして(笑)。想像すると面白いですよね。

【サミー】ラジオ収録の時はレコードにピタッとハマるようにテンポを合わせたのかな?

【幸雄】間奏の中身を入れ替えていますから、同じようなテンポだったら違和感はないかも。ラジオで一回流すだけだし、リスナーも気付かないでしょう。

【裕】多少のテンポの違いはあっても、そうかもしれない。

【幸雄】その放送がエアチェックされて、いまだに音源が残っていることが不思議です。

 

『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』が全面刷新された理由は?

【サミー】旧版とは違い、米村さんは『ザ・ビートルズ全曲バイブル新版』では全面的に執筆にかかわることになりました。

【幸雄】旧版でキーマンだった鳥居一希さんが亡くなられて、新版は出ないだろうと思っていました。ところが、サミーさんの熱意で作ることになりましたけど、当初は前回と同じようにデータだけ提供して誰かに文章を書いてもらおうと思っていたんです。変更すべき点をメモしていたら、自分で書いた方が早いのではということになった。

【裕】それで新しいものが生まれた。

【幸雄】内容を少し変えた改訂版ではなく、全く新しいものに変わった新版なんです。

【サミー】全面刷新とお考えください。

【裕】僕もこの番組で使わせてもらっています(笑)。

【サミー】A4判、400ページにわたって内容がぎっしり詰まっていて長〜く使えます。

 

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