The Beatles Lover No.5 ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ
人気ラジオ番組が、読んで楽しめるテキスト版になりました。
ビートルズを愛するすべての人に!最新の画期的サウンド研究決定版!
ディープなファン目線、そしてサウンドメーカー目線でビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していく人気ラジオ番組「The Beatles Lover No.5」。
杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。
402回【2024年12月7日〜13日】の放送は、ビートルズ研究家の藤本国彦さんをゲストにお迎えして、2024年にリリースされた映像、出版を振り返ります。
オープニングテーマは杉田裕の「ビートルズなんて誰も知らない」
メイ・パンから見た『失われた週末』とは
【サミー】まずは、2024年に発売されたビートルズ関連の映像作品を振り返ってみたいと思います。
【裕】藤本さんは数多くの映画の字幕監修をされていますよね。
【国彦】最近は映画の仕事が増えています。その影響か、本は少し減りました。本を作る方が大変なので、仕事としての負荷はちょっとだけ減ったかな?(笑)。
【サミー】劇場で公開されるビートルズ関連の映像作品が増えた印象があります。まず今年は、ジョン・レノンの『失われた週末』がありましたよね。これはメイ・パン側からの視点でこの時期のジョンを描いた作品でした。
【国彦】ジョンがヨーコと別居した時に、ヨーコの指示で当時のアシスタントのメイ・パンに、「ジョンはあなたのことが好きなのよ」って言ってジョンに押し付けて…。
【サミー】ジョンにあてがった(笑)。
【国彦】そこから二人でロサンゼルスやニューヨークに行った時期の映像で構成されています。
【裕】ヨーコが仕組んだってこと?
【国彦】そういうことになりますね。メイ・パンからすると、ジョンとヨーコは自分の上司夫婦ということですよね。ヨーコからすれば、全く知らない女性と知らないところに行ってしまうのがイヤだったんでしょうね。ヨーコの作戦はうまく行って、メイ・パンもジョンのことを好きになってしまうから、面倒なことになってきて。しかもメイ・パンがシンシアとジュリアンを呼んだり、ポールもヨーコのメッセージを伝えに来たり。ジョンとポールの再会は良かったんですけど、こうして振り返ると、みんなヨーコの掌の上で踊っている気がしないでもない。良くできたドキュメンタリー作品でした。
【サミー】この『失われた週末』関連で一曲聴いてみたいと思います。
【国彦】ジョンがプロデュースした、ミック・ジャガーの「トゥ・メニー・コックス」(Too Many Cooks)をお願いします。1973年10月に『マインド・ゲームス』が出て、その後別居が始まりましたけど、12月にレコーディングしています。バックはニルソンやボビー・キーズ、アル・クーパー、ダニー・コーチマー、ジャック・ブルース、ジェシ・エド・デイヴィスなど。
【サミー】錚々たるメンバーですよね。
【国彦】ローリング・ストーンズは73年8月に『山羊の頭のスープ』をリリースした後、『イッツ・オンリー・ロックンロール』のレコーディングを11月に開始していますけど、その翌月にジョンとミックが録った曲です。二人が一緒にやるのは68年12月のロックンロール・サーカス以来5年ぶり。ジョンのプロデュース、ミックのボーカル、豪華なメンツのバックで仕上げています。
デビュー前のビートルズを描いた2つの映像作品
【サミー】『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』という作品も公開されました。
【国彦】これはデビュー前後のビートルズを描いたドキュメンタリーです。これから成長する時期ってやっぱり面白くてね。ピート・ベスト、アンディ・ホワイト(62年9月11日の「ラヴ・ミー・ドゥ」セッションドラマー)、ノーマン・スミス(『ラバー・ソウル』までのレコーディング・エンジニア)といった人たちの回想を含めてビートルズを描いています。ノーマン・スミスは「バンドとしては大したことはないけど面白い奴らだ」って言っていたり。
【サミー】彼らはユーモアが面白かった。
【国彦】ピート・ベストがクビになってしまったあたりの悲しい話も含めて描いた作品です。
【サミー】藤本さんが字幕の監修をされていますが、監修という作業はどんなことを行うんですか?下訳が出てきて、それをチェックしていく?
【国彦】下訳というよりは、ちゃんとした翻訳が上がってきて、それに対して茶々入れるというか(笑)。事実関係はもちろん、人名などのカナ表記のチェックをします。あとは言い回しの提案ですね。
【裕】例えば、それはどんなこと?
【国彦】ジョンなら「僕」よりも「俺」の方が良いんじゃないかとか。語尾も丁寧すぎない物言いとか。そういうところにも気を回します。あくまで提案をするという役割ですね。
【サミー】なんとなく藤本さんカラーを感じる場面もありますよね。
【国彦】ゴリ押しはしませんけど(笑)。
【サミー】ポールの『ワン・ハンド・クラッピング』も劇場公開されました。
【裕】これを待っていた方が多かった?
【国彦】よくぞやってくれました。ポールの思い入れの強さですよね。ウイングスのメンバーが二人抜けたあと、これからどうするっていうところでの作品です。先が見通しづらい状況で、それでも新しいドラマー(ジェフ・ブリトン)とギタリスト(ジミー・マカロック)が見つかって、ツアーリハーサルを兼ねてアビイ・ロード・スタジオで、エンジニアにジェフ・エメリックを迎えて演ってみようと。非常に意気込みのある内容になっています。
【サミー】写真展も良かった。ポールのファンは大喜びだった。
【国彦】ポールが撮るので、みんな表情が良い。
【裕】東京の後、大阪でも公開されていますね(〜2025年1月5日)。
【サミー】『NO ハンブルク NO ビートルズ』もあります。
【国彦】2024年12月6日から公開される作品です。『ジョン・レノン〜音楽で世界を変えた男の真実』という作品がありましたけど、その監督ロジャー・アップルトンの新作映画です。デビュー前、ハンブルクでいかにビートルズは腕前を上げたかという観点で描いています。監督の絵の使い方が非常に良いです。ハンブルク時代のビートルズを描いた新作の映画が公開されるというのは、意味のあることだと思います。
【サミー】では、この映画がらみで一曲選んでいただけませんか?
【国彦】「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・クライ(オーバー・ユー)」(I’m Gonna Sit Right Down And Cry (Over You))をお願いします。ビートルズがデビューした直後、1962年12月にハンブルクのスタークラブで演奏した曲です。ラジオで聴いていただくのは63年にBBCのラジオで演った音源になりますけど。イントロのリンゴのドラムが聴きどころですね。
「ラヴ・ミー・ドゥ」はひとことでは言い表せない難しい曲
【サミー】今年もたくさんのビートルズ関連の出版物が刊行されました。
【国彦】今年は多かったですよね。
【裕】藤本さんの『ビートルズ216曲全ガイド』も今年の発行でした。
【国彦】213曲に「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」、最後の新曲とポールが言っている「ナウ・アンド・ゼン」を加え、公式曲に格上げしようということで216曲にしました。これで4回目の改訂版ですけど、最初は柔らかめだった書き口も真面目な感じに直したりしています。そしてなんと言っても誤植が直るというのが良いですね〜(笑)。誤植ゼロの本を作ったことないです(笑)。
【サミー】全曲ガイドという切り口では『ザ・ビートルズ全曲バイブル』もありました。ここで一曲聴いてみたいのですが、「ラヴ・ミー・ドゥ」はいかがでしょうか?
【国彦】良いですね。「ナウ・アンド・ゼン」のB面が「ラヴ・ミー・ドゥ」というのもとても良かった。ああいうセンスが良いですよね。
【サミー】全曲ガイドのような本を作ると、必ず一曲目は「ラヴ・ミー・ドゥ」になりますけど、どんな風に書き始めるか悩むところでもあります。
【国彦】「ラヴ・ミー・ドゥ」捉えどころのない、表現が難しい曲なんです。「ひとことで言って変な曲」って褒めたつもりで書いたら、厳しい意見を頂いたこともありました(笑)。
マルの評伝、ポールの写真など盛りだくさんだったビートルズ関連本
【サミー】自伝・評伝としては『マル・エヴァンズ もうひとつのビートルズ伝説』がありました。800ページの大作です。お読みになりましたか?
【国彦】まだまとまった時間が取れていなくて…💦。
【サミー】『ポール・マッカートニー写真集~1964年、僕たちは台風の中心にいた~』も出版されました。他には『アンダーグラウンド・ビートルズ』も。
【国彦】これは本橋信宏さんとの対談をもとに解説した本です。ビートルズの裏の世界というか、知っているようで知らないこと、知っているつもりでいるけど実はこうだったというようなことを、二人で軽やかに喋った本です。
【裕】トリビア系と言って良いのかな。
【サミー】他に藤本さんが手がけられた本として『アンド・ザ・ビートルズ vol.5 バッドフィンガー』がありました。いま、なぜバッド・フィンガー?
【国彦】このシリーズの二冊目にメリー・ホプキンを作ったんです。世界的にちゃんとまとまった本がないので、作りたかった。その時の編集後記に「次はバッド・フィンガー」って書いちゃったんです(笑)。ビートルズのオリジナルアルバムのリミックスが出てくると、そちらが優先になるのでなかなか手をつけられずに、4年越しくらいになりました。バッド・フィンガーはオタクの皆さんは細かいので、ちゃんとしたものを作ろうと頑張りました。クリス・トーマスのインタビューとか、新田和長さんや川原伸司さんにもご協力いただいたりして、良い本に仕上がったのではないかと思います。
【サミー】バッド・フィンガーを一曲聴いてみたい。
【国彦】性格が捻くれているのでメジャーではない曲なんですけど、ジョーイ・モーランドがリードボーカルをとっている「アイシクルズ」(Icicles)をお願いします。
エンディングテーマは杉田裕の「絶望してる暇はない」
オープニング/エンディングテーマ曲を収録!
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