The Beatles Lover No.5 ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ

人気ラジオ番組が、読んで楽しめるテキスト版になりました。

 

 

ディープなファン目線、そしてサウンドメーカー目線でビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していく人気ラジオ番組「The Beatles Lover No.5」。

杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。

349回【2023年12月2日〜8日】の放送は、藤本国彦さんをお迎えして「ナウ・アンド・ゼン」を特集します。

 

 

【サミー】出ましたねー。

【裕】新曲「ナウ・アンド・ゼン」。

【サミー】今週は藤本国彦さんをお招きして、「ナウ・アンド・ゼン」についてたっぷりと語っていきたいと思います。

【国彦】よろしくお願いします。

【裕】お久しぶりです。1年ぶりになりますね。

【サミー】お越しいただきまして、ありがとうございます。曲を聴く前と後ではどんな風に心境が変化しましたか?

【国彦】ジョンのピアノデモは前に聴いていましたけど、暗い曲だなっていう印象でした。「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」はデモからビートルズ版になった時に、ああ変わったなって感じましたよね。だから今回も、ビートを効かせてビートルズ風のものにはなるだろうと思っていました。そういう気持ちで臨みました。

【裕】なるほど。

【国彦】リリース版を聴いてみたら想像の範囲内でした。だから、すごい感動があるというわけでもなかった。「フリー・アズ・ア・バード」は面白いなーと思いながら聴きましたけど、「リアル・ラブ」はそこまでではなかった。今回の「ナウ・アンド・ゼン」は「リアル・ラヴ」と同じような見え方、聴こえ方でした。

【裕】僕はジョンのデモは聞いたことがなくて、リリース版を初めて聴きました。そこで、最初のジョンの声がちょっと引っかかったんです。加工しすぎているのかなっていう印象を受けました。YouTubeでプロモビデオを見たら、聴こえ方が違って納得しました。曲自体の良い悪いは人によって受け止め方があると思いますが、僕はそれなりに受け入れることができた。

【サミー】僕は、親戚のおじさんが遠くで頑張っているんだけど、歳も歳だし、ヒヤヒヤしながら見ていたっていう感じでした。曲を聴いた時も、みんな何て言うのかなー、なんて心配したりして。まるで身内になったみたいで、愛に包まれた感じでいました。

 

オープニングテーマは杉田裕の「ビートルズなんて誰も知らない」

アンソロジー・プロジェクトと「ナウ・アンド・ゼン」

【裕】「ナウ・アンド・ゼン」は「フリー・アズ・ア・バード」、「リアル・ラヴ」に続くアンソロジー・プロジェクトの一環として作られたと考えて良いのでしょうか?

【国彦】1994年に「フリー・アズ・ア・バード」、95年に「リアル・ラヴ」をレコーディングしています。このもう少し前にヨーコさんがジョンのデモの中から、これらに「グロー・オールド・ウイズ・ミー」を加えた4曲を選んで、そのカセットテープをポールに渡しました。ジョージとニール・アスピノールが、ジョンのデモ曲にビートルズのメンバーが追加録音できないだろうかと、ヨーコさんに打診したことがきっかけだったみたいですね。その流れで94年1月の「ロックの殿堂」授賞式(ジョンがソロ・アーチストとして受賞)の際に、そのカセットをポールに渡したようですね。カセットには「For Paul」と書いてあったけど、ヨーコさんが書いたのかな?

【サミー】ジョン自身が書いたのではなさそうですよね。

【裕】なるほどー(笑)。

【国彦】ヨーコさんが選んだ4曲であるというのがポイントですね。「フリー・アズ・ア・バード」を94年にやってみた。そしたらうまくいった。この時はジェフ・リンが共同プロデュースしていますよね。

【裕】ふむふむ。

【国彦】翌年、アンソロジーのシリーズをCDで3枚出すことになって、「リアル・ラヴ」よりも先に「ナウ・アンド・ゼン」に取り掛かったようですね。そしたらジョージがこの曲は良くない、ジョンの声も悪いし、音も悪いと言った。既にそこで、曲の構成を変えた方が良いという話が出ていたようですね。ジェフ・リンは午後半分くらいしか演らなかったと言っているし、早々に「ナウ・アンド・ゼン」を止めて「リアル・ラヴ」に取りかかったという流れのようです。

【サミー】では、まずアンソロジー・プロジェクトで最初にリリースされた「フリー・アズ・ア・バード」を聴いてみたいと思います。

 

「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」

【裕】アンソロジー第二弾はどんな感じだったんでしょうか?

【国彦】翌年95年に「リアル・ラヴ」をレコーディングして、『ザ・ビートルズ・アンソロジー2」に収録されました。ただ、メンバーも「フリー・アズ・ア・バード」ほどは上手くいかなかったと言っていますね。まあ、そこそこの出来だったのだろうと思います。「リアル・ラヴ」が好きというファンも多いですけどね。

【サミー】「リアル・ラヴ」はジョンが亡くなった頃の『ダブル・ファンタジー』のバンドでやったら良かったかもしれない。ビートルズとしてはイマイチだったのかな…。

【裕】「フリー・アズ・ア・バード」の方が、ビートルズらしいですね。

【サミー】では、96年発売の「リアル・ラヴ」を聴いてみましょう。

 

ポールの執念が実現させた「ナウ・アンド・ゼン」

【裕】シングル・プロジェクトとしては「リアル・ラヴ」で終わったかに思われたのですが、なぜ今回、「ナウ・アンド・ゼン」が発売されることになったのでしょうか。

【国彦】一言で言うとポールの執念でしょうね。

【サミー】執念かー(笑)。

【国彦】ジョンで始まったビートルズを、ポールは自分の手で終わらせたかったのではないかと思います。ポールは、2000年代前半から「ナウ・アンド・ゼン」をやりたいという発言を時々していたんですよね。ジェフ・リンのドキュメンタリーでもやると言っていたし。虎視眈々と狙っていたのではないでしょうか。ジョージは亡くなってしまって、とにかく完成させたいというポールの思いが強かったのでしょう。

【裕】ポールがアナウンスしたのは、今年の6月頃でしたよね。

【サミー】あれは、ちょっとフライング気味でしたね。

【国彦】AIと言う言葉が一人歩きして、ジョンの声をどこからか持ってきたのではないかとか、ジョージはどうするんだとか言われてしまいましたよね。今回の12分の映像は、その釈明映像っぽいですよね。

【サミー】ポールはこの曲のポテンシャルを感じていたのでしょうかね?

【国彦】うーん…。まあ、ジョージがレコーディングに入っているし、ビートルズの最後としてはこれしかないだろうと。「グロー・オールド・ウィズ・ミー」は、アンソロジーの時にやっていないと思うのでね。

【裕】曲の音の中にジョージのプレイが入ってる?

【国彦】入っています。ギターのカッティングが聴こえます。でも、スライドギターは、ポールによるなんちゃってスライドですからねー。ポールが良いと言えば良いのでしょうかね(笑)。

 

 

【サミー】デモにあったBメロがなくなっていますけど、杉田さんはどう思いますか?

【裕】あのBメロは、ちっと中途半端だなと思います。Aメロからの流れ、Bメロからサビに行くインパクトが薄いなっていう印象です。Bがなくなったことで、AメロのAmからサビのGに転調することになりましたけど、GのあとのBmが劇的な感じです。もしもBメロがあったら、そうはならなかった。

【サミー】AmのAメロからF#mのBメロに転調して、サビでG・Bmと行く。ジョンらしいといえばジョンらしい構成だった。でも、Bメロは消化不良というか…。

【裕】でも、Bメロのコード進行を使って間奏をやっている。

【サミー】キーは転調していませんけど、その進行にはなっていますよね。

【国彦】あと、歌詞の問題もあります。「I Don't Want To Lose You」、「Sweet Darling」の部分はヨーコさんに向けたものでしょう。そこをカットしないと、ポールやリンゴ側からするとちょっと…という感じなのでね。

【サミー】ジョンのボーカルが、いつの間にかポールにするっと入れ替わるところもある。すごく上手くやっている。

【国彦】ピーター・ジャクソンのミュージックビデオが良すぎるくらいのできだった。あれで曲の印象が良くなったという人が多いのでは?

【裕】僕は本当にそうでした!

【サミー】ピーター・ジャクソンはツボがわかっている。

【国彦】ジョンのユーモアとかね。すごいと思います。

 

エンディングテーマは杉田裕の「絶望してる暇はない」

 

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