The Beatles Lover No.5 ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ

人気ラジオ番組が、読んで楽しめるテキスト版になりました。

 

ディープなファン目線、そしてサウンドメーカー目線でビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していく人気ラジオ番組「The Beatles Lover No.5」。

杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。

335回【2023年8月26日〜9月1日】の放送は、アルバム『ヘルプ!(Help!)』をご紹介します。

 

 

【サミー】先週に引き続いて素敵なゲストをお迎えしています。

【裕】JAYWALKのドラマーであり、J-TAGIRI with 久留里mountainboysのボーカリスト、田切純一さんです。

【田切】こんにちは。よろしくお願いします。

【裕】JAYWALKの中ではビートルズ好きな先輩なんですよ。年上なんですけど、でリアルタイムでビートルズと共に歩んできたそうです。

【田切】最初に買ってもらったレコードは三波春夫の「東京オリンピック音頭」ですけどね(笑)。その後、中学生になってからは、お小遣いを貯めてシングル盤をリアルタイムで買うようになりました。「ペイパーバック・ライター」と「レイン」のカップリングが、初めて買ったシングル盤だったと思います。

【裕】今でも持ってる?

【田切】持ってますよ。千葉の駅ビルにあったレコード屋さんは、公式発売日の前の日に店頭に並ぶんですよ。その情報をつかんで、1日前に行ってみたら本当にあったんですよ。それで購入して、家に帰って小さなポータブルレコーダーで聴いてました。もうエンドレスで、A面とB面を取っ替え引っ替えで。

【サミー】あの2曲は強烈だから、ポータブルレコーダーではスピーカーが割れてしまうような感じになりませんでしたか。

【田切】もっと良い音のステレオが欲しいなって、ずーっと思ってました。

【サミー】田切さんのお話は、番組の後半の「今週のビートルズラバー」のコーナーでたっぷりと語っていただくことにしまして、まずは、いつものようにビートルズ曲のご紹介をしてまいりましょう。

【裕】アルバム『ヘルプ!(Help!)』より、「ヘルプ!(Help!)」と「ザ・ナイト・ビフォア(The Night Before)」をご紹介します。

オープニングテーマは杉田裕の「ビートルズなんて誰も知らない」

 

杉田裕の今週の紹介曲は「ヘルプ!(Help!)」

【裕】ビートルズのエッセンスが2分30秒に凝縮されて、隙がない。完成度の高い作品です。ジョンは「ヘルプ!(Help!)」というタイトルから曲を作り始めて、30時間後にはできたということですが、そのスピード感にはびっくりします。歌はジョンの叫びと、コーラスワークが見事。「Won’t You Please, Please Help Me」のところのコーラスが厚くなって、その後のジョージのギターも難しい。

【田切】不思議なアルペジオですよね。

【裕】アマチュアにはコピーできないようなフレーズです。それと、ジョンのアコースティックのカッティングがシャッフル気味になってるのかな?跳ねているように感じる。

【田切】8ビートというのは、まずスイングしているビートから始まって、ロックンロールになるとイーブンになってくる。あの時代は混在しているんです。イーブンなんだけど少しスイングしている感じがあって、独特のグルーヴを生み出しているんです。ビートルズには他にもいっぱいありますよ。

【裕】先ほど言ったジョージのフレーズはイーブンなんですね。リンゴのドラムとジョンのカッティングが相まってノリを出しています。あと、すごいのはイントロのメロディは一回しか出てこない。

【サミー】そうなですよねー。

【裕】参りましたって感じです。

【サミー】個人的には、ビートルズの最高傑作だと思います。

 

サミー小川の今週の紹介曲は「ザ・ナイト・ビフォア(The Night Before)」

【サミー】ポールの曲と言われていますけど、ビートルズのこれまでの曲の良いところを取ってきたと感じます。3つの似ているポイントがあるんです。

【裕】ほー、どんなポイント?

【サミー】ひとつは、サビで転調している。「フロム・ミー・トゥ・ユー」のサビのコード進行を応用したのではないかという研究者の方もいらっしゃいます。

【裕】なるほどー。

【サミー】ふたつ目は、サビのドラムが「アイ・フィール・ファイン」に似ているんじゃないかと思うんです。田切さん、いかがでしょうか?ちなみに「アイ・フィール・ファイン」は1964年10月のレコーディング、その4ヶ月後にこの曲がレコーディングされています。

【田切】ビートルズは意外にラテンのリズムを使うんです。初期の頃はチャチャチャをロックの中で使っています。おそらく、この曲の素はレイ・チャールズ「ホワッド・アイ・セイ(What’d I Say)」でしょう。でもね、リンゴは間違っています。

【裕】えっ!

【田切】リンゴの勘違いだと思うんですけど、2と4がひっくり返っているんです。大間違いで、分かる人は気付いていると思いますけど(笑)。それでも成り立っているところがすごい。

【サミー】リンゴは田切さんに叱られちゃいましたね(笑)。それともうひとつ、3つ目の似ているポイントは、「ヘルプ!」で使われたカウンターメロディ。でも、「ヘルプ!」の方が後から作られた曲なので、「ザ・ナイト・ビフォア」で取り入れたカウンターメロディを「ヘルプ!」で活かしたというのが正しいのでしょうね。

 

今週のビートルズ・ラバーは田切純一さん

【サミー】ゲストを迎えてビートルズ愛を語っていただく「今週のビートルズ・ラバー」のコーナー。今週は田切純一さんをお迎えしています。

 

【田切】番組でかける曲を選ぶように言われたんですけど、悩みましたよ。ずーっと聴き返して。そしてらね、全部良くって(笑)。

【裕】選べない(笑)。

【田切】僕は、小学校4年生くらいの頃にテレビで見て、ビートルズになりたいって思ったんです。

【サミー】あー、分かるなー、その気持ち。

【田切】うわっ、かっこいいって。かっこいいっていうことだけですよ。その時かかっていた曲は「抱きしめたい」か「プリーズ・プリーズ・ミー」だと思うんですけど、そのルックスと音で完全にノックアウトされました。今になって、演奏している映像を見ると、彼らはノリが全員同じなんです。全員がダウンビートでね。ジョージも足を踏んでますけど、全員のグルーヴが一緒なんですよね。他のバンドは、そうではないんですよ。ストーンズなんかは自分勝手な感じ。

【裕】バラバラですよね。

【田切】ビートルズはメンバー全員が同じにノっているので、一番ノリが良いバンドです。そこらへんのセンスがすごいですよね。

【サミー】JAYWALKはどうですか?皆、同じノリでしたか?

【田切】JAYWALKは違います(笑)。

【裕】みんな個性的だからバラバラなんです(笑)。

 

 

【田切】ビートルズをコピーしても、そんな風にならない。サージェントのアルバムを全部やるようなコピーバンドはありますけど、同じにはならない。音だけ聴いてると似た雰囲気なんだけど、カッコ良さやグルーヴ感というものがないんです。それでね、どこが違うんだろうって考えたわけですよ。

【サミー】ふむふむ。

【田切】日本人はリズムの取り方が「お餅つき型」なんです(笑)。杵を下に振り下ろす感じで「1」なんです。そしてまた振り下ろして「2」。これが日本人のリズム感を表しているなって最近思い始めました。

【サミー】お餅つき型(笑)。

【田切】外国人は上でリズムを感じる。ボールが跳ねるように、上に行く時に「1」を感じている。日本人とは逆ですね。だからバウンスしている感じとかがものすごく良く出る。そこからやらないとコピーバンドはダメですね。

【裕】ビートルズのコーラスとかコピーするバンドは多いけど、上辺だけってことになっちゃうワケ?

【田切】そんなことを言ったら失礼ですけど、そこを一番最初にやらないとあんな風にはならない。

【裕】ダウンビートで跳ねるように。

【田切】そう、そこが基本ですよね。上に行くように。例えばクインシー・ジョーンズが指揮している時も、上にポンって跳ねてるでしょ。クラシックの指揮者も上に行ってる。鎖国してた日本、黒人たちの踊りやリズムを見ていない日本、そこに大きな穴がありますね。日本のポップミュージックはこれを理解しないと…。

【サミー】いまだにそんな感じがしますか?

【田切】します。それを逆手にとってやったのがYMOです。日本人はグルーヴがないんだって、乗らないことを基本にしたポリシーでやってましたね。

【サミー】そうなんだー。

【田切】コンピュータでピコピコやって。リズムが平面的(二次元)なんです。それに対して、ロックやジャズは立体的。これを目で感じないと、リズムってどうにもならない。

【裕】確かに目でも感じるもんねー。

【田切】実は、見ないとダメなんです。

 

 

【田切】ところで、今日かけていただく曲は何でしたっけ?

【裕】「レイン」です。

【田切】今の話と関係なくなっちゃうんですけど、「レイン」のどこがすごいのかっていう話なんですけどね。まず、イントロのリンゴの入り。これはカッコいい!

【サミー】カッコいいねー!

【田切】シンプルに5つ叩くんです。それから、ポールのベースラインとほぼユニゾンになっている。どうやったんだろう?おそらくリンゴが最初に叩いたのかな。普通、フィルインは歌の邪魔にならないように4拍目にちょこっと入れたりするんだけど、この曲はリンゴのドラムが歌に被ってきている。オブリガートというかコンピングをポールと一緒にやっているのにびっくりしちゃった。

【裕】どういう風に打ち合わせしてるのかな?リンゴが先?

【田切】どっちなんでしょうかね。まだ二人とも生きているから、そこだけ聞きたい(笑)。大きな疑問なんです。

 

 

↓杉田裕のニューアルバムはこちら。

エンディングテーマは杉田裕の「絶望してる暇はない」

J-TAGIRI with 久留里mountainboysのライブ情報はこちらをご覧ください。

 

杉田裕の「眠れない夜に…」はこちらをご覧ください。