The Beatles Lover No.5  ザ・ビートルズ・ラバー・ナンバー・ファイブ

人気ラジオ番組のテキスト版です。読んで、聴いて楽しんでください。

  ★★

ディープなファン目線、サウンドメーカー目線で、ビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していくThe Beatles Lover No.5。

杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。

278回【2022年7月23日~7月29日】の放送は「レット・イット・ビー」のB面を紹介します。

今週もゲストに杉山清貴さんをお迎えしています。

 

NEW!ビートルズを愛するすべての人に。待望の新版!

 

 

 

【サミー】突然ですが、杉山さんはジョージ推し?

【杉山】そうですね、今で言うところのジョージ推しです。

【サミー】ジョージのどこに魅力を感じますか?

【杉山】ビートルズを聴き始めた頃は今のように映像がない時代でした。だから「ビートルズがやってくるヤア!ヤア!ヤア!」などの映画を見たんですね。ジョージは演奏シーンになるとジョンとポールの後ろで口角を上げてシニカルに笑いながらプレイしているのがカッコいいなぁと(笑)。それから「バングラデシュ・コンサート」のフィルムを見た時に、ああ、ミュージシャンとはこういう人のことなんだなぁと。ジョージがキリストのように見えて、彼のポスターばかり部屋に貼っていました。

【サミー】ジョージは人を寄せてくるミュージシャンですよね。ミュージシャンズ・ミュージシャンという感じがします。

【杉山】そうですね、他の3人とは全然違う視点で生きている。彼のちょっと後ろに引いた感じが好きなんです。

【サミー】杉山さんのプレイスタイルも影響されましたか。

【杉山】ジョージは完全なるバッキングのミュージシャンじゃないですか。どういう指遣いをしているのか全く分からなかったけど、最近いろんな映像が見られるようになって、すごい指遣いしてることが分かりました。ポジショニングとか、ここでこうやって弾いていたんだって分かる。

 

【サミー】さて、マニアックな話は尽きませんが、今週ご紹介する曲は?

【裕】「レット・イット・ビー」B面から、サミー小川さんが「ゲット・バック」を、そして杉山さんにこのアルバムを総括する一曲を選んでいただいてご紹介したいと思います。

【杉山】ジョンとポールのハーモニーを考えて「トゥー・オブ・アス」をご紹介します。

サミー小川の今週の一曲は「ゲット・バック(Get Back)」

【サミー】ウルトラマン、ありますよねー。今年は映画「シン・ウルトラマン」が公開されて話題になりましたけど。杉山さんにウルトラマンの話題を振ると大変なことになりそうな気がしますが、杉山さんはウルトラマン・キヨタカさんなんですよね?

【杉山】実はそうなんです。海の平和を守るウルトラマン・キヨタカなんです。

【サミー】どういうご縁でそうなった?

【杉山】かいつまんで言うと、よく行く飲み屋さんで円谷皐さん、当時の円谷プロの会長さんと仲良くなって、彼のラジオ番組に出させてもらうようになったんです。その時に円谷さんが、杉山さんにウルトラマンの兄弟に入ってもらわなければいけないって言って、いきなり命名されたんです。それでウルトラマン・キヨタカというのが出来上がりました(笑)。

【サミー】杉山さんに似ている?

【杉山】いえいえ、ウルトラマンですから。でもサングラスを手に持っている(笑)。初のブルーのラインだったそうです。

【サミー】実はね、ビートルズとウルトラマンはシンクロしているような気がして仕方がないんです。TBSでウルトラマンのテレビ放送が始まったのが1966年7月。ちょうどビートルズが来日して武道館公演をした頃なんですね。その後、ウルトラセブンのシリーズが1967年から1968年まで放送されましたけど、ビートルズは1968年には「レボリューション9」でナンバー・ナイン、ナンバー・ナインと言っていたわけですよ。東でセブンと言ったら西でナインと応えた。その後、1971年に「帰ってきたウルトラマン」が始まるのですが、ビートルズはその前々年に「ゲット・バック」を出して、帰ってこい、帰ってこいと言ったら、ウルトラマンは帰ってきちゃった。ね、関係ありそうな気がしますよね。

【杉山】すごいですねー。

【サミー】この「ゲット・バック」という曲ですが、映像作品「Get Back」でポールがベースをコード弾きしながら作り上げていくシーンが見られて、感動しました。ゲット・バック・セッションは「原点に戻ろう」というコンセプトがあったと言われていますが、本当にあったのかどうか怪しいですね。

ケビン・ハウレットによると、このセッションには3つのコンセプトがあったと言っています。

1.ライブ

2.テレビ番組用のリハーサル

3.新曲の制作

こうしたことを考え合わせると、「原点に戻ろう」というコンセプトの話は後付けのように思えます。

さて、ウルトラマンとの接点の話に戻ると、ウルトラマンの主題歌の演奏に、この「ゲット・バック」という曲がぴったり乗るんですよ。

【杉山】え、そうなんですか(笑)?

【サミー】では杉田さんにご協力いただいてやってみましょうか。杉田さん、ウルトラマンの主題歌のバックの演奏、「タタタタタタタタ」をお願いします。僕がメロディを歌います(笑)

※この続きはラジオで聴いてね!

 

 

 

杉山清貴の今週の一曲は「トゥー・オブ・アス(Two Of Us)」

【杉山】以前ハワイに暮らしていた頃に、VH1というケーブルテレビがあって、いろんな映画を流していたのですが、そのVH1が制作した「Two Of Us」という作品がオンエアーされました。もしもジョンが生きていたら、ポールとジョンはどうなっていたんだろうという想像のドラマで、とても感動的で泣けました。そうか、この「トゥー・オブ・アス」というタイトルがジョンとポールを象徴しているなと感じました。大好きな曲です。

この曲はセッションでよくやるのですが、コーラスが非常に面白い動きをするところが難しいポイントです。僕の中では行かないような音に行く。

【裕】下のハモ?

【杉山】そうです、下のハモです。コーラスは頭の中に、体に入っているはずなのに、歌おうとするとアレっとなって歌えなくなる。

【裕】なりますねー。

【杉山】不思議な感じです。そもそも、この「レット・イット・ビー」というアルバムは僕にとって新譜だったんです。ビートルズを好きになってから出た新譜が、最後のアルバムだった。だから本当に聴きまくったんです。「トゥー・オブ・アス」のイントロのアルペジオを子供の頃にやってみましたけど、途中で合わなくなるのが悩みのタネでした。ビートルズってイントロで結構トリッキーなことをするんです。

【裕】そうですよね。「抱きしめたい」とか。

【杉山】「ドライヴ・マイ・カー」などもそうですよね。「トゥー・オブ・アス」も、やってると途中で分からなくなる曲の一つでした。この曲はアタマから入るって知ったのは大人になってからです(笑)。それまでは途中で変拍子になるのかな、なんて思ってました。あー、思わずちょっと語ってしまいましたねー(笑)。

 

 

「今週のビートルズ・ラバー」は杉山清貴さん

ゲストを迎えてビートルズ愛を語っていただく「今週のビートルズ・ラバー」のコーナー。

今週もゲストに杉山清貴さんをお迎えしています。

 

【サミー】今週は映像作品「Get Back」について語っていきたいと思います。

【杉山】何十回も見ています。飽きないんですよねー。

【サミー】そうですよね、7時間50分もの作品をよく何度も見ますよねー。その中で印象に残ったシーンを教えてください。

【杉山】バンドマンとして気持ちが入って、そのシーンにくると涙が込み上げてくるくらいハッピーなシーンがあります。ビリー・プレストンが入った時です。あの時のメンバーの一瞬の表情の変化。「おー、これだー!」っていうのがバンドマンには痛いほどよく分かる。それまで煮詰まって、悩んで、ケンカまでしながらやってきて、ビリーが最後のピースをきちっと埋めてくれた。あれは泣きます。あの瞬間のみんなの笑顔は、ミュージシャンならゾワーっとくると思うんです。

【裕】音もガシっと固まるんですよね。

【杉山】方向性を作るんです。ビリーのピアノは素晴らしいです。あんなに存在感があったなんて知らなかった。昔の「レット・イット・ビー」の映画では、そんなに存在感が示されていなかった。

【サミー】「レット・イット・ビー」の映画では、ビリーはあまり映っていませんでした。

【杉山】中一の頃、映画館で「レット・イット・ビー」を朝から晩まで見ましたけど、なんか暗い気持ちになるんです。

【裕】みんなそう言いますね。

【杉山】これで解散するんだなっていう暗い気持ちにになったのが、今回の「Get Back」ではケンカのシーンも出てくるのに、なんか明るいんですよ。全員が次の作品に向かって行くぞって、世界を制覇した若者たちが自分達が持っている力を全部注ぎ込んでやったからこそ起こるケンカだった。だけど落ち着けなかった。そこにビリーが入って全部まとめてくれた。メンバー間の気持ちも含めて、まとめてくれたと思う。

【サミー】ビリーがあの時来たのは、ジョージが呼んだから。ジョージのファインプレーですよ。

 

 

【杉山】ジョージはミュージシャン指向だから、いろんな連中と仲良くなっていた。

【裕】クラプトンもそうですよね。

【杉山】ジョージが出て行ったときに、クラプトンを入れればって話が出たけど、それじゃビートルズじゃないよって。ビートルズへのこだわりを感じます。全員がそうなんでしょうけど、特にジョンはビートルズというものにこだわりがあったと思う。一方ポールは頭の中ですぐに音が見えちゃうから仕切るようになる。ポールの天才さゆえの悲しい出来事ですよね。

【裕】自分が思っていることを指示する。

【杉山】それでやってくれないと、何でできないんだよとなる。

【裕】言われた方は分からないよね。

【サミー】ポールは最初から音が見えるんでしょうか?

【杉山】やっていくと見えてくるんだと思います。

【裕】それで頭の中のものを、大雑把というか曖昧に指示するから・・・

【杉山】そうそう、譜面上ではない口伝達だもんね。

【裕】あれでは分からないよねー。

【杉山】全員そう思いますよ。

【サミー】サラリーマンの世界で考えてみると、全部見えちゃう出来の良い上司が曖昧な指示しかしないみたいな・・・。

【杉山】上司部下じゃなくて、仲間だから余計こじれる。どんどん仕切られると、ちょっと待てよってなりますよ。

【サミー】ガキの頃からの仲間ですもんね。

【杉山】ヨーコがジョンの機嫌をとりながらやっていたことも分かった。ジョンが落ちそうだなって思った時に彼を違うところに連れて行ったり、常にケアするヨーコがいた。そこにビリーが入ってくる。まさしく神様ですよ。

【杉山】「ホワイト・アルバム」のセッションでリンゴがいなくなった時に、ドラムの周りに花を飾って迎えたでしょ。今度はジョージが出て行ったけど、何か起こった時の対処の仕方をみると彼らは4人の絆をとても大切にしていたことが分かる。自分達が世界を変えてきたという自負があるだろうし、変えなければいけないという自覚もあったでしょう。20歳代のあの頃、僕らはハナをたらしていましたもんね(笑)。チャラチャラしてるだけだったから、世界なんか相手にできないですよ。

【サミー】ジョージの奥さんのオリビア・ハリスンの良い言葉があるのでご紹介しますね。

「ビートルズというのは不思議なバンドで、メンバー同士の中にまるで兄弟愛のようなものが存在している。人生の中で何かに向かって一生懸命になって、色々な出来事を一緒に体験して生き抜いてきた仲間というのは、歳をとるにつれてお互いを気遣う優しい思いやりのようなものが生まれてくる。本当にそれぞれに対して愛情深くなって、側で見ていて尊敬してしまうような美しい間柄だ」。これはアンソロジーの頃の言葉だと思うのですが、彼らの絆を表しています。

【杉山】その通りだと思います。彼らは若い頃から全部自分達で決めていたと言われています。意見を言うときも全員同じ意見を言う。誰かが違うことを言うことはない。

【サミー】全員一致というのを大事にしていた。大体デビュー曲からしてそうですよね。あてがわれた「How Do You Do It」を蹴って、「ラヴ・ミー・ドゥ」にしたいって。普通、プロデューサーに言えないですよね。

【杉山】僕は言えなかったですー(笑)。

【サミー】杉田さんたちのデビュー曲はオリジナル曲でした。

【杉田】そうですけど、やっぱりプロデューサーの言いなりっていうか・・・(笑)。

【杉山】そうなりますよね。ビートルズは強かった!

【サミー】さてさて、今日は「Get Back」について語ってきましたが、最後に杉山さんに一曲選んでいただきたいと思います。

【杉山】ビリーが入って最初に合わせた曲、「ドント・レット・ミー・ダウン」を聴いていただきたいと思います。

 

 

 

エンディングテーマは「絶望してる暇はない」