The Beatles Lover No.5

人気ラジオ番組のテキスト版です。読んで、聴いて楽しんでください。

 

 

ディープなファン目線、サウンドメーカー目線で、ビートルズへの愛💖と共に楽曲を紹介していくThe Beatles Lover No.5。

杉田裕(JAYWALK)とサミー小川(メディアプロデューサー)がナビゲートします。

277回【2022年7月16日~7月22日】の放送は「レット・イット・ビー」のB面を紹介します。

今週もゲストに杉山清貴さんをお迎えしています。

 

【サミー】杉山さんは小学生の頃からビートルズを聴いていたそうですけど、ひょっとしてませていた?

【杉山】ませていたんだと思います。先週お話しした友達と出会っていなければ通っていない世界ですし、ビートルズを知ったことで色んな洋楽に耳が行くようになりました。当時は、今みたいに情報がない中で、ラジオや雑誌で情報を取り込むのが大好きで、探せば探すほどのめり込んで、一日中、365日ビートルズ。そんな小中学生時代でした。

【サミー】杉田さんは小学生の頃、音楽は?

【裕】小学生の頃は、音楽には目覚めていませんでした。僕は中学生の時に兄が持っていた「ラバー・ソウル」がきっかけでビートルズが好きになって、それからずーっとビートルズ。お袋に「ビートルズだけが音楽じゃないよ」って言われました(笑)。

【サミー】僕は、1970年頃の東芝のステレオのCMで、ビートルズの「レット・イット・ビー」が使われていたのを見て、無茶苦茶カッコいいなこの人たちって。ルックスから入りました。

【杉山】「レット・イット・ビー」の頃は、みんなヒゲ生やしてカッコいいですよね。

【サミー】すごく大人な感じがしました。今考えると、彼らはまだ20歳代なんですよね。

【杉山】27歳とか、20歳代後半ですよね。

 

【サミー】さて、今週ご紹介する曲は?

【裕】「レット・イット・ビー」B面から、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」と「フォー・ユー・ブルー」をお送りします。

【サミー】では今週もどちらが担当するかジャンケンで決めよう。ジャンケンポン!あー、勝った。ではサミー小川が「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を

【裕】杉田裕が「フォー・ユー・ブルー」をご紹介します。

 

 

サミー小川の今週の一曲は「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(The Long And Winding Road)」

【サミー】食べ物の好き嫌い、ありますよねー。

【裕】ありますねー。

【サミー】ちなみに杉山さん、杉田さんは嫌いなものありますか?

【杉山】ないです。何でも食べます。

【杉田】子供の頃は漬物が嫌いでしたけど、今は何でも食べますね。

【サミー】僕はらっきょうが苦手なんです。らっきょう屋さん、ごめんなさい。

【杉山】らっきょうだけなんですか?

【サミー】そうなんです、らっきょうだけ。カレー屋さんでらっきょうと福神漬けが付いてくるお店がありますけど、「ごめんなさい、福神漬けだけを二倍ください」って感じです。ちなみに日本スポーツ振興センターが行った「児童生徒の食生活実態調査」によると、嫌いな食べ物の一位はゴーヤ、二位はなす、三位はレバーだそうです。

好き嫌いで言うと、この「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は嫌いなタイプの曲なんです。いかにも名曲ですっていう建て付けが好きになれないんですよね。ポールには素晴らしい曲が多いですけど、「フォー・ノー・ワン」みたいな一筆書きのような曲が特に好きです。

この曲はバンド解散の理由となった曲ですね。フィル・スペクターが勝手にアレンジして、ポールが激怒しました。1970年4月、「レット・イット・ビー」のアルバムが出る前の月に、ポールはアラン・クライン(ccフィル・スペクター、ジョン・イーストマン)に手紙を送って、この曲について文句を言っています。そこには、次の4項目が書いてありました。

1.ストリングス、ホーン、声(女声)、全ての付け加えられた「ノイズ」を削除すること

2.ボーカル、ビートルズの演奏をボリュームアップすること

3.終わりのハープは完全に取り除いて、オリジナルのピアノを代わりに入れること

4.こうしたことは二度と行わないこと

でも、こうした要求は無視されて、アルバムは発売されてしまいました。

また、1971年にポールはアラン・クラインの活動を封じることを目的に、パートナーシップ解消の裁判を起こしました。その理由として次の3つを挙げています。

1.アルバム「マッカートニー」の発売を遅らせようとしたこと

2.「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を許可なしに改変したこと

3.アップルが製作した映画「レット・イット・ビー」を無断でユナイテッド・アーティスツに譲渡したこと

この曲の改変は、よっぽど腹に据えかねたんでしょうね。

その後、1974年12月に、ビートルズは解散合意書に署名することになります。足掛け5年に及んだ、解散に至る長く曲がりくねった道を象徴する曲ですよね。

 

 

 

杉田裕の今週の一曲は「フォー・ユー・ブルー(For You Blue)」

【裕】B面の4曲目です。ジョージの作品。ジョージらしい囁くような歌い方が彼の世界を作っています。最初は”George’s Blues”というタイトルだったそうです。

みんながそれぞれの役割をしっかり果たしているサウンドですね。僕が不思議に思ったのはポールが弾くピアノです。プリペアド・ピアノというらしいのですけれど、一般的にはピアノの弦の上にゴムや金属、紙のようなものを置いて変わった音に仕上げます。ポールは、最初のうちはピアニストらしい感じで弾いていますが、途中からギターやベースみたいな感覚のオブリを入れて、自由気ままになっていく。それがバランス的に大きいので、ややもすると単調になりがちなブルースをうまく引き立てています。

【サミー】オブリって?

【裕】歌の隙間にギターやピアノなどでそれに応えるように入れるフレーズのことですね。

【杉山】ドラムで言うところの「おかず」みたいな(笑)

 

 

「今週のビートルズ・ラバー」は杉山清貴さん

ゲストを迎えてビートルズ愛を語っていただく「今週のビートルズ・ラバー」のコーナー。今週もゲストに杉山清貴さんをお迎えしています。

 

【サミー】杉山さんは「Nostalgia」などのアルバムで南佳孝さんと凝ったコーラスをやっていますよね。

【杉山】佳孝さんとは長い付き合いですけど、5、6年前に尾崎亜美さんもいらした時にビートルズをやろうよという話になって、3人で急遽曲を決めてやったんです。やってみたら難しいけど面白かった。それから、コーラスを勉強したいから一緒にやろうよと誘われて、ご一緒するようになりました。それまで佳孝さんはハモったことがなかったそうです。「フランク・シナトラはハモらないだろ?」って言ってましたけど(笑)。

【杉田】だから杉山さんがリードをとって、佳孝さんが下をとるんですね。

【杉山】佳孝さんと最初にジョイントをやったのは20年くらい前だったんですけど、いきなり「ワン・アフター・909」を弾き始めたんですよ。それで反応してハモっていったら「やるねー」って言われて。ビートルズ談義で盛り上がって、今につながっています。

ビートルズの曲は、途中でどっちが主メロか分からなくなるところが面白いですね。だから全パートを覚えなければいけない。コーラスのスキルは、これで学びました。とりあえず全パートを覚えて、バランスを考えて・・・。誰がリードかなんて関係ないコーラスですよね。

【杉田】ユニゾンで歌ってるかと思うと、フッと別れたりして。人それぞれで聴いた感じが違うから、主旋律の捉え方が違ってくるのかもしれません。

【サミー】作曲するときは主メロから作っていくのでは?いきなりコーラスで作曲するのでしょうか?

【杉山】例えばポールが曲を作っていて、ジョンにハモってよ言って、二人でハモりながら作っていくこともあったでしょう。「ジス・ボーイ」なんかは循環コードの中で3声で作ったと思います。素晴らしいです。ハモリだけじゃなくて、2人が違うパートでウーアー(というコーラス)を入れたりするのは、ジョージ・マーティンから教わったのかなー。もしかすると、ハンブルク時代にいろんなカバー曲をやったので、そこでスキルを得たのかもしれません。

【サミー】以前リバプールのメンディップス・・・ジョンがミミ伯母さんと住んでいた家に行ったことがあります。その家の玄関ホールは音の響きが良いんです。ポールが遊びに来て二人でコーラスの練習をしていたのはここですよって、ガイドさんに教えてもらいました。

【杉山】それはマニアックな話だなー!ティーンエイジャーの頃から、二人でハモって研究していたんでしょうね。

【杉田】やっていたんでしょうね。だから自然と上に行ったり下に行ったり、阿吽(あうん)の呼吸ですよね。

【サミー】息の合い方ってありますよね。同じメンバーとならできるけど・・・みたいなことってありますか?

【杉田】先日、中村耕一さんとライブをやりましたけど、歌い回し方とか食い方の呼吸とか、やっぱりこれだねって。10年以上もの間、一緒にやっていなかったけど、自然とこうなるというか・・・。ステージ上で快感でしたね。

【杉山】あー、分かります。バックグラウンド・ボーカルの醍醐味ってメインにどれだけ寄り添うかにありますよね。佳孝さんはフランク・シナトラなので、引っ張るとか食うとか自由に行くんですよ。なので、唇を見ながら、音を聞きながら若干遅れ気味に合わせたりするんです。ああ、食った食ったとか・・・楽しい!ビートルズの若いころのライブ映像を見るとお互いに目を見合わせていますもんね。

【サミー】ステージだと横に展開してるから、どんな感じにするのかな?

【杉山】チラッと見るとか。

【杉田】長年やっていると、ちょっとした感じで分かっちゃうんですよね。

【サミー】コーラスがすごいと思うビートルズ曲を教えてください。

【杉山】「ビコーズ」ですね。誰もがそう思うでしょう。作れないですよ、あのコーラスは。ジョージ・マーティンがいて、ブライアン・エプスタインがいて、彼らの環境は素晴らしいじゃないですか。そこで、どれだけのものを吸収していったんだろうか、と思います。「ビコーズ」は音を重ねるコーラスという意味では、集大成だと思います。

【サミー】ジョージも上手です。

【杉田】そう、ジョージも個性的ですよね。

【杉山】ジョンとポールだけじゃない。

【サミー】今日はビートルズのコーラスの凄さについて語ってきましたが、最後に杉山さんに一曲選んでいただきたいと思います。

【杉山】佳孝さんと一番最初にやった曲「イフ・アイ・フェル」を聞いていただきたいと思います。佳孝さん、よくここまで覚えた、先輩すごい!って思いますね。

【サミー】では、南佳孝&杉山清貴のアルバム「Nostalgia」から「イフ・アイ・フェル」を聞いてください。

エンディングテーマは「絶望してる暇はない」