Vol.69【中島みゆきの不思議な歌②　「永遠の嘘をついてくれ」】

　Vol.59【中島みゆきの不思議な歌①　「ファイト！」】でお話ししたとおり、中島みゆきさんが作られた楽曲の中には、「なんだろう、この曲は」と思ってしまう不思議な歌がいくつかあります。今回は「永遠の嘘をついてくれ」についてお話ししたいと思います。

　「永遠の嘘をついてくれ」という曲は、1996年10月にリリースされた中島みゆきさんの２４枚目のアルバム「パラダイス・カフェ」に収録されています。

　アルバム「パラダイス・カフェ」に収録されているこの曲はセルフカバーで、それに先立って、吉田拓郎（以下「拓郎さん」と言います）に提供され、1995年6月にリリースされた拓郎さんのアルバム「Long time no see」に収録されています。

　中島みゆきさんは、もともと拓郎さんの熱烈なファンで、拓郎さんの楽屋に出入りするほどだったそうです。

　拓郎さんは、その長い音楽キャリアの中で３３枚のオリジナルアルバムをリリースしていますが、ほとんどの楽曲をご自身で作詞・作曲しており、作詞を特定の人に任せたり（岡本おさみさん、松本隆さん、喜多条忠さんなど）、まれに作曲を他の人に任せたり（加藤和彦さんなど）することはありましたが、作詞・作曲すべてを他の人に依頼することはなかったと思います（私の記憶の範囲内で、です）。

　1994年に開催された「日本を救え！」というチャリティコンサートで、拓郎さんは、中島みゆきさんの楽曲「ファイト！」を歌いましたが、歌い終えて、「もう自分にはこのような曲は作れない」と感じたそうです。

レア吉田拓郎　ファイト！〜日本を救え！武道館より　(manjyuji)

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そして、アルバム「Long time no see」の制作中に、中島みゆきさんを食事に誘い、中島みゆきさんに「遺書のような曲を作ってほしい」と依頼したそうです。この言葉はどういう意味だったのでしょうか。これまで時代を先導する数々の曲を作って来た自分であるが、もうそのような力は残っていない、という意味だったのでしょうか。　拓郎さんを神のように思っている中島みゆきさんは、どのような気持ちだったのでしょう。そして生まれたのが、この「永遠の嘘をついてくれ」でした。「そんな悲しいことを言わないで、嘘でもいいから頑張ってくれ」という、拓郎さんへの「ファイト！」だったのでしょうか。

　そういえば、1994年にＮＨＫ-ＢＳで「日本フォークソング大全集」という番組が放映されました。この番組にゲストで出演した時に、拓郎さんは、司会役の坂崎幸之助さんに「僕は若い頃からずっと嘘をついている」という逆説的な発言をしています。「永遠の嘘をついてくれ」という曲は、その言葉と何か関係があるのでしょうか。

　中島みゆきさんと拓郎さんは、2006年に開催された「吉田拓郎＆かぐや姫 Concert in つま恋 2006」というコンサートで「永遠の嘘をついてくれ」を共演しています。名演だと思います。中島みゆきさんの強い視線が印象的です。これは拓郎さんに向けられたものだったのでしょうか。

永遠の嘘をついてくれつま恋2006より#中島みゆき#吉田拓郎#永遠の嘘をついてくれ

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