「中島みゆき」さんは数々の実績を持つシンガーソングライターです。ご自身が歌ったり、他の歌手の方に提供したりした、多くのヒット曲を持っておられます。中島みゆきさんの作る楽曲は、その独特のメロディは他の人にまねのできない素晴らしいものであるのはもちろんですが、私は、中島みゆきさんが作る「歌詞」にとても惹かれます。いろいろな切り口の曲があるのですが、その中に、とても不思議な世界を持つ歌詞の曲があり、今回は、そのような視点から、中島みゆきさんの曲についてお話ししたいと思います。

 中島みゆきさんは1957年生まれで、出身は北海道です。地元では、高校・大学時代に、アマチュアとして数々の自作曲を歌い、「コンテスト荒らし」の異名をとっていたそうです。

 1975年5月に開催された、ヤマハ主催の「第9回ポピュラーソング・コンテスト」に「傷ついた翼」という楽曲で入選し、さらに、同年5月に開催された第10回の同コンテストで歌った「時代」という楽曲がグランプリを受賞し、同年11月に開催された「第6回世界歌謡祭」でもグランプリを受賞しました。その後、1年に1枚のペースでアルバムを発表し、コンスタントに音楽活動を続けています。

 

 

 「アザミ嬢のララバイ」(デビュー曲)、「時代」、「わかれうた」、「ひとり上手」、「悪女」、「空と君のあいだに」、「糸」、「地上の星」、「ヘッドライト・テールライト」、「銀の竜の背に乗って」などの中島みゆきさんご自身が歌った楽曲、研ナオコさんに提供した「あばよ」・「かもめはかもめ」、加藤登紀子さんに提供した「この空を飛べたら」、柏原芳恵さんに提供した「春なのに」、吉田拓郎さんに提供した「永遠の嘘をついてくれ」など・・。列挙してみると、大変な数のヒット曲を持っています。

 アルバムに納められた楽曲は膨大な曲数になると思いますが、先ほどもお話ししたとおり、その中に、私が「何だ、この歌詞は」と感じた楽曲が3曲あります。そのうちの1曲が「ファイト!」という曲です。

 この曲は、題名から想像した場合、「THE ALFEE」が歌う「もう一度ここから始めよう」のような、ヘコんでいる人への応援歌なのかと思ってしまいそうですが、この曲の歌詞は応援歌とは全く違う内容です。現実の厳しさがそのまま描かれていて、その上で「ファイト!」と言っています。

 

 

 中島みゆきさんは、「オールナイトニッポン」という深夜放送のパーソナリティーを、1979年から1987年まで務めていました。この番組では、リスナーからのはがきが読まれていたのですが、あるリスナーからのはがきの内容が、この「ファイト!」という曲の歌詞に似ています。中島みゆきさんは肯定も否定もしていませんが、私は、「ファイト!」という曲は、深夜放送での経験が中島みゆきさんの中で熟成されて生まれた曲ではないかと思っています。

 口でいくら説明してもうまく伝えることが出来ないので、以下に、YouTubeにアップされているものと、その歌詞を引用させていただきたいと思います。

ファイト! - YouTube

 

 

 

あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた

女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている

ガキのくせにと頬を打たれ 少年たちの眼が年を取る

悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる

 

私、本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で

ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い

私、驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった

ただ怖くて逃げました 私の敵は私です

 

ファイト! 闘う君の歌を

闘わない奴らが笑うだろう

ファイト! 冷たい水の中を

ふるえながらのぼってゆけ

 

(中略)

 

薄情もんが田舎の町に あと足で砂ばかけるって言われてさ

出てくならおまえの身内も住めんようにしちゃるって言われてさ

うっかり燃やしたことにしてやっぱり燃やせんかったこの切符

あんたに送るけん持っとってよ 滲んだ文字 東京行き

 

ファイト! 闘う君の歌を

闘わない奴らが笑うだろう

ファイト! 冷たい水の中を

ふるえながらのぼってゆけ

 

(後略)

 

※ ツイッターに画像を投稿しました(2023.1.4)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon

 

(続く)