http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111116-00000302-playboyz-soci
10月25日、警察庁が自転車交通の新たな指針を打ち出した。「良好な自転車交通秩序実現のための総合対策の推進について」という指針の中身は、自転車をあらためて「車両」として定義し、自転車が通行できる歩道は原則として幅3メートル以上(以前は2メートル以上)とすることなどが盛り込まれている。
要するに、「自転車は車道を走ること」を求めたこの指針。この時期になって急浮上してきたのは、ひとえに自転車事故、とりわけ自転車と歩行者との事故が激増していることにある。自転車の走行範囲をキチンと既定することで、こうした事故をなくしていこうとしているのだ。
だが、自転車が走行するその「車道」自体、自転車が走りやすいとは言い難い。特に狭い道路が多い都市部では、車道を走ることで新たな事故が増える可能性すらある。この点は警察も認識しており。前述の指針のなかで「自転車の通行環境の整備も十分とはいえない状況にある」と明記している。
環境整備が不十分なまま指針を発表した理由について、警察庁の交通企画課はこう説明する。
「自転車の通行環境の確立、自転車利用者に対するルールの周知と安全教育の推進、自転車利用者の交通違反に対する取り締まりの強化といった取り組みを総合的に推進することとしています。これらの対策により、車道を通行する自転車の安全と歩道を通行する歩行者の安全の双方を確保したいと考えています」
つまり、新たなルールの周知と「並行して」環境を整備していくということ。指針では「クルマ用の車線を減らして自転車通行帯を整備すること」「利用率が低いパーキングメーターを撤去すること」などが盛り込まれており、自転車の安全のためにはクルマに不便をかけることもいとわない姿勢を見せている。
しかし、こうした自転車ユーザーの安全を確保する道路環境の整備はまだまだ「これから」の話だ。指針がすでに発表されている現在、自転車のみならず、事故を起こす可能性があるドライバーたちの意識改革がどれだけ進むのか。そのフォローは十分なのか。議論すべき点は山積みだ。
(写真/村上庄吾)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111116-00000016-pseven-pol
鉢呂吉雄・前経産相が「放射能発言」で辞任に追い込まれたきっかけとなった「オフレコ懇談」。民主党政権は、そもそも番記者がつくような立場を経験したことのない野党暮らしの政治家、まだまだ陣笠の議員ばかりだったため、このオフ懇の使い方がよくわかっていない。オフレコとはいっても発言はすべて「オフ懇メモ」として各紙の幹部に回覧され、時にはライバル政治家にご注進されることもある。
以下、本誌が入手したオフ懇メモに記載された仰天発言を紹介しよう。なお、これはあくまでメモの内容なので、本当にそう発言したかは未確認である。なにしろ鉢呂氏の「放射能つけちゃうぞ」は捏造だった疑いが強いとされるから、新聞記者が作るメモの信頼性も昔とは大きく違うのだろう。念のためお断わりしておく。
オフレコ問題といえば、鳩山政権で官房長官、野田政権では国対委員長という重責を担う平野博文氏が一家言持っているようだ。件の鉢呂問題が起きた直後の9月中旬、集まった番記者たちをまずは一喝した。
〈今日は「完オフ」だ。「オフ」だとあんた方は記事にしてしまうからな。もし完オフを記事にしようものなら、俺は二度としゃべらんぞ!〉(オフ懇メモより。以下同)
そうやって記者クラブを恫喝し、支配する場としてオフ懇は重要なのだ。大マスコミはその支配を簡単に受け入れる。平野氏の怒りはまだ収まらず、さらにまくし立てた。
〈オフレコで大臣を追い込むというのは、俺は絶対に許せない。それが永田町のルールだろうが。俺が官房長官の時は、オフレコの内容が漏れた時は徹底調査したもんだがな〉
平野氏が「オフ破り」に神経をとがらせるのは、自身はオフ懇で党内外の陰口を縦横無尽に繰り出すのが十八番だから。例えば役人の手先になって増税を叫び続ける財務大臣には、
〈財務官僚は安住を馬鹿にしきっているからな〉
と切って捨て、亀井静香・国民新党代表が、大阪ダブル選で民主党が推す候補を応援しないと発言したことを聞くと、
〈そんなこといっちゃダメだといっておいたのに。面白いじゃない。郵政(法案)を通したくないんかな?〉
と、亀井氏が執念を燃やす法案を人質にとって見下す。
メモの「無内容」が際立つのが前原誠司・政調会長だ。政策責任者なのに、何を聞いても、〈知りません〉〈聞いてません〉〈わからない〉〈ノーコメント〉
のオンパレード。実際、たまに同氏が話した内容が間違っていることも多く、番記者からは「実は党内で信用されていないのでは?」と疑われている。
会長にかわって記者を威嚇するのが仙谷由人・政調会長代行。自らの失言でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)論議が紛糾したことから、発言撤回するかと訊かれて(10月末)、
〈撤回? するわけないだろ! もう一回いってみろ、オラ! お前はそこにいたのか!〉
と、チンピラそのものだ。
どうもこの政権は年寄りほど冷酷になるようだ。「ミスター消費増税」の異名をとる藤井裕久・党税調会長は10月末、テレビ出演の後に怪気炎をあげた。
〈50年間、優秀な先輩方ができなかったことを、ついにやろうとしている。僕は信心深くないけれども、毎日、神棚に手を合わせている。池田勇人さんは信心など全くなかったけど、やはり神頼みしていた〉
消費税を上げるのが、そんなに興奮する偉業なのか。この感覚は元大蔵官僚ならではだろう。「優秀な先輩方」とは、もちろん過去の官僚を指している。池田勇人・元首相も大蔵出身だ。彼は「貧乏人は麦を食え」と言い放ち、所得税率を最高75%まで引き上げた「大蔵省の英雄」である。
藤井氏は、今度は自分が消費税を過去最高税率に引き上げて、「池田先輩」に肩を並べたいと考えているのか。「どうか私に消費増税をやらせてください」と毎日、神棚に拝む藤井翁の姿を想像するとゾッとする。
※週刊ポスト2011年11月25日号
鉢呂吉雄・前経産相が「放射能発言」で辞任に追い込まれたきっかけとなった「オフレコ懇談」。民主党政権は、そもそも番記者がつくような立場を経験したことのない野党暮らしの政治家、まだまだ陣笠の議員ばかりだったため、このオフ懇の使い方がよくわかっていない。オフレコとはいっても発言はすべて「オフ懇メモ」として各紙の幹部に回覧され、時にはライバル政治家にご注進されることもある。
以下、本誌が入手したオフ懇メモに記載された仰天発言を紹介しよう。なお、これはあくまでメモの内容なので、本当にそう発言したかは未確認である。なにしろ鉢呂氏の「放射能つけちゃうぞ」は捏造だった疑いが強いとされるから、新聞記者が作るメモの信頼性も昔とは大きく違うのだろう。念のためお断わりしておく。
オフレコ問題といえば、鳩山政権で官房長官、野田政権では国対委員長という重責を担う平野博文氏が一家言持っているようだ。件の鉢呂問題が起きた直後の9月中旬、集まった番記者たちをまずは一喝した。
〈今日は「完オフ」だ。「オフ」だとあんた方は記事にしてしまうからな。もし完オフを記事にしようものなら、俺は二度としゃべらんぞ!〉(オフ懇メモより。以下同)
そうやって記者クラブを恫喝し、支配する場としてオフ懇は重要なのだ。大マスコミはその支配を簡単に受け入れる。平野氏の怒りはまだ収まらず、さらにまくし立てた。
〈オフレコで大臣を追い込むというのは、俺は絶対に許せない。それが永田町のルールだろうが。俺が官房長官の時は、オフレコの内容が漏れた時は徹底調査したもんだがな〉
平野氏が「オフ破り」に神経をとがらせるのは、自身はオフ懇で党内外の陰口を縦横無尽に繰り出すのが十八番だから。例えば役人の手先になって増税を叫び続ける財務大臣には、
〈財務官僚は安住を馬鹿にしきっているからな〉
と切って捨て、亀井静香・国民新党代表が、大阪ダブル選で民主党が推す候補を応援しないと発言したことを聞くと、
〈そんなこといっちゃダメだといっておいたのに。面白いじゃない。郵政(法案)を通したくないんかな?〉
と、亀井氏が執念を燃やす法案を人質にとって見下す。
メモの「無内容」が際立つのが前原誠司・政調会長だ。政策責任者なのに、何を聞いても、〈知りません〉〈聞いてません〉〈わからない〉〈ノーコメント〉
のオンパレード。実際、たまに同氏が話した内容が間違っていることも多く、番記者からは「実は党内で信用されていないのでは?」と疑われている。
会長にかわって記者を威嚇するのが仙谷由人・政調会長代行。自らの失言でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)論議が紛糾したことから、発言撤回するかと訊かれて(10月末)、
〈撤回? するわけないだろ! もう一回いってみろ、オラ! お前はそこにいたのか!〉
と、チンピラそのものだ。
どうもこの政権は年寄りほど冷酷になるようだ。「ミスター消費増税」の異名をとる藤井裕久・党税調会長は10月末、テレビ出演の後に怪気炎をあげた。
〈50年間、優秀な先輩方ができなかったことを、ついにやろうとしている。僕は信心深くないけれども、毎日、神棚に手を合わせている。池田勇人さんは信心など全くなかったけど、やはり神頼みしていた〉
消費税を上げるのが、そんなに興奮する偉業なのか。この感覚は元大蔵官僚ならではだろう。「優秀な先輩方」とは、もちろん過去の官僚を指している。池田勇人・元首相も大蔵出身だ。彼は「貧乏人は麦を食え」と言い放ち、所得税率を最高75%まで引き上げた「大蔵省の英雄」である。
藤井氏は、今度は自分が消費税を過去最高税率に引き上げて、「池田先輩」に肩を並べたいと考えているのか。「どうか私に消費増税をやらせてください」と毎日、神棚に拝む藤井翁の姿を想像するとゾッとする。
※週刊ポスト2011年11月25日号
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111116-00000000-fukkou-bus_all
東京電力福島第1原子力発電所の事故は、世界の原発に多大な影響を及ぼした。なかでも、ドイツの動きは世界に驚きを与えた。メルケル首相は事故発生からわずか3日後、老朽化した原発7基を3カ月停止し、全原発の安全検査を徹底するように命じた。さらにドイツ政府は、2020年の脱原発を決めたのだ。
ただし、ドイツが事故を受けて脱原発を決めたのかといえば、そうではない。緑の党と社会民主党との連立政権は2000年に脱原発を決め、2022~23年を脱原発の期限に定めた。だが、2009年秋にキリスト教民主・社会同盟と自由民主党政権の連立政権が発足し、脱原発ムードが減退。2010年には、脱原発の期限を12年延長した経緯がある。
こうしたなか、福島第1原発事故が発生。ドイツ政府は高まる世論をくみとって、再び脱原発の期限を早めたわけだ。ドイツの脱原発をめぐる国民議論の蓄積は、既に10年を超える。
なぜ、ドイツ政府は脱原発を選択したのか。脱原発が産業界に、どのような影響を及ぼしているのか。ドイツ銀行で金融アナリストとしての経験を積んだ後、環境NGO「グリーンピース」に移ったトーマス・ブリュアー気候変動エネルギー部門長に聞いた。
――結局のところ、なぜドイツは脱原発を決めたのですか。
ブリュアー 原発がリスクの高い技術だからです。ドイツ政府は原発をどうするべきか、倫理委員会に諮りました。そこで委員会が出した結論は、「原発の賛否は別にして、原発はリスクの高い技術。一方の再生可能エネルギーはリスクが低い。ならば原発は廃止すべきだ」と政府に勧告したのです。後述しますが、産業政策の側面も大きかった。
ドイツの脱原発議論の特徴は、「原発に賛成か反対か」という話とは別なのです。
――欧州の電力網はつながっており、電力市場は自由化されています。国境をまたいだ電力の売買も当たり前です。ドイツが脱原発しても、不足した電力を原発大国のフランスから輸入することになり、結果的に原発による電力は減らないという指摘もあります。
ブリュアー それは間違った認識です。確かに、ドイツとフランスの間では電力の輸出入が行われています。原発は発電量を変動させずに運転するのが最も効率が良い。このため、原発比率が8割弱と非常に高いフランスは、電力需要の変動に対応するために、原発による電力を安価で他国に売っているのです。脱原発いかんにかかわらず、ドイツはフランスから電力を購入してきたわけです。
ただ、フランスから購入している量は、ドイツ全体の需要のごく一部に過ぎません。むしろ10年以上前から、ドイツは電力輸出国なのです。原発停止後は他国へ輸出する余裕は減ってしまいます。ですが、原発以外の発電設備に余裕があるため、輸入が大幅に増えることはないでしょう。
ちなみに、2010年のドイツの総発電量に占める原子力の割合は24%。福島第1原発事故後に7基停止してからは、14%まで落ち込みました。電力の輸出量は減少していますが、輸入量は変わっていません。
ドイツ政府は再生可能エネルギーの導入量を増やすことによって、エネルギー自給率を高める目標を掲げています。2020年を目途に原発を全基停止してどうなるのかは不透明な部分も残りますが、大きく輸入が増えることはないと見ています。
――脱原発によって原子力産業の雇用が減少する懸念はないのですか。
ブリュワー 現在、原子力産業は約3万5000人を雇用しています。2020年に原発を止めても、この雇用が減るのはもっと先の話です。というのも、廃炉を完了させるには、膨大なプロセスを経る必要があります。長期間にわたり、相当の人員が必要です。
一方で、再生可能エネルギーの導入促進は、原子力を上回る雇用を生みだします。ドイツ政府によると、2004年に16万人だった再生可能エネルギーによる雇用は、2010年に37万人へと急拡大しました。原発の雇用は発電所の立地地域などに集中しがち。ところが、分散電源である再生可能エネルギーは、ドイツ国内に分散して雇用を生み出す利点もあります。
現在、ドイツ政府が掲げている再生可能エネルギーの導入目標は、2020年に35%というもの。その先も、2030年に50%、2040年に65%、2050年には80%まで高めるとしています。さらに、ドイツ議会の専門委員会は2010年、「2050年に100%再生可能エネルギーにすることも可能」だと表明しました。
脱原発を実現して原子力産業での雇用が失われても、再生可能エネルギーの導入で大量の雇用が発生します。雇用面の心配はしていません。
■再生可能エネルギーには経済的なメリットも
――再生可能エネルギーの発電コストは、火力発電などと比較して高いと言われます。また、日本では、原子力のコストが適正に評価されていないという指摘があります。
ブリュワー ドイツでは、再生可能エネルギーの導入は経済的なメリットが大きいという試算が広く知られています。単なる発電コストの比較ではありません。再生可能エネルギーの導入にまつわるコスト増よりも、石油や天然ガス、ウランなどの燃料を使わないで済んだことによるコスト削減や、酸性雨や健康被害などの対策コストの削減、新規に生まれる雇用や、企業の競争力工場などのメリットの方が大きいというわけです。
原子力のコストの不透明さはドイツも同様です。1950年から現在までに原子力産業に政府が投入した補助金などの総額は、24兆4200億円に上ります。核廃棄物の処理費用などは部分的にしか含まれていませんので、国費の投入はさらに増えるでしょう。
問題は、原子力産業のコスト削減努力が不十分であることです。これだけの国費がなければ立ちゆかないのだから、原子力産業が自立しているとは言い難い。今後もさらに原子力産業にカネを投じ続けることには、疑問符が付きます。
――再生可能エネルギーが本当に経済的なメリットがあるなら、なぜ産業界は脱原発に反対するのですか。
ブリュワー ドイツ産業界にも、様々なポジションの企業が存在します。脱原発の声を発しているのは、電力や化学、重工業、自動車などの大企業。これが産業界の総意であるとは考えていません。
というのも、再生可能エネルギーの導入を、ビジネスチャンスと捉える企業が増え始めているためです。象徴的なのが、アルミ精錬のトップ企業が政府の判断を歓迎していることです。
アルミ精錬といえば、電力多消費産業の代表格。電力料金の高い地域ではビジネスが立ちゆかなくなることもある業種です。そのアルミ精錬企業の歓迎が意味していることは、「再生可能エネルギーは儲かる」ということに尽きます。
これまで彼らの最大の顧客は自動車メーカーでした。ですが、自動車メーカーは値下げ圧力が強い。値下げばかり求めてくる自動車メーカーよりも、彼らにとっては、風車メーカーの方が優良顧客になったのです。
■再生可能エネルギーは成長著しい産業
――再生可能エネルギーの導入が、新産業として確立しつつあるのですね。
ブリュワー その通りです。雇用創出効果は数値となって現れています。産業界の声の大きなプレイヤーの影で、ビジネスをシフトさせる動きが顕在化しています。
再生可能エネルギー市場は、右肩上がりで目覚しい成長を続けています。これほどの成長力を持った産業は、ほかに見当たりません。
だからこそ、日本に言いたいことがあります。原発に賛成か反対かという議論にとどまらず、将来の産業について議論すべきではないでしょうか。
日本企業が再生可能エネルギー市場で存在感を発揮したいと考えるなら、日本政府は早急にエネルギー政策の方針転換をすべきです。一刻も早く、国内市場を立ち上げなければ、手遅れになる。もうギリギリのタイミングです。既に日本は相当、遅れを取っているのです。
ドイツに参考になる例があります。かつてドイツの鉄道会社は、新幹線のような高速鉄道を新興国に売り込もうとして失敗しました。その理由は、国内での導入実績がなかったためです。新興国からしてみれば、「そんなに良い技術ならば、なぜ自国でやらないの?」と信頼を得られませんでした。
日本の再生可能エネルギーの導入量は、世界的に見ても少なすぎます。国内市場はあまりに脆弱です。日本には、技術開発に長けた企業が多く存在します。再生可能エネルギーに本気で取り組めば、世界で高い競争力を発揮できるはずです。
政府が本気で国内市場を立ち上げることを決断するかどうか。ここに、日本企業の将来が委ねられています。
東京電力福島第1原子力発電所の事故は、世界の原発に多大な影響を及ぼした。なかでも、ドイツの動きは世界に驚きを与えた。メルケル首相は事故発生からわずか3日後、老朽化した原発7基を3カ月停止し、全原発の安全検査を徹底するように命じた。さらにドイツ政府は、2020年の脱原発を決めたのだ。
ただし、ドイツが事故を受けて脱原発を決めたのかといえば、そうではない。緑の党と社会民主党との連立政権は2000年に脱原発を決め、2022~23年を脱原発の期限に定めた。だが、2009年秋にキリスト教民主・社会同盟と自由民主党政権の連立政権が発足し、脱原発ムードが減退。2010年には、脱原発の期限を12年延長した経緯がある。
こうしたなか、福島第1原発事故が発生。ドイツ政府は高まる世論をくみとって、再び脱原発の期限を早めたわけだ。ドイツの脱原発をめぐる国民議論の蓄積は、既に10年を超える。
なぜ、ドイツ政府は脱原発を選択したのか。脱原発が産業界に、どのような影響を及ぼしているのか。ドイツ銀行で金融アナリストとしての経験を積んだ後、環境NGO「グリーンピース」に移ったトーマス・ブリュアー気候変動エネルギー部門長に聞いた。
――結局のところ、なぜドイツは脱原発を決めたのですか。
ブリュアー 原発がリスクの高い技術だからです。ドイツ政府は原発をどうするべきか、倫理委員会に諮りました。そこで委員会が出した結論は、「原発の賛否は別にして、原発はリスクの高い技術。一方の再生可能エネルギーはリスクが低い。ならば原発は廃止すべきだ」と政府に勧告したのです。後述しますが、産業政策の側面も大きかった。
ドイツの脱原発議論の特徴は、「原発に賛成か反対か」という話とは別なのです。
――欧州の電力網はつながっており、電力市場は自由化されています。国境をまたいだ電力の売買も当たり前です。ドイツが脱原発しても、不足した電力を原発大国のフランスから輸入することになり、結果的に原発による電力は減らないという指摘もあります。
ブリュアー それは間違った認識です。確かに、ドイツとフランスの間では電力の輸出入が行われています。原発は発電量を変動させずに運転するのが最も効率が良い。このため、原発比率が8割弱と非常に高いフランスは、電力需要の変動に対応するために、原発による電力を安価で他国に売っているのです。脱原発いかんにかかわらず、ドイツはフランスから電力を購入してきたわけです。
ただ、フランスから購入している量は、ドイツ全体の需要のごく一部に過ぎません。むしろ10年以上前から、ドイツは電力輸出国なのです。原発停止後は他国へ輸出する余裕は減ってしまいます。ですが、原発以外の発電設備に余裕があるため、輸入が大幅に増えることはないでしょう。
ちなみに、2010年のドイツの総発電量に占める原子力の割合は24%。福島第1原発事故後に7基停止してからは、14%まで落ち込みました。電力の輸出量は減少していますが、輸入量は変わっていません。
ドイツ政府は再生可能エネルギーの導入量を増やすことによって、エネルギー自給率を高める目標を掲げています。2020年を目途に原発を全基停止してどうなるのかは不透明な部分も残りますが、大きく輸入が増えることはないと見ています。
――脱原発によって原子力産業の雇用が減少する懸念はないのですか。
ブリュワー 現在、原子力産業は約3万5000人を雇用しています。2020年に原発を止めても、この雇用が減るのはもっと先の話です。というのも、廃炉を完了させるには、膨大なプロセスを経る必要があります。長期間にわたり、相当の人員が必要です。
一方で、再生可能エネルギーの導入促進は、原子力を上回る雇用を生みだします。ドイツ政府によると、2004年に16万人だった再生可能エネルギーによる雇用は、2010年に37万人へと急拡大しました。原発の雇用は発電所の立地地域などに集中しがち。ところが、分散電源である再生可能エネルギーは、ドイツ国内に分散して雇用を生み出す利点もあります。
現在、ドイツ政府が掲げている再生可能エネルギーの導入目標は、2020年に35%というもの。その先も、2030年に50%、2040年に65%、2050年には80%まで高めるとしています。さらに、ドイツ議会の専門委員会は2010年、「2050年に100%再生可能エネルギーにすることも可能」だと表明しました。
脱原発を実現して原子力産業での雇用が失われても、再生可能エネルギーの導入で大量の雇用が発生します。雇用面の心配はしていません。
■再生可能エネルギーには経済的なメリットも
――再生可能エネルギーの発電コストは、火力発電などと比較して高いと言われます。また、日本では、原子力のコストが適正に評価されていないという指摘があります。
ブリュワー ドイツでは、再生可能エネルギーの導入は経済的なメリットが大きいという試算が広く知られています。単なる発電コストの比較ではありません。再生可能エネルギーの導入にまつわるコスト増よりも、石油や天然ガス、ウランなどの燃料を使わないで済んだことによるコスト削減や、酸性雨や健康被害などの対策コストの削減、新規に生まれる雇用や、企業の競争力工場などのメリットの方が大きいというわけです。
原子力のコストの不透明さはドイツも同様です。1950年から現在までに原子力産業に政府が投入した補助金などの総額は、24兆4200億円に上ります。核廃棄物の処理費用などは部分的にしか含まれていませんので、国費の投入はさらに増えるでしょう。
問題は、原子力産業のコスト削減努力が不十分であることです。これだけの国費がなければ立ちゆかないのだから、原子力産業が自立しているとは言い難い。今後もさらに原子力産業にカネを投じ続けることには、疑問符が付きます。
――再生可能エネルギーが本当に経済的なメリットがあるなら、なぜ産業界は脱原発に反対するのですか。
ブリュワー ドイツ産業界にも、様々なポジションの企業が存在します。脱原発の声を発しているのは、電力や化学、重工業、自動車などの大企業。これが産業界の総意であるとは考えていません。
というのも、再生可能エネルギーの導入を、ビジネスチャンスと捉える企業が増え始めているためです。象徴的なのが、アルミ精錬のトップ企業が政府の判断を歓迎していることです。
アルミ精錬といえば、電力多消費産業の代表格。電力料金の高い地域ではビジネスが立ちゆかなくなることもある業種です。そのアルミ精錬企業の歓迎が意味していることは、「再生可能エネルギーは儲かる」ということに尽きます。
これまで彼らの最大の顧客は自動車メーカーでした。ですが、自動車メーカーは値下げ圧力が強い。値下げばかり求めてくる自動車メーカーよりも、彼らにとっては、風車メーカーの方が優良顧客になったのです。
■再生可能エネルギーは成長著しい産業
――再生可能エネルギーの導入が、新産業として確立しつつあるのですね。
ブリュワー その通りです。雇用創出効果は数値となって現れています。産業界の声の大きなプレイヤーの影で、ビジネスをシフトさせる動きが顕在化しています。
再生可能エネルギー市場は、右肩上がりで目覚しい成長を続けています。これほどの成長力を持った産業は、ほかに見当たりません。
だからこそ、日本に言いたいことがあります。原発に賛成か反対かという議論にとどまらず、将来の産業について議論すべきではないでしょうか。
日本企業が再生可能エネルギー市場で存在感を発揮したいと考えるなら、日本政府は早急にエネルギー政策の方針転換をすべきです。一刻も早く、国内市場を立ち上げなければ、手遅れになる。もうギリギリのタイミングです。既に日本は相当、遅れを取っているのです。
ドイツに参考になる例があります。かつてドイツの鉄道会社は、新幹線のような高速鉄道を新興国に売り込もうとして失敗しました。その理由は、国内での導入実績がなかったためです。新興国からしてみれば、「そんなに良い技術ならば、なぜ自国でやらないの?」と信頼を得られませんでした。
日本の再生可能エネルギーの導入量は、世界的に見ても少なすぎます。国内市場はあまりに脆弱です。日本には、技術開発に長けた企業が多く存在します。再生可能エネルギーに本気で取り組めば、世界で高い競争力を発揮できるはずです。
政府が本気で国内市場を立ち上げることを決断するかどうか。ここに、日本企業の将来が委ねられています。