世界のダム建設が気候変動の悪化につながる仕組みを、非営利の環境保護団体がGoogle Earthを利用して啓発している。インタラクティブな動画を制作したのは、「インターナショナル・リバーズ(IR)」と「地球の友インターナショナル(FOEI)」。ナレーションはナイジェリア人環境活動家ニモ・バッシー氏が担当している。11月28日に南アフリカ、ダーバンで開幕した国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第17回締約国会議(COP17)で公開されるという。
「社会、環境への影響という観点で、巨大ダムに関する各種分析が行われている。しかし地球温暖化が進行する現状では、水力発電ダムの建設が本当に有効な気候変動対策となり得るのか。この点についても注意を払う必要がある」と、IRの政策調整官ザカリー・ハーウィッツ(Zachary Hurwitz)氏は指摘する。
CGを駆使した動画は約12分。アフリカ、ヒマラヤ、アマゾンのダム建設で想定される気候問題をシミュレーションしている。
例えば、地球温暖化でヒマラヤの氷河が溶けると、ダムの下流地域で洪水などのリスクが高まる可能性を示す。
ナレーションは、「ヒマラヤの河川では多くのダム建設が計画されている。1基決壊すれば、ドミノ倒しのように次々と決壊、数百万人の命が危険にさらされる」と訴えかける。
そのほか、ブラジルのトゥクルイ・ダムの人造湖に潜る場面もある。湖底の有機物の腐敗が進んだ結果、温室効果ガスのメタンが発生し、大気に放出される様子も確認できる。
◆ダムと気候
巨大ダムは有効な気候変動対策になると建設業者は主張する。温暖化で水不足が深刻化しても、ダムなら貯水能力を活かしてエネルギー生産や灌漑を継続できるというのがその根拠だ。
しかし環境保護団体によると、ほとんどの建設計画は過去の流量データに基づいているが、気候変動のスピードが加速し、予測が難しくなった現代では意味を成さないという。
「将来も流量は不変だという前提に立っているが、もはやそんな考え方は通用しない」と、IRのアフリカ担当プログラム・ディレクター、ルド・サンヤンガ(Rudo Sanyanga)氏は言う。
動画では、巨大ダムの代替策も提案している。例えば、送電網が十分に行き届いていないアフリカでは、太陽光や地熱を活かした発電が有効だという。
◆Google Earthの活用
アイルランド、ダブリンのソフトウェア開発者デイビッド・トリス(David Tryse)氏は、IRのような環境保護団体や科学者の依頼を受け、多くのGoogle Earthアプリケーションを制作してきた。
同氏は、Google Earthは優れたツールだと言う。数億人のインターネット・ユーザーが高解像度の衛星画像にアクセスし、環境問題を自ら調査できるからだ。
「重要な国立公園の近くで持ち上がった森林破壊の疑いに、木材会社が事実無根と反論する。こんな場合でも、Google Earthですぐに状況を確認できる」とトリス氏。同氏は、今回のダム動画の制作にも携わっている。
IRは、世界のダム問題についての認識が動画によって一層深まり、各国の市民が立法機関や当局に問題を訴えかけるきっかけになってくれれば良いと考えている。
IRのハーウィッツ氏は、「巨大ダム建設には、気候変動を悪化させる危険性がある。UNFCCCや世界銀行など国際機関で気候問題を担当する政策立案者は、より効率的かつ分散的に管理可能な水/エネルギー対策を推進し、開発途上国のニーズに応えるべきだ」と話している。
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