田中角栄と吃音 | ひろせカウンセリング若手ブログ

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吃音自助グループ廣瀬カウンセリング東京教室の、若手メンバーによるブログです。

田中角栄といえば、吃音を克服して首相にまでなった人物として、吃音界隈ではつとに有名です。

 

私の世代では田中角栄は既に過去の人でしたが、私よりだいたい20歳以上の人にとって、田中角栄は特別な存在感を持ちます。

 

今日ふとyoutubeを観ていたら、田中角栄が吃音について語っている場面があったのでご紹介します。↓の動画の1:40~2:20くらいです。

 

 

「ですからあのー、どもりを治すためにね、浪花節をやったりね、それから難しい本を大きな声を出して読んだりね。」

 

「ところが人のいないところでは読めるんですが、人のいるところで教室に入るとね、ギズ(?)っと止まっちゃうんですなあ。」

 

「ですからやっぱりどもりというものはね、どもらないんだという自信を持つ以外に治らないということをね、子供心に悟ったですね」

 

田中角栄はよく「浪花節によって吃音を克服した」と言われることが多いです。しかし、この動画での彼の発言を見ると、浪花節では結局治らず、「どもらないんだという自信」を体得することで治った、というように聞き取れます。

 

この「自信」というのは、吃音克服の一面の真実を突いていると思います。

 

本読みの練習をするとうまくいくことがあるのは「自信がつく」からです。他方で、何でもない場面で吃るのは「自信がない」からです。

 

自信というのは陰も形もありませんし、「根拠のない自信」とか「自信満々」と言われたりするように、それを支えるものが無いのになぜか自信を持っていたり(あるいは持っていなかったり)します。

 

ここで大事なのは、自信というのはどちらにも振れるということです。何か準備や練習をすることと、自信があるということは、あまり関連がありません。もっと言うと、努力とも関連ありません。努力をしたからといって吃音が治るとは限らない(逆にいうと、努力をしても治らなかったから吃音は治らないともいえない)。これを関連があると思っていることによって、余計な苦労や苦悩をしている人が多いと思います。

 

田中角栄のいう「吃らないんだという自信」の逆は、「吃るかもしれないという不安」です。この不安、すなわち根拠のない不安を、自分がなぜか抱えていることに気づくことが、克服のための第一歩ではないでしょうか。