先日、AbemaTVで東京六大学野球の解説をさせて頂いた。この依頼をもらった時はネット配信での解説をよく理解しておらず、少し判断を迷ったのだが、少しでも東京六大学野球や母校の為になるなら、と思い承諾した。

これが意外に面白い。まず、地上波の野球解説とは違い好き勝手に話してもよいと言う。そして放送中にユーザーからどんどんコメントが入って来てそれに応える時間もあったりする。

私の大学時代の監督、島岡吉郎のモノマネをすると、即座に「先輩、懐かしいです」などとコメントが流れる。本当に後輩なのか、なりすましの単なるいたずらかは分からないが、実に新鮮な体験だ。

私が、野球の歴史の話をすると「へぇー」とか「そうなんだ」とかが流れる。中には「それ、あたってんの?」なんていうのも流れるのだ。

地上波やBSほどの視聴者数はいないだろうが、それでも全国に流れる配信だ。コメントしているユーザーがどこのどんな人なのか、見当もつかない。そんな中、ワクワク、ドキドキしながらも楽しく解説をさせてもらった。

現在の明治大学・善波監督は私の同期で しかも当時のキャプテンだった人物だ。そんな訳で、彼の監督就任時から私も時間を見つけては後輩の指導を手伝っている。従って、出場している選手は 皆 少なからず 私が指導した選手だ。みんな かわいい後輩だ。

なので、明治大学が劣勢になるとどうしてもイライラして明治の応援にヒートアップしてしまう。すると、すぐに「中立でお願いします」なんてコメントが流れる。私が「そんな事できるか!」と放送中に言い放ち、構わず明治応援を続ける。

こんな事がまかり通ってしまう自由な野球中継なのだ。対戦相手の大学には 大変 申し訳ない。よく聞くと、AbemaTVの六大学中継では各大学のOBが解説しているらしいのでおそらく皆さん母校の解説の時は 私と似たり寄ったりなのではないか。

しかし今まで、たくさんの野球解説をしてきたが 放送中、あんなにイライラするのは初めてだ。「今日は負けたね」なんて言うと「あきらめないで下さい」と慰めのコメントが入る。本当に新鮮だ。

幸い、明治が勝利したのだが、その爽快さは言葉では言い表せない。タイガースが勝利した時、ファンが絶叫するシーンを度々見かけるが、これは私が母校の勝利で感じる爽快感に近いのかもしれない。負けた時の不快感と勝った時の爽快感、やはり母校の応援に関しては格別な思いが入ってしまう。


さて、そう考えると、先週のタイガースは 非常に情けない。タイガースファンが気の毒な一週間だった。

火曜日のジャイアンツ戦に快勝して その前の甲子園3連敗のお返しを、と願った翌日からの4連敗である。

火曜日、0-9という屈辱的な敗戦をしたジャイアンツの高橋監督が 「これで 悔しいと思わない選手は いらない」とコメントしていた。当然だ。この発言がナインを奮起させたかは分からないが水曜・木曜日と連勝して 見事にリベンジを果たした。

迎えた金曜日のカープ戦、タイガースは 1-14という大敗北を喫したがジャイアンツのように「やり返す」思いが土曜日に見られなかったのが非常に残念だ。

2軍から上がってきた江越や板山の必死さは伝わってきたが、いかんせん、その他の選手が精彩を失っているように見えたのは私だけであろうか。こんな雰囲気で勝利できるのか、と思えるぐらいのベンチが画面に映る。

マテオの押し出しも コントロールの定まらないスライダーの連発。確かにスライダーはマテオの武器だが あれだけコントロールが定まらないのなら ストレートに切り替えたり ツーシームにしたりすれば良いのに スライダーオンリーとは見てて、呆れる。

日曜日が雨で中止になった事が唯一の救いだ。

この4連敗中、攻撃陣が取った点数は5点で、取られた点数が27点。ジャイアンツ戦の快勝も吹っ飛んでしまった一週間だった。

今朝のスポーツ紙では 新外国人選手の話も出ている。メッセンジャーの日本人扱いになる事も含めてタイガースのフロントが検討しているとの記事だ。これが事実なら疑問を抱いてしまう。いまフロントがすべきなのは、新外国人選手を探すことより、ロサリオのように不調になった選手を正しく指導できるテクニカルコーチを探す事が先決ではないだろうか。

伸び悩む選手の育成、理路整然とした配球を指導できるコーチを探しだす事が何より求められている。プロ・アマは問うまい。また、タイガースのユニフォームを着ていたとか着ていないではなく、国内外、優秀な人材を幅広く探す事が最優先課題のはずだ。

実績のある外国人選手を獲得するには数億円が必要になるだろう。上手く働くか分からない選手に数億円を払うより優秀なテクニカルコーチを獲得する方が費用もかからないし、何より直接、勝敗に直結する。

現在、日本のプロ野球全般に言える事だが優秀な指導者不足が歪めない。あくまで 私の主観であり、実際のところは分からない。しかし、アマチュア野球の中には優秀な指導者がいる事は事実で、こういうところからも人材を探すのも一考に値する。

大阪桐蔭高校が春の選抜に優勝した時「この高校には 優秀な選手が集まるから」とコメントした人がいた。考えてもみてほしい。プロ野球には、そして阪神タイガースには、大阪桐蔭高校より、もっと優秀な人材が集まっている。

しかし、その優秀な人材を育てられたのか、と問われたらYESとは言えないだろう。優秀な人材を集めて、育てて日本一になる高校もあれば、より優秀な人材を集めても、育てる事ができず優勝から遠ざかる球団もある。

それでもなお、もっともっと優秀な選手を集める事だけでいいのだろうか。優秀なテクニカルコーチの発掘が指揮官をそしてチームを助ける事になるだろう、と私は思っている。

さて、今週のタイガース、大いに期待するとストレスも溜まるので ちょっとだけの期待にとどめておこう。