昨日(13日)の試合、横浜スタジアムでのナイトゲーム、2回裏、1死 1・2塁、倉本の打球で照明が目に入り 右翼手の中谷が後逸した。

ついこの間まで「ナイター」と呼び慣れていた日本初の「ナイトゲーム」は 1933年 7月10日 戸塚球場で早稲田大学が行った。

プロ野球では 1948年 8月17日、横浜ゲーリック球場、現在の横浜スタジアムで東京巨人軍対中日ドラゴンズ戦が初のナイトゲームとなった。

当時この球場はまだ連合軍に接収されており、連合軍が他の球場に先駆けて照明設備を設置したのである。記録によるとこの日は「空前の超満員」だったそうだ。

今では プロ野球チームのフランチャイズ球場で照明設備を完備していない球場はない。ただ、その照明の種類はそれぞれ違うのをご存知だろうか。

横浜スタジアムでは 2015年、 照明を全面 LEDにしている。その消費電力は 以前と比べて56%も削減されたとなっている。

福岡ヤフオクドームもLEDを導入しているが他の球場は メタルハライドランプを採用している。

このメタルハライドランプとは古くは「水銀灯」と呼ばれたものと構造は同じで照明器具としては優秀なものである。

皆さんの中には 全面LEDを採用したコンビニに入った時、以前より暗くなったと感じた人も多いと思う。

それまでの照明器具だった蛍光灯は 360度、光を放つが、LEDランプの場合は 光を放つ角度は110度程度なので 同じ照度があっても蛍光灯の方が隅々まで照らす分明るく見えるのだ。

簡単に言えば、光を拡散させながら明かりを照らす蛍光灯やメタルハライドランプに対し、照射角度が狭く 特定方向に集中して光を放つのがLEDなのだ。

それで電気代が削減できるのはいいことだが、デメリットはその分、まぶしく見えるということだ。

一度、強い光を見てしまうと残像が残ったり、目がチカチカしたりするのは皆さんも経験があるだろう。カメラのフラッシュを見た時など 青っぽい光が残ったりするが、この現象のことを「グレア」と言う。

中谷も LEDの照明を見てしまいこの「グレア」という現象を起こしてしまったのだと思われる。

こうなってしまうと、ボールを捕る事は困難だったと思う。中村守備コーチも「責められない」とコメントしていた。

ではグレアは絶対に避けられないか、という話だが、私はポジションニングに問題があった可能性を指摘したい。

私の現役時代、打球が照明に入りやすい球場で行う場合には 右翼手は 照明を避ける為に 2塁ベースと3塁ベースを結んだ延長線上に守る、という鉄則があった。

本来ならば右翼手は 1塁手と2塁手の中間の延長線上に守るので この守備位置は実際より右中間寄りになってしまう。

しかし打球が照明に入りやすい球場の照明は 大体、3塁ベンチ上にあり、この場合通常の位置で守るとライナー性の打球は すぐに照明が目に入ってしまう。その為に 少し 中堅手寄りに ポジションを変える。それがちょうど2塁と3塁ベースを結んだ延長線上なのだ。そうする事によって 照明に入る事を防いだのだ。

つまり打者が 1・2塁間のゴロのヒットを打った時、右翼手は正面でゴロをキャッチする位置が基本的なポジションなのだが、打球が照明に入りやすい球場では 1・2塁間のゴロのヒットを 左側に走り キャッチする位置になる。

当時、打球が照明に入りやすい球場と言えば、広島球場と  横浜スタジアムで、この2箇所ではメタルハライドランプとナトリウムランプの混合照明が使われていた。

ナトリウムランプとは 橙色のランプでメタルハライドランプと混合させることにより 眩しさを抑え 照明から打球が出てくれば捕球できる程だった。

ところがLEDランプは より眩しいので一度 見てしまうと「グレア」を引き起こし、照明から打球が出てきても 捕球する事は困難になる。

そこで昨夜の中谷のポジショニングだが、これは通常の左打者時のポジション二ングであった。中谷はそこから中堅手寄りに動いた所で照明に打球が入り後逸したのだ。

仮にこれが照明を避ける為のポジショニングであったなら 打球は中谷の左側に飛ぶわけでこれなら照明が目に入ることなく倉本の打球を捕れていただろう。

状況的には 2回裏 1点リードで1死 1・2塁だ。あくまで左打者の倉本の打球方向を重視するのか、それとも 照明を避けるポジショニングにするのかは ベンチの判断である。

メタルハライドランプだろうがLEDだろうが、横浜スタジアムの照明の位置は昔も今も変わっていない。

問題は タイガースというチームが 打球が照明に入りやすい球場と そうでない球場のポジショニングの違いを理解しているかどうか、が問題なのである。

分かっていた上で あえて 左打者用のポジショニングするのか、あらかじめ照明に入るリスクを考慮して2塁と3塁ベースの延長線上にポジショニングするのかは ベンチが考える事だが、このような基本を知らずに中谷があの位置に守っていたのだとすれば それは非常に恥ずかしいことである。

部外者の私にはその真相を知る由もないのだが、こんな基本を見落としていたのならば同じ結果でも大違いだ。

知らない事はできないし、教えられない。ただ、あらゆる経験を積んだスタッフがいるわけだ。昨日の中谷の後逸がそんな恥ずかしい理由での打球の後逸でない事を願う。


さて、今週のタイガースは 3勝3敗、巨人もDeNAも3勝3敗、カープが2勝3敗 1分だ。

つまりほとんど ゲーム差は変わってない。そこへ、なんとメッセンジャーが骨折をしたと言うから一大事だ。

今回のような腓骨(ひこつ)骨折の場合、過去の事例から判断すれば 全治 2ヶ月、軽症でも1ヶ月は 復帰まで時間を要している。

クライマックス・シリーズも微妙になってしまう。藤浪を急遽、先発させるのだろう。

実は私の中では 藤浪はポストシーズンの隠し球的存在だった。メッセンジャーが どっしりと大黒柱で君臨し、そこに突然藤浪が加われば 日本一だってあり得る、と思っていた。

メッセンジャーと藤浪の2枚看板で密かに日本一を願っていたのだから残念でならない。

しかしまだ、メッセンジャーがクライマックス・シリーズに間に合わない、と決まった訳ではない。

ただ、僅かにあった逆転優勝の可能性は 更に 遠退いた、と言えるだろう。

先週のブログでは 9分通りタイガースの優勝はない、と言ったが、9分9厘ない、になってしまった。

だが、まだ1厘の可能性がある訳で、タイガースファンの多くは 奇跡の逆転優勝を信じている。最後の最後まで 死力を尽くし戦う事がタイガースの使命だろう。

全力を尽くし頑張るタイガースナインの姿に、勇気や感動、そして元気を貰うファンも大勢いる。その人達の思いに報いるプレーをして欲しいと願っている。