勝負に「運・不運」は付き物だ。

野球の勝敗にも「運・不運」は大きく関わる。

ただ、厄介なのはそれらは目に見えない事だ。「運」を味方にする為にどうしたら良いか、まるで雲をつかむような話だが それゆえに野球選手は 験(げん)を担ぐ事が多い。

たとえば「必勝祈願」で神社にお参りをする事もプロ野球のチームにとっては年中行事である。タイガースも毎年、甲子園近くの神社にお参りしている。これらは 全て 「運」を良くする為の行為である。

ところで私は将棋好きである。ただ、好きと言ってもヘボ将棋なのだが、それでも一応アマチュア2段の免許は持ってる。まさか、将棋の世界には「運」はないよなぁ、と思っていたのだが 実はあったのだ。

皆さんは 大山康晴さんという方をご存知だろうか?1992年に他界されているが、公式タイトルを80期獲得している昭和の名人だ。これは羽生善治さんに抜かれるまで日本一の記録であった。

その大山さんが将棋に「指運(ゆびうん)」というものがあり 駒を指で掴んだ瞬間、見事な手が思い浮かんだり、思わず頭を抱えてしまうよう悪手を指してしまったり、という現象が起きるというのだ。

将棋にも「運」があるのか、と興味深く大山名人の自伝を読んでいたのだが、そこで 私は ある事にひらめいた。野球にも、当然、「運・不運」が付き物だ。将棋が「指運」なら、野球は「球運」ではないか!と。

誤審による恩恵や不利益、イレギュラーバウンドによるヒットや風による落球、テキサスヒットや野手の正面を突くライナーも 全て「球運」が大きく影響している。つまり「球運」を味方につける事が勝利への近道となる。今まで 「運・不運」とか「ラッキー・アンラッキー」という言葉でしか表現されなかったが 野球における「運・不運」に関しては「球運」と命名したのだ。

この「球運」という言葉が認知されるか、このまま消えていくのかわからないが、とりあえず、形に残そうとブログに書いた次第だ。今後も使っていくつもりだ。

そして早速だが、今シーズンのタイガースはこの「球運」に恵まれていない。「運も実力のうち」という人もいる。そこで実力を辞書で調べてみたら「実際に持っている力量」とあった。 なるほど、確かに実際に持っている力が他のチームより劣っているのかもしれない。

しかし、あくまで「今は」である。今は 他のチームより劣っているが この先ずっとこのままではあるまい。それが 来月になるのか来シーズンになるのかはわからないが、私は、将来を期待している。

原口や高山、横田や北条に陽川が近い将来、チームの中心選手として活躍してくれる事を信じている。今は 彼らにとって一軍の舞台が初めての経験である。指導者にとっても初めてのことに接している人がいる。

投手力や攻撃力、走力や守備力が他のチームより劣っているかもしれないが 近い将来、必ず、球界の先頭を立って走るチームになれると信じている。


さて、先週のタイガースだが、ロッテに3タテを喰らってしまった。ロッテと戦う時は 必ずと言って良いほど2005年の日本シリーズを思い出す。1勝もできず4連敗という忌々しい記憶である。また、挑発ポスターも気分の良いものではない。

このポスターについては賛否両論あると思うが 笑えるものもあるが笑えないものもある。まして、3タテを喰らった後に あの挑発ポスターを見れば 気分の悪さは倍増する。すぐに撤去しろ、とまでは言わないが 相手チームに対してのリスペクトも考えてほしい。せめて思わず笑ってしまうようなユーモアのあるセンスの良いポスターを期待している。

そして、ファイターズとは 1勝2敗、日曜日には 大谷翔平と対戦した。言うまでもない日本で最速の投手である。タイガース側から「163キロは 打てない」とか「初めて見る速い球だった」というコメントが出ていたが、率直な感想なのだとしても、何か寂しいものを感じる。

試合前、バッティング投手をいつもより 前から投げさせて 速いボールに対応させようとバッティング練習をしていたが 私は この練習が嫌いである。あくまで、個人的な考えだが、そんな付け焼き刃みたいな対応策で160キロの速球が打てるなら苦労はしない、と思ってしまう。

この練習は 昔からあった。速い球を投げる投手と戦う時は 必ずといって良いほどこの練習方法を取り入れてた。しかし、効果はほとんどない。

逆に このようなバッティング練習は投手寄りの肩が 早く 開くようになり ボールになる変化球に手を出してしまうような悪影響をもたらす。

現役時代の落合博満さんは どんな投手と戦う時も 試合前のバッティング練習は、山なりの緩いボールを打っていた。落合さんには落合さんの哲学があるのだろう。投げる投手も上手に山なりの緩いボールを投げていた。

それとは対象的に桧山進次郎は いつもバッティング投手に近づき 速いボールを練習では打っていた。大事な事は 人それぞれのプレ・パフォーマンス・ルーティーンだ。落合氏もひーやん(桧山)も 相手投手によってルーティーンを変える事なく毎日同じルーティーンを繰り返していた。

それはイチローでも松井秀喜でも同様だった。ビジターのバッティング練習は ひとり5分弱の持ち時間だ。たった5分の持ち時間で 球速100キロ程度のバッティング投手の球を1メートル程度前に出して打ってもタイミングを崩されたり肩が早く開くだけなのだ。

ただし、ひーやんのように毎日ルーティーンとして行っている選手には別な話だ。ルーティーンは どんな選手にも必要だ。一流選手だろうが二軍の選手だろうがプロだろうがアマチュアだろうがアスリートには大切なものだ。

当然、タイガースの若トラ達にもルーティーンがあるだろう。そのルーティーンを崩せば 良い結果は得られない。だから、私は速球投手と戦う時にだけ、投手を前に出して打つ練習には否定的なのである。

とはいえ、大谷翔平に手も足も出せなかった理由がこの練習のせいだとは言わない。ルーティーンを守っていたとしても 163キロは打てなかったかもしれない。しかし、ルーティーンを構築する事や守る事はアスリートにとって 必要である。

自分の力を最大限に引き出し、最高のパフォーマンスをする為にもルーティーンは大切なのである。そんな事を試合前のタイガースの練習を見て思った次第である。

今週のタイガース、オリックスとソフトバンクとの6連戦、いずれも甲子園での試合だ。たくさんのタイガースファンが応援に駆けつけるだろう。勝つ事が一番のファンサービスだ。胸のすく様な試合を期待している。