野球中継を見ている時、アナウンサーが発する言葉で気になってしまうものがある。
それは 「ゲッツー」という言葉である。

「ゲッツー」とは 「ゲット・ツー」という言葉を野球関係者が簡略化したもので野球用語としての正しい表現は「ダブル・プレー」である。

そもそも「ゲッツー」とは、野球の発祥地アメリカで、守備側の人間が「2つ、アウトにしようぜ」と声を掛け合ったことが始まりで、 いつの間にか日本でもこの言葉は定着したようだ。

なので守備側のベンチやプレーヤーが「ゲッツー」と発するのは何の問題もない。本来、守備側の人間が発する言葉だからだ。

しかし、アナウンサーが「ゲッツー」と発するのは いささか 問題がある。
解説者も同様なのだが 「2つ、アウトに取ろうぜ」と、守備側でも攻撃側でもない人間が使うのには違和感があるのだ。

タイガースの野球中継に限って、アナウンサーが「ゲッツー」と言わず、ちゃんと「ダブル・プレー」と発しているのはサンテレビのアナウンサーだけではないだろうか?

私もお世話になっているのだが……これは決してお世辞ではない。

サンテレビは地方局ではあるが 野球中継だけに特化して考えれば、素晴らしいテレビ局であり実況するアナウンサーもプロ中のプロである。

あるテレビ局の野球中継では「ボーン・ヘッド」という言葉を連発しているアナウンサーがいたが「ボーン・ヘッド」は アメリカではテレビで使うのはあまりよろしく無い、とされている言葉だ。

直訳すれば「頭の中は 骨だらけ」という意味で、白人が有色人種を、特に黒人を皮肉った言葉なのだ。日本では「お前の頭はピーマンか」みたいなものだろう。

野球、あるいはタイガースをあまり好きでないアナウンサーが野球中継の担当になってしまった場合、言葉の意味や野球用語に関心がないが故に このような言葉の誤用が長きに渡って使われ定着したのかもしれない。

あるいは、私の考え過ぎで、もっと単純に、タイガースは好きだが、先入観や固定観念で日常使われている言葉を何の疑問もなく使っているだけかもしれない。

しかしながら、この「ゲッツー」を野球中継で一切使わないとなると、今度は逆に2、3 問題が出てくる。それは 「三振・ゲッツー」と満塁時に起こる「ホーム・ゲッツー」である。

本場アメリカでは「三振・ゲッツー」の事を「ストライク(ヒム)アウト、スロー(ヒム)アウト・ダブルプレー」と言うらしい。

また満塁ピッチャーゴロの「ホーム・ゲッツー」は、「1・2・3 ダブルプレー」 と、実にまどろっこしい。

従って、「ゲッツー」と言う日本流アレンジの言葉を使わないと表現すること自体が難しくなってしまう。

このように問題提起している私ですら「ゲッツー」を使わずに「三振・ゲッツー」や「ホーム・ゲッツー」を的確に表現する言葉が見あたらない。実際、私は解説中に「三振・ゲッツー」や「ホーム・ゲッツー」を使ってしまっている。

本当は使いたくないのだが、使わなければ聞いているファンの皆さんに伝わらない。そこで、私も無い頭で一生懸命考えてみた。思いついたのが「三振・ダブル」と「ホーム・ダブル」だ。

ただ、これほど「三振・ゲッツー」や「ホーム・ゲッツー」が定着している現状で、果たして「三振・ダブル」や「ホーム・ダブル」が聞いている皆さんに馴染むか、理解してもらえるか、非常に不安であり、この先この用語を使っていくかどうかも迷っている。

また「ダブル」単体が英語では「二塁打」を意味するらしく、ことのややこしさにさらに拍車をかけてしまう恐れも否めない。今後、もっと良い言葉が見つかるかもしれない。しばらくはこういうプレーが出たら、投手や野手を褒めたり、打者に対し残念な結果になったと、お茶を濁そうかとも思ってしまう。


さて、今週のタイガースだが 若い選手の活躍と主軸のベテラン組の不調が目立った。特に鳥谷の守備ミスが目につく。その結果、連続イニング出場や連続試合出場の記録をストップさせろ、という厳しい声も聞こえてくる。

年棒、4億数千万円も貰っている選手だ。仕方ないと言えばそれまでだが、私には どうしても 自身の経験とかぶってしまう面もある。私は、選手としての晩年、体力や視力の衰えをヒシヒシと感じている時にタイガースに移籍した。

あの頃のファンの私への期待は 全盛期の時のような活躍だったと思う。当然期待に届かない私に対するヤジや批判は多く、自分なりに受け止めていた。今の鳥谷を見ていると あの頃の自分を思い出す。

昔に比べれば優しくなったタイガースファンだが とは言え 鳥谷に対するヤジは相当に厳しいだろう。

あの頃の私は何億円も貰っていたわけではないが、鳥谷の気持ちはよくわかる。こういう状況下では、相手チームと戦う前に ファンやマスコミの批判との戦いになってしまうのだ。

これでは 良い結果など残せる訳がない。

今の鳥谷の気持ちは 想像の域を超えないが、もし、鳥谷がタイガースファンやマスコミの批判と戦っているのなら 今シーズンは このまま伸びないだろう。

打順も8番という彼には屈辱的な打順だ。だが、この現状を脱却するには頑張るしかない。自分自身を鼓舞し、ただただ頑張るしかないのだ。

昔みたいに守れないのなら守備位置を前にすればいい。守備範囲は狭くなるがバウンドは合わせやすい。

速いストレートに詰まるのなら、バットを軽くしたり短くしたりすれば良い。つまり、現状の自分にあわせて良い変化を加えて欲しいのだ。

こういう時の対応を間違えれば、選手生命にも関わる。あくまで 私の想像なので 鳥谷の不調の原因がケガや疲労によるものなら、私のアドバイスはトンチンカンな事になる。しかし、鳥谷が「老化」というものと戦っているのなら 良い変化が必要なのである。

今は 落ち着いて自分自身を見つめ、ファンやマスコミの批判と戦うのではなく、どう変化すれば良いかの試行錯誤を繰り返す時なのだ。良い変化さえ見つかれば 40歳を超えてもまだまだプレーできるはずだ。

「自分、頑張れ」「鳥谷、頑張れ」と自身に言い聞かせ、良い変化を見つけて欲しい。鳥谷の活躍を心から願っているし、必ず復調してくれると信じている。

今週のタイガース、高山にも当たりが戻ったし、ぜひ勝ち越して交流戦を迎えたいものだ。東京での6連戦、大いに期待している。