先日、何気なくテレビでクイズ番組を見ていたら、日本人が3割しか知らない問題として「デッドボール」の語源の問題が出た。

私にとってこの手の問題は得意中の得意である。ベースボールを「野球」と和訳したのは 1894年に中馬庚(ちゅうまかのえ)だが、現在、使われている多くの野球用語は正岡子規が和訳した。子規が訳したものには打者・直球・四球・死球・飛球など、今でも使われているものがたくさんある。

本場アメリカでは 死球の事を ヒット・バイ・ピッチという。四球は ベース・オン・ボールズ、直球は ファースト・ボールである。これらを 試行錯誤の末に正岡子規が日本流にアレンジしたのだが 時代が流れ その経緯を知らない人がそれをそのまま英語に訳してしまい死球をデッドボール、四球をファーボール、そして直球をストレートと訳し、和製英語が誕生してしまったのだ。

その正岡子規が野球用語を日本流にアレンジしたのは 中馬庚が「野球」と訳した1894年と同じ時期である。1890年代から1910年代ぐらいまでに野球用語が確立していくのだが、野球用語が誕生していくこの時代は 1894年に日清戦争、1904年は日露戦争と日本が富国強兵策へと大きく舵を取っていた時代なのである。 

野球用語には アウトにする事を「刺す」とか「殺す」などと言う。また、ダブルプレーは併殺、トリプルプレーは 三重殺と言い、挙句ホームベース付近でアウトになれば 「本塁憤死」などと、およそスポーツ用語とは思えないものが多い。

考えてもみてほしい。本塁憤死の「憤死」とは 怒り死ぬという意味である。

ショートストップを「遊撃手」と訳したり、そもそも「塁」とは 砦の事で、砦とは外敵の攻撃を防ぐ要塞の事である。

このように 野球用語に 物騒な言葉が多いのもこうした言葉ができた時代の背景によるものと言えよう。

そのクイズ番組の話に戻すと そのクイズの答えは ボール・デッドがデッド・ボールに変化した、と言うのだ。

えっ! 

確かに 死球になれば ボール・デッドになる。ボール・デッドとは一時、プレーが中断される事である。しかし、それならばファール・ボールもボール・デッドになるし守備妨害もボール・デッドになるではないか。ボークも投球を除けばボール・デッドになる。

つまりヒット・バイ・ピッチだけがボール・デッドになるわけではないので、 そのように変化したとは考えにくい。しかも、主審や塁審は ボール・デッドをいちいちコールしない。

死球の際、主審が両手を挙げているシーンを見た事があると思う。また、監督が選手交代を告げにグラウンドに出て来た時も 主審や塁審は両手を挙げているシーンを見ると思うが その時、主審は ボール・デッドとは言わず 「タイム」をコールしているのだ。

いろんな事を考慮すれば 1890年代の前に つまり、正岡子規が 死球と訳す前にデッドボールという言葉が使われていたとは到底 思えないのだ。

ボール球が4つで四球、3回 振れば 三振、そして、ワン・アウトを1死、ツー・アウトを2死と訳したように、野球用語に「死」という言葉を多く使っている経緯を考えれば 正岡子規が死ぬほど痛いから死球、と訳したという説が妥当だと思う。

まさかと思うが、数年後に  デッド・ボール(死球)の由来は ボール・デッドが変化したものだ、なんて事がウィキペディアに載らないことを祈る。


さて、今週のタイガースだが  3勝2敗1引き分けと勝ち越した。まずまずである。

3月31日の神宮球場での試合。抑えのマテオを3イニング投げさせたが引き分けに終わってしまった試合で「抑えの投手をこの時期に 3イニングも投げさせるとは考えられない」と ある解説者が指摘されていたが 長いペナントレースでは 年に1・2度は どのチームでもあることだ。

メジャーの事は 分からないが 日本の野球界では 時々 そんな事が起こる。マテオが長いイニングを投げられる投手なのか、そして、体力や肘・肩の状態はどうなのかを見極めて起用したのなら 外の人間が とやかく言う事ではない。

ただし、この3イニングが 今後のマテオにどのような影響を与えるかで 状況は変わる。なんの影響もないなら 問題ないし、これがキッカケで 肘や肩に影響が出たりマテオ自身が調子を落としたりすれば 「あの試合が」と批判されるだろう。

全ては 今後のマテオの活躍次第という事になる。3イニングも投げれば 1・2日は 休養が必要である。体力というよりは 肘や肩の快復という事でである。

翌日のDeNA戦で あんな展開になってしまって 能見には気の毒だったが 年に1・2回の出来事なので そんな日は 他の選手がカバーしなくてはならないのだが なんせ 打線が機能しなかった。

次の能見の登板の時には 打撃陣は 大きな援護をしてあげて欲しい。3日の北條の本塁打も江越の本塁打も素晴らしかった。高山や横田も含めて他のチームが羨ましがるような若い選手の活躍であった。これからも新生タイガースの象徴となるような若トラ達の活躍に目が離せない。